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135:番の理由~後編~
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その昔、アルス・アーツ大陸には、魔王など初めはいなかった。竜が生まれ、あらゆる魔物や動物や植物の種が出そろった頃に、次は人族ができた。そしてその人族の種が多様にでてきた頃であったろうか。今までは微量であった、怒りや嘆き、恨みなどの負の感情がいつしか蓄積されていき、それはとある人物が一身に受け止めることとなった。正確には受け取った人物も自身が迫害を受けていたために、負の感情に同調し、そしてそれは吸収され、負の感情は力となった。それが魔王の始まりだった。魔王は自身が迫害されていたことから、周りを呪い、いつしか世界を呪った。
「こんな不平等な世界など、なくなってしまえばいい!」と。
魔王は、自身の負の魔力を使い、手始めには魔物を使役し始めた。それから人族の虐殺が始まったのだ。エルフ、ドワーフ、獣人、人間、などの人族への制裁という大義名分の元、魔王は同じ志を持つものを同士に加え、勢力を増大させていき、侵攻していった。
そんな様子を神々は初め、無責任にも静観していたのだ。所詮は下界の者同士の小競り合いだと。しかし、あまりの一方的な暴力に一部の神はそれを見過ごすことはできなかった。
アルス・アーツ大陸を作った神、大地母神ミラルダだ。ミラルダは協力という名目で、一人の勇者に自身の力を分け与えたのだ。そして勇者は見事、魔王を打ち滅ぼした。だが、魔王が消滅する際に、
「人族だけはないぞ!神々にも!いつか必ず復讐してやる!その時をまで首を洗って待っているがいい!」そう言い残して、魔王の魂は六つに分かれて、寄りにもよって、当時生き物の中では頂点にいると言われていた、竜の身体に入り込んだのだ。魔王は足掻いた。人の身体ではなく、竜の身体であれば次は負けはしないと。そして、これが皮肉にも『竜の祖』の始まりであった。
六つの分かれた魂はそれぞれの属性に分かれていた。魔王の魂の一部が入った竜達は身体に変化が起きてしまった。突然変異の如く、その体は他の竜を圧するほど大きくなり、また形もそれぞれに変化がおきた。羽が4枚になったり、腕が増えていたり、角が増えたりと様様に変化していった。そしてそれらは、人のあらゆる言語を理解し、魔力量も膨大となったのだ。しかし力が増えたと同時に魔王の原動力となる「世界を滅ぼしてやりたい!」という衝動に掻き立てられることになった。
その様を見ていた女神ミラルダは危険だと判断し『竜の祖』の中にある、その衝動的なモノを取り払ったのだ。そしてその取り払った衝動的なモノ、つまり『魔王の欠片』は、輪廻の海に溶け込んでしまった。そして、『魔王の欠片』を持って生まれ者は皮肉にもそれぞれの竜の力の残照があったことから、それが目印になっていた。そしてそれは元々『竜の祖』自身のモノであったことから、惹かれずにはいられない存在となってしまったのだ。
「え・・・まさか・・・」
「俺達にとって番とは、元々は自分たちの一部であったものだ。だから惹かれずにはいられない。初めはこんなこと受け入れたくはなかったけどな。だけど、離れてしまったらそれは、もう俺達ではない。別物だ。だけど、どうしても惹かれてしまう。だから『番』なんだよ。」
カイエルはそう言うと、うっとりとしながらセレスティアの頬に手を添えた。
「こんな不平等な世界など、なくなってしまえばいい!」と。
魔王は、自身の負の魔力を使い、手始めには魔物を使役し始めた。それから人族の虐殺が始まったのだ。エルフ、ドワーフ、獣人、人間、などの人族への制裁という大義名分の元、魔王は同じ志を持つものを同士に加え、勢力を増大させていき、侵攻していった。
そんな様子を神々は初め、無責任にも静観していたのだ。所詮は下界の者同士の小競り合いだと。しかし、あまりの一方的な暴力に一部の神はそれを見過ごすことはできなかった。
アルス・アーツ大陸を作った神、大地母神ミラルダだ。ミラルダは協力という名目で、一人の勇者に自身の力を分け与えたのだ。そして勇者は見事、魔王を打ち滅ぼした。だが、魔王が消滅する際に、
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その様を見ていた女神ミラルダは危険だと判断し『竜の祖』の中にある、その衝動的なモノを取り払ったのだ。そしてその取り払った衝動的なモノ、つまり『魔王の欠片』は、輪廻の海に溶け込んでしまった。そして、『魔王の欠片』を持って生まれ者は皮肉にもそれぞれの竜の力の残照があったことから、それが目印になっていた。そしてそれは元々『竜の祖』自身のモノであったことから、惹かれずにはいられない存在となってしまったのだ。
「え・・・まさか・・・」
「俺達にとって番とは、元々は自分たちの一部であったものだ。だから惹かれずにはいられない。初めはこんなこと受け入れたくはなかったけどな。だけど、離れてしまったらそれは、もう俺達ではない。別物だ。だけど、どうしても惹かれてしまう。だから『番』なんだよ。」
カイエルはそう言うと、うっとりとしながらセレスティアの頬に手を添えた。
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