【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん

文字の大きさ
上 下
107 / 233

106:5人目の番

しおりを挟む
 ダン!


 音楽が終わり、エメリーネは締めの踊りの姿勢で中腰で足をクロスにし両手広げ、俯いていた。

だが、会場はシーンとしたままであった。

(え?あれれ?私一生懸命踊ったのだけど、つまらなかった?)エメリーネは最後の締めのポーズをとったまま、拍手のひとつもなかったので、内心焦りとショックが渦巻いた。俯いたまま、涙が目に溜まったが、それもほんの一瞬のことで・・・

 一世に拍手喝采となった。次々に席から立ち上がり会館の中はスタンディングオベーションが起こったのだ。エメリーネは驚いて顔を上げた。

 「エメリーネちゃん!すごかった」
 「踊りでこんなに感動をもらえるなんて!」
 「ありがとう!いいもの見せてもらったよ!!」
 「なんだか、元気を貰ったよ!ありがとう!」

 観客である竜騎士達が拍手と共にエメリーネを称える言葉を口々に発していた。エメリーネは驚いた。まさかスタンディングオベーションが起こるとは思ってもみなかったからだ。 

 「あ、あ、あ、ありがとうございます!ありがとうございます!」

 エメリーネは先程はショックから泣きそうになっていたが、今は感極まってしまい、嬉し泣きになってボロボロと泣きながら、彼女は観客に向かって何度も何度も頭を下げていた。

 (本当に、凄かった。確かにこれを私一人で見るには勿体なかったわね。)セレスティアも、惜しみない拍手を送り、叔父ユージィンがかなり強行にイベントにしたことを、返って良かったのだと納得した。とはいえ、司会であることから、いつまでも感動に浸っているわけにはいかないので、セレスティアは、拡声器を使いコメントを述べているところ、

 「本当に素晴らしい踊りで「ちょっと待ったぁ!!!」」

 突如、割って入る言葉があった。ダンフィールだ。壇上下にいた、ダンフィールはエメリーネに近づいていった。

 「え?」

 壇上にいたエメリーネもその声に驚いて、声の主を見た。

 「お、おい、舞姫大丈夫か?」
 「助けに行かなくていい・・のか?」
 「い、いやでも傍にいる団長が動いていてないから大丈夫じゃないか?」
 「もしかして何かの演出なんじゃ?」

 突如、ダンフィールの不可解な行動に、止めた方がいいのでは?という声も上がっていたが、一緒に並んで座っていたユージィンが微動だにせず、見守っていることから、他の竜騎士達は団長に習い静観することにした。

 「あれ?あの人どっかで・・・」

 テオは舞台袖から、ダンフィールを目視して、見覚えがあった。
 
 「見つけた、俺の・・・番!!」

 ダンフィールは目に涙を溜めていたものが頬を伝い流れていた。

 「え・・・番?」 
 
 エメリーネは番と言う言葉に驚いた。そして同時に先程腕輪を付けた時に感じていたドキドキとした胸が熱い感覚が、ダンフィールを見てより大きく感じていることに、エメリーネははっきりと自覚していた。

 「・・・あ、貴方は、私の番なのですか?」

少しオドオドしながらも、エメリーネは、ダンフィールに問いかけてみた。

 「あ、あぁ!やっと!!」

 ダンフィールは壇上に上がり、嬉しさの余りいきなりエメリーネを抱きしめた。
 が、

 「きゃーーーー!!!」

 いきなり抱きしめられたことに、エメリーネ驚いてしまい、ついダンフィールを投げてしまった。ダンフィールの大きな体はあっという間に床に沈んでしまった。

 「「「「えーーーー!」」」」

 何度も言うが、エメリーネは武術の達人である。ダンフィールはエメリーネの2倍であろう体格ではあるが、エメリーネは大男でも難なく投げ飛ばすことができるのだ。会場にいる竜騎士達は獣人のラブロマンスが展開されるかと思ったら、まさかのエメリーネの投げ技に面を食らっていた。

 「わはははは、なかなか面白い余興じゃのぉ!」

 「ア、アンティエル、面白いけど余興ではないと思うよ。」

 アンティエルは弟ダンフィールが番に投げ飛ばされた様を見て、大笑いしていた。フェルディナント王子も言いながらも必死に笑いを堪えていた。

 「ぷっ、ぷくくく、ごめんダン。笑っちゃ失礼なのはわかってるけど、ぷくくくく!!」

 ラーファイルは笑いたい気持ちと堪えなければという気持ちが混じり合い、変な笑い方になっていた。
  
 「兄貴、だっせぇ」

 カイエルがぽつりと言うと、イシュタルは窘めた。

 「ダメよ、カイエル、そんな・・こと・・いっちゃあ。」

 「姉貴、めっちゃ笑い堪えてるじゃん。説得力ねー」

 「だって・・ねぇ・・・」

 イシュタルは笑いをまだ堪えきれず、明後日の方向を向くのがやっとであった。
 セレスティアは、偉丈夫であるダンフィールを投げ飛ばしたエメリーネを見て、(うん、やっぱり私あの時助けなくてもよかったんだな。)と今更ながらに納得した。

