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95:ドラゴンスレイヤー
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『ドラゴンスレイヤー』
古から伝えられていた剣(つるぎ)ではあったが、もはやおとぎ話の類だと思われていた代物であった。その名の示す通り、竜殺しの剣であり『竜の祖』の固い竜の鱗を断ち切ることができる唯一の剣だと言われている。だが、その剣は使い手と共に封印されたというのが、伝承で残っているのみで、その後見たものはいないと言われていたのだ。
「こ、これが、ドラゴンスレイヤー・・・」
ディアナも話に聞いていただけで、実物を見たのは初めてであった。いや、この実物を見たのは恐らく今世では、この瞬間に立ち会ったこの場の者だけであったのだ。
「さ、どーぞ。ではライモンドを返してくれるね?」
「わ、わかったわよ!」
ディアナはアレだけ、のらりくらりと躱していたユージィンが、急に素直にお目当てであったドラゴンスレイヤーをすんなり渡してくることに違和感を感じない訳ではなかったが、素直に応じることにした。(一体何を企んでいるの?)
「だ、団長~~~」
「無事みたいで良かったよ。」
戻ってきたライモンドは、ユージィンに肩を叩かれていた。
「ライモンド良かったわ。」
「イ、イシュタル様まで、ありがとうございます!」
「ライモンド副官、ご無事でよかったです!」
『ギャウギャウ』(訳:しょうがねーメガネだな。)
「セレスティアもカイエル君にもすまないね、副官だというのに、不甲斐ないところをお見せしてしまったようだ。だけどありがとう、助かったよ。」
ライモンドは恥ずかしそうに照れ笑いをしセレスティアにとカイエルにお礼を言った。
「団長・・・ですが、良かったですか?掌から剣をだすとは思いませんでしたが・・・あれはとても大事な物だったのでは・・・」
ライモンドはユージィンに心底申し訳なさそうな顔をしていた。
「いいんだよ。」
そう言うと、ユージィンはディアナとダンフィールへ視線を移していた。
ディアナは警戒をしてはいたが、喜んでいた。お目当てのドラゴンスレイヤーが手に入ったのだから。
「ディアナ、悪いことはいわない。それは手放した方がいい。嫌な予感がする。」
「何言ってるのよ?!やっと手に入ったのよ!」
キッとディアナは忠告をしてくれたダンフィールを睨みつけていた。
「はは~ん、わかったわ。貴方これが怖いんでしょ?唯一、竜を断ち切れる、この剣が?」
「い、いやそう言うことじゃなくて・・・」
ダンフィールは胸騒ぎがしていた。この剣を見たのは、ダンフィールも久しぶりであったのだが、久しぶりすぎて、封印されていたそれなりの理由があったはずなのだが、思い出せなかったのだ。ディアナは、お目当ての剣が手に入ったことで、悦に入っていた。その顔はうっとりとし、
「そうね、これが手に入ったのだから、よく考えればもう『竜の祖』にビクビクする必要もなくなったのだわ。」
ディアナは手にしたドラゴンスレイヤーを持って構えた。
「うふふ、今のうちに憂いは断っておかないとね。」
そう言うと、ディアナは突然イシュタルに襲い掛かった。
「『あの方』の為にも、!邪魔な竜は少しでも減らさないとね!!!」
ディアナは豹の獣人特有の俊足と跳躍力を活かし、まっしぐらにイシュタルに向かった。
「イシュタルさ・・・!!」
セレスティアは慌てて駆け寄ろうとしたが、ユージィンに制された。セレスティアは驚いたが、ユージィンがこういうことをするのは必ず理由があると、セレスティアも瞬時に理解した。ディアナはイシュタルに覆いかぶさるように剣を振り上げ、
「あははは、死ねっ!!!」
剣を振り下げようとした瞬間、
「バカな子・・・・」
だが、イシュタルは避けずにそのまま体制であった。そして、
「きゃあああああああ!!!」
ディアナは突然苦しみ、跳躍していた姿勢から崩れ落ち地面に落下した。カランと、ディアナの手からドラゴンスレイヤーはすり抜け地面に落ちた。
(な、なにこれ?一体何が・・?)ディアナは訳が分からなかった。突然雷に打たれたような衝撃が己の身に起こったのだ。
「ディアナ!!!」
ダンフィールは慌てて駆け寄りディアナを介抱していた。ディアナは雷に打たれたような衝撃から、身体が痺れていて、思うように体を動かすことができなかった。
「『あの方』とやらから聞いていないのかい?注意事項を?」
そういうと、ユージィンは地面に落ちたドラゴンスレイヤーを拾い、ディアナを見下ろした。
「くっ、うぅうう。」
ディアナは悔しさと苦しさから目から涙が滲み出ていた。
「これはね、所有者を選ぶんだよ。持ってるだけなら、問題はないけど、君のように所有者以外が使おうとするとね、拒否反応を示すんだよ。」
「ば・・・馬鹿な・・・剣が選ぶ・・・とでも?」
「実際、今しがた体験しただろ?」
「っつ!」
「君の性格から、使うだろうと思ってはいたんだけど、思った通りだったよ。おかげで直ぐにコレも返ってきたしね。」
「あんたが・・・あんたがその剣のマスターだとでも?」
「勿論、と言いたい所だけど・・・僕以外にもいるけどね。ま、早い者勝ちってところで、今は僕かな?だから・・・」
言いながらユージィンはドラゴンスレイヤーの切っ先を掌に当てると、剣は吸い込まれるように沈んでいき、剣は掌から身体の中に納まってしまった。
「このように、所有者が『鞘』となる、という訳だよ。」
ユージィンはそう言うと、にっと笑った。
古から伝えられていた剣(つるぎ)ではあったが、もはやおとぎ話の類だと思われていた代物であった。その名の示す通り、竜殺しの剣であり『竜の祖』の固い竜の鱗を断ち切ることができる唯一の剣だと言われている。だが、その剣は使い手と共に封印されたというのが、伝承で残っているのみで、その後見たものはいないと言われていたのだ。
「こ、これが、ドラゴンスレイヤー・・・」
ディアナも話に聞いていただけで、実物を見たのは初めてであった。いや、この実物を見たのは恐らく今世では、この瞬間に立ち会ったこの場の者だけであったのだ。
「さ、どーぞ。ではライモンドを返してくれるね?」
「わ、わかったわよ!」
ディアナはアレだけ、のらりくらりと躱していたユージィンが、急に素直にお目当てであったドラゴンスレイヤーをすんなり渡してくることに違和感を感じない訳ではなかったが、素直に応じることにした。(一体何を企んでいるの?)
