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212:伝説の武器の使い道
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またもや、セレスティアの休日に、今度は叔父ユージィンとイシュタルが訪ねてきた。しかしユージィンが、何か大きな荷物を持っているのでセレスティアは少し気になっていた。それが何なのかは、すぐにわかることになるのだが。
前回と同じように、テラスに二人を通し、セレスティアとカイエル、ユージィンとイシュタルとで、向き合って席に着いたとたんユージィンは早速持ってきた荷物をテーブルに置いた。「開けてみて」との言葉にセレスティアがその荷物の荷ほどきをすると驚いた。思ってもいなかった品物だったからだ。
「叔父様、これは・・・」
「見覚えあるでしょ?」
「えぇ、それは勿論・・・イリスが使っていた『天雷弓』ですよね。」
ユージィンが持ってきたのは、イリスが所有していた『天雷弓』だったのだ。なぜこれをユージィンが持ってきたのか、セレスティアには全く意味がわからなかった。
「うん、当然こんな物騒なモノは取り上げたよ。だけど、せっかくだから使わないと勿体ないと思ってね、それでセレスだったら、使いこなせると思ったのだけど、どうかな?」
「!ちょ、叔父様!『ドラゴンスレイヤー』と同じく伝説の武器でしょ?そんな武器、私には無理です!!」
セレスティアはまさか伝説の武器を自分に託されるとは夢にも思っていなかったので、そんな不相応な物は受け取れないと断った。
「まぁそう思うよね。だけど使い手を選ぶ武器だからね。誰でも仕えるわけではないし、僕の見立てと独断と偏見でセレスならマスターになれると思ったんだよ。」
独断と偏見、凄い言葉がでてきたなとセレスティアは別の意味で感心した。
「確かに・・・弓は扱うことはできるけど、叔父様、私には致命的な問題があります。私はイリスほど魔力量は多くはありませんよ?」
天雷弓は、魔力を矢に変換することができるので、魔力量が多いほど矢を量産できるのだ。そういう意味ではイリスには都合のいい武器であった。セレスティアが自分でいうように、セレスティアは身体能力は高いが魔力は突出して高いわけではない。とは言っても、基本的な魔法は一通りは使えるので、自身がいうほど魔力が弱い訳ではない。ただ、イリスや『竜の祖』に比べれば、格段に落ちるのは否めないのだ。
「まぁあのイリスと比べたらね。っていうかあっちがレアなケースなんだから、そんなのと比べたら誰でも魔力が低いってなっちゃうよ?」
ユージィンはおかしそうに笑っていた。
「そりゃそうだけど・・・」
セレスティアはちょっとむくれていた。
「まぁ冗談はさておき、今君が妊娠してるから調度いいと思ったんだ。」
「え?どういう意味なの?」
「セレスティア、貴方は今ほぼ無敵だって言ってたの覚えてる?」
イシュタルに促され、セレスティアは頷いた。
「はい、私のお腹の子に守られているからですよね。」
「そうよ。お腹の子は、魔力や力を蓄えて精神的なものを身体を形成するまでに整えているのだけど、適度に魔力を放出してやると、実は都合がいいのよ。」
「どうしてですか?」
「つまりね、魔力が蓄えすぎると母体に影響力を及ぼすことになって『魔力酔い』を起こしてしまうのよ。簡単に言うと、人間で言うところの『つわり』のようなものね。何も対処しないと、身体に支障をきたすことになるのよ。」
「そこで、この『天雷弓』が役に立つんだよ。」
セレスティアもそこまで話を聞いて意味がやっとわかった。
「つまり、『天雷弓』を使うと魔力で矢を生成することになるから、魔力を放出することができるってことになんですね?」
「そういうこと。さすが僕の姪っ子だね。」
ユージィンはセレスティアによくできましたと言わんばかりにニッコリと微笑んだ。
「でも・・・さっきも言ったけど、こんな伝説級の武器、私が持っていてもいいのかしら?しかもつわり予防のためっていうのも、どうかと思うんだけど。」
セレスティアは、希少な武器を自分が持つことにかなり抵抗があった。それも『魔力酔い』というつわり予防のためだと思うと余計に複雑な心境になった。
「いいんじゃねぇの?」
「カイエル!、だって伝説の武器なのよ?!」
セレスティアはムキになったが、カイエルは続けた。
「俺も姉貴の番の言うことには賛成だな。せっかく使えそうなモノがあるんだったら、つわり予防でも何でも使えばいいじゃねぇか。『魔力酔い』については、俺が処置することも可能だから、まぁセレスティアがどうしても嫌って言うなら俺も無理強いはしないけどな。ま、伝説の武器だからって、そんな生真面目に捉えなくてもいいんじゃねぇの?」
「うんうん、僕は武器は使ってなんぼって思ってるからね。蔵にしまいこむよりは、つわり予防が前提だろうが、仕事で使うんだからいいと思ってるけどね。」
カイエルとユージィンの言葉に、セレスティアは自分は変に遠慮しすぎていたのかなと、思い始めていた。
「あぁ、それと注意事項だけど、ヒルダのことは非公式だからね。魔王絡みだから、あの場にいた者にも箝口令を敷いているよ。だから公式な場では渡せなくてね。」
「あぁ、だからうちに来たんですね。」
正式な辞令であれば、仕事中にこの話を持ってきたはずだ。それをしなかったのは、非公式な内容だったからこそ、こうして休日に持ってきたのだろうと、セレスティアも納得した。
「まぁ、勿論大前提として、この『天雷弓』にマスターとしてセレスが認めてもらえないと話は始まらないけどね。だけどその前にセレスの意思確認が必要だから。さ、どうするのかな?」
セレスティアは考えを纏めるため、目を瞑りしばし考え込んでいた。
