【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん

文字の大きさ
上 下
181 / 233

180:女神の啓示

しおりを挟む
 セレスティアが恥ずかしさで顔を伏せていたところに、エメリーネが手をブンブンと振って、セレスティアの傍にやってきた。

 「セレスティアさん、お久しぶりです!」

 「えぇ、本当に!エメリーネさん見るからにお元気そうで良かったわ。」

 「はい!私元気だけが取り柄ですから。」
 
 そう言って微笑むエメリーネの見た目は以前より少し大人びてはいたものの、素直な愛らしいところはそのままだった。そしてエメリーネのうさ耳がピョコピョコと動く様はセレスティアのモフモフしたい衝動を搔き立てられるものだった。(相変わらず可愛い!!モフモフしたい!)だが、流石に空気を読んで平静を装っていた。

 「旅をしていたと聞いてますけど、フェリス王国に来ていたんですね。」

 「あ、その事なんですけど、実はアクネシア様から啓示があったので、急遽フェリス王国に来たんですよ。」

 「え?そうだったのね。アクネシア・・・もしかして女神様からの啓示ってこと?」

 アクネシアは踊りと楽器を司る三神の一人と言われている女神だ。その女神からの啓示という言葉にセレスティアが一体どういう事なのかと首をかしげると、エメリーネは言葉を続けた。

 「あ、実は最近なんですけど私『女神の踊り手』になったんです!」

 「え、そうだったの!?」

 セレスティアは驚いたものの納得した。『女神の踊り手』は女神に認められるほどの踊りをマスターし、尚且つ女神の加護を与えられた者だけが『女神の踊り手』の称号を名乗ることができるからだ。エメリーネは、なりたいと言ってた『女神の踊り手』と成ることが適ったのだ。

 「うわぁ、それはおめでとう!凄いわ。エメリーネさんならなれると思っていたけど、思ってた以上早かったのね!本当におめでとう!」

 セレスティアは本当に心から称賛していた。 

 「えへへ、ありがとうございます。」

 エメリーネは照れ臭そうにしていた。
 
 「あ、それで、女神の啓示ってどういった内容だったの?差し障りのない範囲でよければ教えてもらってもいい?」

 「あ、ソレは大丈夫ですよ。啓示を受けたのはアルカディア王国のレフテラという町で舞を披露している時でした。踊っている最中に女神から話しかけられたんです。『フェリス王国に行きなさい。』って。それでどういうことかと思ってたら『災いが育ちつつある。今ならば、まだ間に合うから早く行きなさい。』って言われちゃって・・・それで急遽フェリス王国に来たんですよ。ただ、アルカディアは島国だったので、来るのにちょっと時間かかっちゃったんですけどね。」

 エメリーネは少し申し訳なさそうに言ったが、セレスティアは首を横に振った。

 「ううん、それを教えるためにわざわざ遠いところから駆けつけてくれたんでしょ。その気持ちが本当に嬉しいわ。ありがとう。」

 セレスティアは、エメリーネの手を両手で包み込んで感謝を表した。そこでダンフィールが割って入った。

 「それで、まぁ続きなんだが、普段はあんまり龍脈は気にもとめてないが、その啓示が気になったから俺もアンテナを張り巡らせてたんだよ。そしたら龍穴のエネルギーが不自然になってることに気が付いてな。で、アンティエルの姉貴に相談しに行ったんだよ。そしたらヴェルエルの番が魔王化しかけてるって話で、女神はこの事を言ってたんだなってわかったってわけよ。」
 
 龍脈は主に地中にある為、異常があれば土を司るダンフィールがいち早く気が付く。のだが本人が言っているように、普段は気にもとめない為、女神の啓示がなければ本当にスルーしていた案件だったのだ。
  
 「僕もね、ハンイツが何かおかしなことになってるって気が付いてさ。」

 ラーファイルも異常を察知したということで、その時の状況を話始めた。

 「え、ラーファイルさんは遠征に付いていってないはずだけど、そんなこともわかるの?」
 
 セレスティアは驚いていたが、ラーファイルの次の言葉にさらに驚いていた。

 「うん、わかるよー。離れていてもね、番に何か異常があれば察知できるよ。とは言え、ソレは番を認識してからの話なんだよね。番と認識する前では、僕たちもなかなか察知するのは難しくてね・・・」

 ラーファイルが最後方が言い淀み、少し悲しそうな顔になっていたことをセレスティアは見逃さなかった。そしてその言葉の意味は後ほど知ることになる。 



※次回は3/22(火)の更新になります。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

[完結]悪役令嬢様。ヒロインなんかしたくないので暗躍します

紅月
恋愛
突然の事故死の後、なんでこんなアニメか乙女ゲームのヒロインの様な子に転生してるの?しかもコイツ(自分だけど)事故物件。 家とか周りに迷惑かけない様にしようとしたら……。 可愛い悪役令嬢様とも出会い、ヒロインなんてしたくないので、私、暗躍します。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

処理中です...