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214:ヴェリエルとヒルダの贖罪
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今回の魔王化騒動について、ヒルダが正気を失っていた時の行動とはいえ、全てを容認する訳にはいかなかった。しかし厄介であったのは、ヒルダはヴェリエルの番であることから(ヴェリエルの怒りを買うため)、下手な刑罰を与えることが難しいと考えあぐねていたところ、ヒルダとヴェリエルから罪滅ぼしの提案があったのだ。
魔物騒動のスタンピートによって死傷者が出ている。その為に孤児になってしまった子供が数人いるため、ヒルダはその孤児らの世話を手伝わせてほしいと申し出たのだ。
「私のせいで、あの子たちの親が失われてしまいました。図々しいお願いかもしれませんが、どうか子供たちが独り立ちできるまで、お願いします。勿論こんなことだけで、罪が許されるとは思っていません!他にも何でもいたしますから、どうかどうかお願いします!」
ヒルダは床に頭を付けて、土下座をして懇願していた。自分が正気を失っていたとはいえ、自分が許されないことをしたという自覚はあった。そして自分が『竜の祖』の番であることから、刑罰を与えにくいという上層部の話を知った上での提案だったのだ。横にいたヴェリエルも跪き、
「俺は人の社会の仕組みはよくわからない。だが、番の望みは叶えてやりたい。俺からも頼む。」
ヴェリエルは『竜の祖』であることに誇りを持っている男だと、アンティエルから聞いていた。そんな男が、フェルディナントに対して深々と頭を下げてきたのだ。その様子を見たフェルディナントは、『竜の祖』は番が絡むとプライドもかなぐり捨てるものなのだなと、感心していた。とはいえ、実際過酷な刑罰をヒルダに科した場合、ヴェリエルからどんな報復があるかわかったものではない。ここらが落としどころであろうと、フェルディナントは考えたのだ。
「正直なところ、我々も貴方方の対応については二の足を踏んでいました。でも、そういうことなら、こちらとしても助かります。」
フェルディナントとユージィンは早速その方向で調整をはじめた。
王都には孤児を引き取って養育している教会がある。慈愛の女神エカルテを祀る教会であった。ヒルダとヴェリエルはそこで孤児たちの教員として働くことになったのだ。
だが贖罪の為に始めた、教会で孤児を養育する仕事を生涯することになるとは、この時の二人は想像もしていなかった。
「先生!今までありがとう!」
「先生!!離れたくないよ!」
「ううん、こちらこそ、貴方たちとずっと一緒に過ごせて楽しかった。ありがとうね。」
あの時の孤児たちは大人になり、それぞれに就職先を見つけ教会から巣立つ日であった。そして、深い絆を結ぶことができたヒルダと子供たちはお別れの時を迎えていた。
「元気でね!身体を大事にしてねーー!!」
子供たちは別れてもずっと見えなくなるまで手を振っていた。
「あっという間だったな。」
「ええ・・・」
ヒルダの目には子供たちがいなくなった寂しさから目から涙が止まらなかった。
「ね、ヴェリエル・・・」
「どうした?」
「あの・・・このお仕事続けてもいい?」
本来であれば、魔物騒動で孤児となった子供たちが独り立ちするまで、という話であったが、あれから数年が経ち、ヒルダは贖罪というよりも今の仕事にやりがいを見出していたのだ。
「あぁ、そう言うと思って、大姉君の番にはちゃんと話を通してきた。」
「え?」
「あちらも、継続してくれるほうが助かるって話だった。だからこのままここで孤児達の面倒を見ればいい。」
ヴェリエルは優しい眼差しをヒルダに向けた。
「本当なのね!ヴェリエルありがとう!!」
ヒルダは嬉しさのあまり、泣きながらヴェリエルに抱き着いた。
「こんな・・・こんな嬉しい刑罰でいいのかな?私本当に罪を償えているのかな?」
「いいだろ?何より子供たちも、慕ってくれているんだ。心の拠り所ができるのは悪い話ではないからな。」