その様子を皆はしばらくだまって見守っていた。
そして、セレスティアはゆっくりと瞼を開いた。
「決めました。」
※次回、5/16に更新予定です。
前回と同じように、テラスに二人を通し、セレスティアとカイエル、ユージィンとイシュタルとで、向き合って席に着いたとたんユージィンは早速持ってきた荷物をテーブルに置いた。「開けてみて」との言葉にセレスティアがその荷物の荷ほどきをすると驚いた。思ってもいなかった品物だったからだ。
「叔父様、これは・・・」
「見覚えあるでしょ?」
「えぇ、それは勿論・・・イリスが使っていた『天雷弓』ですよね。」
ユージィンが持ってきたのは、イリスが所有していた『天雷弓』だったのだ。なぜこれをユージィンが持ってきたのか、セレスティアには全く意味がわからなかった。
「うん、当然こんな物騒なモノは取り上げたよ。だけど、せっかくだから使わないと勿体ないと思ってね、それでセレスだったら、使いこなせると思ったのだけど、どうかな?」
「!ちょ、叔父様!『ドラゴンスレイヤー』と同じく伝説の武器でしょ?そんな武器、私には無理です!!」
セレスティアはまさか伝説の武器を自分に託されるとは夢にも思っていなかったので、そんな不相応な物は受け取れないと断った。
「まぁそう思うよね。だけど使い手を選ぶ武器だからね。誰でも仕えるわけではないし、僕の見立てと独断と偏見でセレスならマスターになれると思ったんだよ。」
独断と偏見、凄い言葉がでてきたなとセレスティアは別の意味で感心した。
「確かに・・・弓は扱うことはできるけど、叔父様、私には致命的な問題があります。私はイリスほど魔力量は多くはありませんよ?」
天雷弓は、魔力を矢に変換することができるので、魔力量が多いほど矢を量産できるのだ。そういう意味ではイリスには都合のいい武器であった。セレスティアが自分でいうように、セレスティアは身体能力は高いが魔力は突出して高いわけではない。とは言っても、基本的な魔法は一通りは使えるので、自身がいうほど魔力が弱い訳ではない。ただ、イリスや『竜の祖』に比べれば、格段に落ちるのは否めないのだ。
「まぁあのイリスと比べたらね。っていうかあっちがレアなケースなんだから、そんなのと比べたら誰でも魔力が低いってなっちゃうよ?」
ユージィンはおかしそうに笑っていた。
「そりゃそうだけど・・・」
セレスティアはちょっとむくれていた。
「まぁ冗談はさておき、今君が妊娠してるから調度いいと思ったんだ。」
「え?どういう意味なの?」
「セレスティア、貴方は今ほぼ無敵だって言ってたの覚えてる?」
イシュタルに促され、セレスティアは頷いた。
「はい、私のお腹の子に守られているからですよね。」
「そうよ。お腹の子は、魔力や力を蓄えて精神的なものを身体を形成するまでに整えているのだけど、適度に魔力を放出してやると、実は都合がいいのよ。」
「どうしてですか?」
「つまりね、魔力が蓄えすぎると母体に影響力を及ぼすことになって『魔力酔い』を起こしてしまうのよ。簡単に言うと、人間で言うところの『つわり』のようなものね。何も対処しないと、身体に支障をきたすことになるのよ。」
「そこで、この『天雷弓』が役に立つんだよ。」
セレスティアもそこまで話を聞いて意味がやっとわかった。
「つまり、『天雷弓』を使うと魔力で矢を生成することになるから、魔力を放出することができるってことになんですね?」
「そういうこと。さすが僕の姪っ子だね。」
ユージィンはセレスティアによくできましたと言わんばかりにニッコリと微笑んだ。
「でも・・・さっきも言ったけど、こんな伝説級の武器、私が持っていてもいいのかしら?しかもつわり予防のためっていうのも、どうかと思うんだけど。」
セレスティアは、希少な武器を自分が持つことにかなり抵抗があった。それも『魔力酔い』というつわり予防のためだと思うと余計に複雑な心境になった。
「いいんじゃねぇの?」
「カイエル!、だって伝説の武器なのよ?!」
セレスティアはムキになったが、カイエルは続けた。
「俺も姉貴の番の言うことには賛成だな。せっかく使えそうなモノがあるんだったら、つわり予防でも何でも使えばいいじゃねぇか。『魔力酔い』については、俺が処置することも可能だから、まぁセレスティアがどうしても嫌って言うなら俺も無理強いはしないけどな。ま、伝説の武器だからって、そんな生真面目に捉えなくてもいいんじゃねぇの?」
「うんうん、僕は武器は使ってなんぼって思ってるからね。蔵にしまいこむよりは、つわり予防が前提だろうが、仕事で使うんだからいいと思ってるけどね。」
カイエルとユージィンの言葉に、セレスティアは自分は変に遠慮しすぎていたのかなと、思い始めていた。
「あぁ、それと注意事項だけど、ヒルダのことは非公式だからね。魔王絡みだから、あの場にいた者にも箝口令を敷いているよ。だから公式な場では渡せなくてね。」
「あぁ、だからうちに来たんですね。」
正式な辞令であれば、仕事中にこの話を持ってきたはずだ。それをしなかったのは、非公式な内容だったからこそ、こうして休日に持ってきたのだろうと、セレスティアも納得した。
「まぁ、勿論大前提として、この『天雷弓』にマスターとしてセレスが認めてもらえないと話は始まらないけどね。だけどその前にセレスの意思確認が必要だから。さ、どうするのかな?」
セレスティアは考えを纏めるため、目を瞑りしばし考え込んでいた。
その様子を皆はしばらくだまって見守っていた。
そして、セレスティアはゆっくりと瞼を開いた。
「決めました。」
※次回、5/16に更新予定です。
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