「だ、団長~~~」
「無事みたいで良かったよ。」
戻ってきたライモンドは、ユージィンに肩を叩かれていた。
「ライモンド良かったわ。」
「イ、イシュタル様まで、ありがとうございます!」
「ライモンド副官、ご無事でよかったです!」
『ギャウギャウ』(訳:しょうがねーメガネだな。)
「セレスティアもカイエル君にもすまないね、副官だというのに、不甲斐ないところをお見せしてしまったようだ。だけどありがとう、助かったよ。」
ライモンドは恥ずかしそうに照れ笑いをしセレスティアにとカイエルにお礼を言った。
「団長・・・ですが、良かったですか?掌から剣をだすとは思いませんでしたが・・・あれはとても大事な物だったのでは・・・」
ライモンドはユージィンに心底申し訳なさそうな顔をしていた。
「いいんだよ。」
そう言うと、ユージィンはディアナとダンフィールへ視線を移していた。
ディアナは警戒をしてはいたが、喜んでいた。お目当てのドラゴンスレイヤーが手に入ったのだから。
「ディアナ、悪いことはいわない。それは手放した方がいい。嫌な予感がする。」
「何言ってるのよ?!やっと手に入ったのよ!」
キッとディアナは忠告をしてくれたダンフィールを睨みつけていた。
「はは~ん、わかったわ。貴方これが怖いんでしょ?唯一、竜を断ち切れる、この剣が?」
「い、いやそう言うことじゃなくて・・・」
ダンフィールは胸騒ぎがしていた。この剣を見たのは、ダンフィールも久しぶりであったのだが、久しぶりすぎて、封印されていたそれなりの理由があったはずなのだが、思い出せなかったのだ。ディアナは、お目当ての剣が手に入ったことで、悦に入っていた。その顔はうっとりとし、
「そうね、これが手に入ったのだから、よく考えればもう『竜の祖』にビクビクする必要もなくなったのだわ。」
ディアナは手にしたドラゴンスレイヤーを持って構えた。
「うふふ、今のうちに憂いは断っておかないとね。」
そう言うと、ディアナは突然イシュタルに襲い掛かった。
「『あの方』の為にも、!邪魔な竜は少しでも減らさないとね!!!」
ディアナは豹の獣人特有の俊足と跳躍力を活かし、まっしぐらにイシュタルに向かった。
「イシュタルさ・・・!!」
セレスティアは慌てて駆け寄ろうとしたが、ユージィンに制された。セレスティアは驚いたが、ユージィンがこういうことをするのは必ず理由があると、セレスティアも瞬時に理解した。ディアナはイシュタルに覆いかぶさるように剣を振り上げ、
「あははは、死ねっ!!!」
剣を振り下げようとした瞬間、
「バカな子・・・・」
だが、イシュタルは避けずにそのまま体制であった。そして、
「きゃあああああああ!!!」
ディアナは突然苦しみ、跳躍していた姿勢から崩れ落ち地面に落下した。カランと、ディアナの手からドラゴンスレイヤーはすり抜け地面に落ちた。
(な、なにこれ?一体何が・・?)ディアナは訳が分からなかった。突然雷に打たれたような衝撃が己の身に起こったのだ。
「ディアナ!!!」
ダンフィールは慌てて駆け寄りディアナを介抱していた。ディアナは雷に打たれたような衝撃から、身体が痺れていて、思うように体を動かすことができなかった。
「『あの方』とやらから聞いていないのかい?注意事項を?」
そういうと、ユージィンは地面に落ちたドラゴンスレイヤーを拾い、ディアナを見下ろした。
「くっ、うぅうう。」
ディアナは悔しさと苦しさから目から涙が滲み出ていた。
「これはね、所有者を選ぶんだよ。持ってるだけなら、問題はないけど、君のように所有者以外が使おうとするとね、拒否反応を示すんだよ。」
「ば・・・馬鹿な・・・剣が選ぶ・・・とでも?」
「実際、今しがた体験しただろ?」
「っつ!」
「君の性格から、使うだろうと思ってはいたんだけど、思った通りだったよ。おかげで直ぐにコレも返ってきたしね。」
「あんたが・・・あんたがその剣のマスターだとでも?」
「勿論、と言いたい所だけど・・・僕以外にもいるけどね。ま、早い者勝ちってところで、今は僕かな?だから・・・」
言いながらユージィンはドラゴンスレイヤーの切っ先を掌に当てると、剣は吸い込まれるように沈んでいき、剣は掌から身体の中に納まってしまった。
「このように、所有者が『鞘』となる、という訳だよ。」
ユージィンはそう言うと、にっと笑った。
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