「・・・・ありがとう。ヴェリエル。」
生涯において、ヒルダとヴェリエルの間に子供はできなかった。だがヒルダは自身が子を生むことが適わなかったとしても、たくさんの子供たちに囲まれた自分は幸せだったと、一生を終えることになるのだ。
魔物騒動のスタンピートによって死傷者が出ている。その為に孤児になってしまった子供が数人いるため、ヒルダはその孤児らの世話を手伝わせてほしいと申し出たのだ。
「私のせいで、あの子たちの親が失われてしまいました。図々しいお願いかもしれませんが、どうか子供たちが独り立ちできるまで、お願いします。勿論こんなことだけで、罪が許されるとは思っていません!他にも何でもいたしますから、どうかどうかお願いします!」
ヒルダは床に頭を付けて、土下座をして懇願していた。自分が正気を失っていたとはいえ、自分が許されないことをしたという自覚はあった。そして自分が『竜の祖』の番であることから、刑罰を与えにくいという上層部の話を知った上での提案だったのだ。横にいたヴェリエルも跪き、
「俺は人の社会の仕組みはよくわからない。だが、番の望みは叶えてやりたい。俺からも頼む。」
ヴェリエルは『竜の祖』であることに誇りを持っている男だと、アンティエルから聞いていた。そんな男が、フェルディナントに対して深々と頭を下げてきたのだ。その様子を見たフェルディナントは、『竜の祖』は番が絡むとプライドもかなぐり捨てるものなのだなと、感心していた。とはいえ、実際過酷な刑罰をヒルダに科した場合、ヴェリエルからどんな報復があるかわかったものではない。ここらが落としどころであろうと、フェルディナントは考えたのだ。
「正直なところ、我々も貴方方の対応については二の足を踏んでいました。でも、そういうことなら、こちらとしても助かります。」
フェルディナントとユージィンは早速その方向で調整をはじめた。
王都には孤児を引き取って養育している教会がある。慈愛の女神エカルテを祀る教会であった。ヒルダとヴェリエルはそこで孤児たちの教員として働くことになったのだ。
だが贖罪の為に始めた、教会で孤児を養育する仕事を生涯することになるとは、この時の二人は想像もしていなかった。
「先生!今までありがとう!」
「先生!!離れたくないよ!」
「ううん、こちらこそ、貴方たちとずっと一緒に過ごせて楽しかった。ありがとうね。」
あの時の孤児たちは大人になり、それぞれに就職先を見つけ教会から巣立つ日であった。そして、深い絆を結ぶことができたヒルダと子供たちはお別れの時を迎えていた。
「元気でね!身体を大事にしてねーー!!」
子供たちは別れてもずっと見えなくなるまで手を振っていた。
「あっという間だったな。」
「ええ・・・」
ヒルダの目には子供たちがいなくなった寂しさから目から涙が止まらなかった。
「ね、ヴェリエル・・・」
「どうした?」
「あの・・・このお仕事続けてもいい?」
本来であれば、魔物騒動で孤児となった子供たちが独り立ちするまで、という話であったが、あれから数年が経ち、ヒルダは贖罪というよりも今の仕事にやりがいを見出していたのだ。
「あぁ、そう言うと思って、大姉君の番にはちゃんと話を通してきた。」
「え?」
「あちらも、継続してくれるほうが助かるって話だった。だからこのままここで孤児達の面倒を見ればいい。」
ヴェリエルは優しい眼差しをヒルダに向けた。
「本当なのね!ヴェリエルありがとう!!」
ヒルダは嬉しさのあまり、泣きながらヴェリエルに抱き着いた。
「こんな・・・こんな嬉しい刑罰でいいのかな?私本当に罪を償えているのかな?」
「いいだろ?何より子供たちも、慕ってくれているんだ。心の拠り所ができるのは悪い話ではないからな。」
「・・・・ありがとう。ヴェリエル。」
生涯において、ヒルダとヴェリエルの間に子供はできなかった。だがヒルダは自身が子を生むことが適わなかったとしても、たくさんの子供たちに囲まれた自分は幸せだったと、一生を終えることになるのだ。
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