【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん

文字の大きさ
上 下
146 / 233

145:ハインツの前世~⑨~

しおりを挟む
 イベルナは、結局ボドラーク男爵に嫁ぐことになった。

 さすがに今まで着用していたボロでは体裁が悪いため、嫁入りには普段着レベルのドレスが宛がわれた。
 
 「いいわね?絶対に男爵には逆らってはダメよ?」

インジュシカはこの事を何度もイベルナに言い聞かせていた。

 「はい、勿論です。」

 「あーあ、やっと厄介者が視界に入らないと思うとせいせいするわ!」

 ミカエラがわざとイベルナに聞こえるように大きな声で嫌味を言っていた。
 
 「だよな!俺達も今までよく我慢してきたよなー!」

 兄であるニールも妹ミカエラに賛同するように、それどころか自分達がさも被害者であるような物言いであった。イベルナは顔を俯いて何も言えなかった。
(そんなこと言われても、私だって好きでこんな生まれだったんじゃない。)イベルナはそう思ってはいたものの、それを口に出すことはなかった。

 (本当にこいつらクズだな・・・)ハインツはその様子を見ていたが、口出しできないことに歯がゆさを感じていた。

 そしてイベルナは結局夫となるボドラーク男爵がどんな人物なのか、一度も会うこともないまま、迎えにきた馬車に乗せられて男爵の館に向かうことになった。

 「旦那様になる方は、どんな方なのだろう・・・」

 50歳も離れた自分を娶るなど、普通では有り得ない。あるのは大抵は余程行き遅れた年齢であるか、一度結婚を経験をしたことがあるといった、少し訳アリな場合はほとんどだ。そう言う意味では、イベルナは庶子であるため、訳アリにはなるのだろう。
 今までもいい状況とはいえなかったが、衣食住はあったので、少なくとも飢えることはなかった。(それでも毎食食べていたとは言えず、1日に一食か、時折2食食べられたら良い方であった。)それよりも嫁いだことで酷使されるのか、それとも状況は好転するのか?不安を拭えないまま、イベルナを乗せた馬車は男爵の館に到着した。


 「ここが・・・」

 イベルナが到着した、ボドラーク男爵の家は、イベルナが今まで住んでいた屋敷よりも少しこじんまりした屋敷ではあったが、豪華さはむしろこちらの方が上であった。

 (お金持ちと聞いていたから、やっぱりすごいんだ・・・)

 馬車を運転してい御者が、ドアをノックした。

 「お嬢様をお連れしました。」 
 
 「お入りなさい。」
     
 中を通されれると広いロビーがあり、そこには年配のメガネを掛けた女性が立っていた。イベルナは屋敷の中の豪華な様にキョロキョロとしていた。(凄い!お屋敷の中はより一層豪華だわ!)

 「イベルナ・ソーンヒル様、遠いところからご苦労様でした。私は家を取り仕切る役を担っております、メイド長のマーサ・ターラントと申します。以後お見知りおきを。」

 その女性の貫禄に、少したじろぎながらもイベルナも挨拶をした。

 「は、初めまして。イベルナと申します。至らぬ点も多々あるかと思いますが、ど、どうかこれからよろしくお願いします。」

 イベルナは精一杯自分の話せる範囲の丁寧語で挨拶をした。ところが、マーサはジロリとイベルナを見ると、

 「・・・私は貴方にお仕えする身ですので、私に対して敬語で話していただく必要はありません。それでは旦那様のところへご案内します。」

 「あ・・・わかりました。すみません。」

 イベルナは自分では頑張って言えた敬語だと思っていたのだが、それを否定されて落ち込んでしまった。出出しがこんな調子であったので、これからの事は不安にしか感じることができなくなっていた。



次回は1/17(月)になります!
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

薬屋の少女と迷子の精霊〜私にだけ見える精霊は最強のパートナーです〜

蒼井美紗
ファンタジー
孤児院で代わり映えのない毎日を過ごしていたレイラの下に、突如飛び込んできたのが精霊であるフェリスだった。人間は精霊を見ることも話すこともできないのに、レイラには何故かフェリスのことが見え、二人はすぐに意気投合して仲良くなる。 レイラが働く薬屋の店主、ヴァレリアにもフェリスのことは秘密にしていたが、レイラの危機にフェリスが力を行使したことでその存在がバレてしまい…… 精霊が見えるという特殊能力を持った少女と、そんなレイラのことが大好きなちょっと訳あり迷子の精霊が送る、薬屋での異世界お仕事ファンタジーです。 ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

処理中です...