【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん

文字の大きさ
上 下
111 / 233

110:同棲します!~後編~

しおりを挟む
 「カイエル?!」

 セレスティアはカイエルが一体何を言う気なのかと、内心かなり焦っていた。なにせカイエルは口が悪いし、少々傍若無人なところがあるからだ。

 「一応・・・っていうか、まぁご挨拶を・・・」

 「「「・・・・・」」」

 三人は耳を疑った。挨拶という言葉がカイエルの口から出たからだ。

 「挨拶?」

セレスティアが疑問形で問うと、

 「そ、そりゃそうだろう!だってそのやっぱり女じゃなくって、女性と暮らすことになるし、親、じゃなくって親御さんや家族としては心配だろうだからな・・・」

 セレスティアは驚いた。カイエルが至極まともなことを言っていたからだ。だがこれはカイエルに対してものすごく失礼である。しかし、セレスティアだけでなく、セスもディーンも目をまん丸にしていたので、セレスティアと同じ気持ちであったようだ。カイエルは咳ばらいをして、続けた。

 「俺は知っての通り『竜の祖』だ。だから・・・人じゃないだけに、余計心配になるのは、無理もないと思っている。だけど、俺がセレスティアを大事にしたいという気持ちは、竜とか人とかそういう関係ないんだ。ただセレスティアと一緒に、セレスティアがずっと笑って過ごせるように死ぬまで傍にいたいんだ!」

 セレスティアは、驚いた。確かにいつもは離れたくないとか、ヤキモチ焼きとは知っていたが、カイエルがそんな風に考えていたことを初めて知ったからだ。

 「だから・・・お父さん、お兄さん!セレスティアを俺にください!!!」

 カイエルは対面に座っているセスとディーンに向かって、言うと同時に頭を下げていた。隣に座っていたセレスティアは、瞬時に顔が真っ赤になった。(ちょ!!それ結婚の挨拶だから!!!)とはいえ、これから一つ屋根の下で、一緒に暮らすっことになるのだから、ある意味間違ってはいないのか?とも思わなくもなかった。

 「カイエル・・くんだったね。」
  
 セスは、カイエルの見た目は若いが、実際は数千年生きていると言われている『竜の祖』ではあることはわかっていたが、あえて娘の彼氏と言う意味合いで、言葉を選んだ。

 「娘を、セレスティアをよろしく頼む。」

 「ち、父上?!」

 ディーンは驚いた。セスがあっさりと受け入れたからだ。

 「い、いいのですか?」

 ディーンはまだ少し納得していない様子であったが、

 「私はセレスティアを信じてるよ。」

 「お父様・・・」

 「竜騎士の5年縛りはちゃんと守るって話だろ?私はセレスティアを信じるし、セレスティアが彼をカイエル君を信じるというなら、私はそれでいい。」

 その言葉にカイエルも驚いている様子だった。

 「あ、ありがとう!お父様!」

 セレスティアは感極まって、父セスに抱き着いた。

 「お、お父さんの信頼に必ず答えますので、あ、安心してください!」

 カイエルは慣れない言葉ながらも、絶対にセレスティアを今度は悲しい目に合わせないと誓っていた。

 「カイエル、えと、その気持ちは嬉しいけど、結婚の挨拶・・・じゃないのよ?」

 「そ、そうだったな!お父さんお兄さん!結婚の際にはまた改めて挨拶に来ますので!」

 セレスティアはその言葉にまたもや真っ赤になった。セスもディーンもカイエルの様子に、想定していたよりも、斜め上ではあったものの悪い気はしていなかった。

 「ふふ、一生懸命な様子はわかるよ。」 

 「はぁ、なんか構えてた俺がバカみたいだ・・・」

 二人は『竜の祖』であることから、かなり身構えていたが、カイエルがまるで普通の結婚の挨拶にきた青年のようであったことから、拍子抜けであった。
 だけども、それ以上に二人の様子がなんだかんだと、仲睦まじい様子であることから、(竜騎士であるから、あと4年ほどは猶予はあるが、相手が決まっているというのも、安心できるというか、寂しくもあるというか何とも複雑なものだな。)と、父セスは思いを巡らせていた。 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。 花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。 だけどレティシアの力には秘密があって……? せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……! レティシアの力を巡って動き出す陰謀……? 色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい! 毎日2〜3回更新予定 だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...