 「!!ご、ごめんなさい、ごめんなさい!ついうっかり条件反射で投げてしまいました!本当にごめんなさい!だ、大丈夫ですか?」
 
 エメリーネは仰向けに倒れているダンフィールの傍に座り、安否を気にしていた。

 「・・・あぁ、大丈夫だ。俺の番は強いのだな。久々に投げ飛ばされたよ。」

 と、むしろ嬉しそうにエメリーネに笑いかけていたので、エメリーネはホッとした気持ちになっていた。


 ダンフィールに番が見つかったことを良かったと思った。だけど同時にセレスティアは、不思議に思っていた。このエメリーネとの出会いは叔父の無茶ぶりから始まったものではなかったか、と。叔父はもしや知っていた?セレスティアは思った。叔父ユージィンはまだ自分が知らない事情があるのだろうと、

 『君は「覚醒者」だね?』

あの時、イリスという男は言っていた。

・・・無理に聞き出す必要はないだろう。必要な時がくれば、きっと叔父は教えてくれる。セレスティアはそんな気がしていた。

 今は、ダンフィールと番であるというエメリーネが出会たことに素直に良かったと思うことにしようと、二人を温かく見守っていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

薬屋の少女と迷子の精霊〜私にだけ見える精霊は最強のパートナーです〜

蒼井美紗
ファンタジー
孤児院で代わり映えのない毎日を過ごしていたレイラの下に、突如飛び込んできたのが精霊であるフェリスだった。人間は精霊を見ることも話すこともできないのに、レイラには何故かフェリスのことが見え、二人はすぐに意気投合して仲良くなる。 レイラが働く薬屋の店主、ヴァレリアにもフェリスのことは秘密にしていたが、レイラの危機にフェリスが力を行使したことでその存在がバレてしまい…… 精霊が見えるという特殊能力を持った少女と、そんなレイラのことが大好きなちょっと訳あり迷子の精霊が送る、薬屋での異世界お仕事ファンタジーです。 ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~

八重
恋愛
【全32話+番外編】 「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」  伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。  ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。  しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。  そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。  マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。 ※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております

呪われた黒猫と蔑まれた私ですが、竜王様の番だったようです

シロツメクサ
恋愛
ここは竜人の王を頂点として、沢山の獣人が暮らす国。 厄災を運ぶ、不吉な黒猫─────そう言われ村で差別を受け続けていた黒猫の獣人である少女ノエルは、愛する両親を心の支えに日々を耐え抜いていた。けれど、ある日その両親も土砂崩れにより亡くなってしまう。 不吉な黒猫を産んだせいで両親が亡くなったのだと村の獣人に言われて絶望したノエルは、呼び寄せられた魔女によって力を封印され、本物の黒猫の姿にされてしまった。 けれど魔女とはぐれた先で出会ったのは、なんとこの国の頂点である竜王その人で─────…… 「やっと、やっと、見つけた────……俺の、……番……ッ!!」 えっ、今、ただの黒猫の姿ですよ!?というか、私不吉で危ないらしいからそんなに近寄らないでー!! 「……ノエルは、俺が竜だから、嫌なのかな。猫には恐ろしく感じるのかも。ノエルが望むなら、体中の鱗を剥いでもいいのに。それで一生人の姿でいたら、ノエルは俺にも自分から近付いてくれるかな。懐いて、あの可愛い声でご飯をねだってくれる?」 「……この周辺に、動物一匹でも、近づけるな。特に、絶対に、雄猫は駄目だ。もしもノエルが……番として他の雄を求めるようなことがあれば、俺は……俺は、今度こそ……ッ」 王様の傍に厄災を運ぶ不吉な黒猫がいたせいで、万が一にも何かあってはいけない!となんとか離れようとするヒロインと、そんなヒロインを死ぬほど探していた、何があっても逃さない金髪碧眼ヤンデレ竜王の、実は持っていた不思議な能力に気がついちゃったりするテンプレ恋愛ものです。世界観はゆるふわのガバガバでつっこみどころいっぱいなので何も考えずに読んでください。 ※ヒロインは大半は黒猫の姿で、その正体を知らないままヒーローはガチ恋しています(別に猫だから好きというわけではありません)。ヒーローは金髪碧眼で、竜人ですが本編のほとんどでは人の姿を取っています。ご注意ください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...