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210:セレスティアの懸念
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「別に生まれてくる子が何であれ、可愛いくなくなるとか、そんな話ではないんです。」
セレスティアは気にしていたのだ。あの時イリスが放った言葉、
『はっ!混血児の末路は哀れなモノだ!わざわざ災いを作るとは滑稽なことだ!』
イリス自身の生い立ちから出た言葉だと言うことはわかる。彼のそんな境遇に同情できる部分はあった。だがだからといってやってしまった罪が簡単に許されるものではないけれども。だけどセレスティアは、この言葉がずっと頭について離れなかったのだ。
「どんな子であれ、我が子ですもの。きっと可愛いに決まってる。だけど・・・自分が見ていないところで、子供もが他から迫害を受けたらどうしようってそれだけが気になって・・・」
もし我が子で混血児であることで、謂れのない暴言や暴力をうけたらどうしようかと、イリスのようにそんな環境で育ってしまったらと、それが懸念事項だったのだ。
「セレスティア・・・」
イシュタルらは、以前イリスに言っていたことをセレスティアが気にしているのだろうと、セレスティアがみなまで言わずともわかっていた。
「・・・のう、セレスティア。少なくともお主やカイエルは我が子に愛情をかけるじゃろう?」
「そ、それは勿論です!」
アンティエルは優しい眼差しをセレスティアに向け、
「なら、気にしなくてよいのじゃぞ?親の愛を一身に受け、それを自覚した子は、おかしな方向に行くことは、まずないからの。」
アンティエルは説くように言った。
「とはいえ、愛情も行き過ぎというか、履き違えるとそれは毒になるがの。まぁ妾の見立てではセレスティアもカイエルもその辺りは良識の範囲内で収まるじゃろ。そこまで神経質にならんでよいぞ?」
「そうだよ、セレスティア。それに僕達もまだ見ぬ姪っ子か甥っ子を、たっくさん可愛がる予定だからね!だから愛情が足りなくなるなんてことは絶対ないよ!」
「アンティエルさん、ラーファイルさん・・・」
「セレスティア、安心しろ。もし俺の子供をいじめる奴なんざいたら、俺がブチ殺してやるから!」
「ちょっ、それはダメよ!」
早くも愛情が行き過ぎているカイエルであった。
「セレスティア、先程の質問の回答はね、この時点で言うとわからないわ。」
「わからない?」
「えぇ、経験から言うとなんだけど、どのパターンも有り得たのよ。つまりハーフで生まれた子もいれば、番の種族で生まれた子もいたので、一概には言えないわ。」
「…そうなんですね。」
イシュタルは頷き、言葉を続けた。
「そして私達と番の間に生まれた子の潜在能力は相当高いわ。実際セレスティアも実感したからわかると思うけど。」
「そうですね、私を守ってくれましたし。」
「そうね。ただし潜在能力の高さは、基本的には一代限りなんだけどね。とは言っても、私達も子に恵まれた回数は少ないから今後もそうだとは言い切れないのだけど・・・と、まぁこんなところかしら。」
「わかりました。いろいろとありがとうございました。私、必要以上に憶病になっていたみたいです。先のことはわからないけど、この子がどんな形であれ、たくさんの愛情をかけて育てていきたいと思います。」
そう言いながら、セレスティアは自身のお腹に手を当てた。そしてその上にカイエルも手を重ね、
「そうだ。俺がいるんだからな。何かあれば俺が全部受け止めてやる。だから一人で抱え込むな。」
「カイエル・・・」
セレスティアとカイエルは見つめ合っていた。
「ふふ、それでいいのよ。」
イシュタルもアンティエルもラーファイルも、そんな二人を温かく見守っていた。
セレスティアは気にしていたのだ。あの時イリスが放った言葉、
『はっ!混血児の末路は哀れなモノだ!わざわざ災いを作るとは滑稽なことだ!』
イリス自身の生い立ちから出た言葉だと言うことはわかる。彼のそんな境遇に同情できる部分はあった。だがだからといってやってしまった罪が簡単に許されるものではないけれども。だけどセレスティアは、この言葉がずっと頭について離れなかったのだ。
「どんな子であれ、我が子ですもの。きっと可愛いに決まってる。だけど・・・自分が見ていないところで、子供もが他から迫害を受けたらどうしようってそれだけが気になって・・・」
もし我が子で混血児であることで、謂れのない暴言や暴力をうけたらどうしようかと、イリスのようにそんな環境で育ってしまったらと、それが懸念事項だったのだ。
「セレスティア・・・」
イシュタルらは、以前イリスに言っていたことをセレスティアが気にしているのだろうと、セレスティアがみなまで言わずともわかっていた。
「・・・のう、セレスティア。少なくともお主やカイエルは我が子に愛情をかけるじゃろう?」
「そ、それは勿論です!」
アンティエルは優しい眼差しをセレスティアに向け、
「なら、気にしなくてよいのじゃぞ?親の愛を一身に受け、それを自覚した子は、おかしな方向に行くことは、まずないからの。」
アンティエルは説くように言った。
「とはいえ、愛情も行き過ぎというか、履き違えるとそれは毒になるがの。まぁ妾の見立てではセレスティアもカイエルもその辺りは良識の範囲内で収まるじゃろ。そこまで神経質にならんでよいぞ?」
「そうだよ、セレスティア。それに僕達もまだ見ぬ姪っ子か甥っ子を、たっくさん可愛がる予定だからね!だから愛情が足りなくなるなんてことは絶対ないよ!」
「アンティエルさん、ラーファイルさん・・・」
「セレスティア、安心しろ。もし俺の子供をいじめる奴なんざいたら、俺がブチ殺してやるから!」
「ちょっ、それはダメよ!」
早くも愛情が行き過ぎているカイエルであった。
「セレスティア、先程の質問の回答はね、この時点で言うとわからないわ。」
「わからない?」
「えぇ、経験から言うとなんだけど、どのパターンも有り得たのよ。つまりハーフで生まれた子もいれば、番の種族で生まれた子もいたので、一概には言えないわ。」
「…そうなんですね。」
イシュタルは頷き、言葉を続けた。
「そして私達と番の間に生まれた子の潜在能力は相当高いわ。実際セレスティアも実感したからわかると思うけど。」
「そうですね、私を守ってくれましたし。」
「そうね。ただし潜在能力の高さは、基本的には一代限りなんだけどね。とは言っても、私達も子に恵まれた回数は少ないから今後もそうだとは言い切れないのだけど・・・と、まぁこんなところかしら。」
「わかりました。いろいろとありがとうございました。私、必要以上に憶病になっていたみたいです。先のことはわからないけど、この子がどんな形であれ、たくさんの愛情をかけて育てていきたいと思います。」
そう言いながら、セレスティアは自身のお腹に手を当てた。そしてその上にカイエルも手を重ね、
「そうだ。俺がいるんだからな。何かあれば俺が全部受け止めてやる。だから一人で抱え込むな。」
「カイエル・・・」
セレスティアとカイエルは見つめ合っていた。
「ふふ、それでいいのよ。」
イシュタルもアンティエルもラーファイルも、そんな二人を温かく見守っていた。
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