【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん

文字の大きさ
上 下
88 / 233

87:セレスティアは実はモフモフに弱かった。

しおりを挟む
 「単刀直入に言いますね。アレは貴方が持っていても仕方のないものです。返していただけませんか?」

 豹の獣人の女、ディアナは直球で用件を伝えてきたが、『アレ』という意味深なワードは残したままであった。

 「へぇ・・・なぜ僕がそのアレとやらを持っていると?」

 ユージィンも敢えて『アレ』については、突っ込みをいれず、質問を返した。

 「あの遺跡の周りは森です。森の中には私達獣人の祖達である、獣たちがいます。私の眷属に聞けば、なんてことはなかったです。」

 「なるほどねぇ、そういえば君たち獣人は元となる同じ種であれば意思の疎通ができるんだったね。」

 獣人は、同じ種族、例えば犬族であれば、動物の犬との意思疎通が可能なのである。だが、稀に他種族と意思疎通ができるものもいるのだ。

 「えぇ、だから貴方が持って行ったことは知っているの。だから返して欲しいのです。」

 ディアナは表情はニコニコとして、やんわりと言いつつも主張ははっきりとしていた。

 「んー、返せっと言われてもねぇ。そもそも『アレ』とやらが君のだっていう証拠はあるのかい?」

 ユージィンも笑顔を崩さす聞き返していた。 

 「あの遺跡の場所に辿り着いたのが何よりの証拠だと思いますけど?あそこは普通では行けませんから。」

 「はは、それでは証拠にはならないよ。そんなこと言ったら、トレジャーハンターは全員自分のモノと主張することができるじゃないか。」
 
 「も~しょうがないですね、ならこれ見てください。」

 ディアナはちょっと拗ねたような仕草をしつつも自身が持っていた鞄から、とあるアイテムを取り出して、テーブルに置いて見せた。

 「ほぅ・・・これは?」

 ユージィンも興味有り気に、そのアイテムをマジマジと見つめていた。
 



 王都___


 「獣人・・・だったんですね。」

 セレスティアは実は獣人を見たのは初めてであった。兎族と名乗った彼女エメリーネは、兎特有の長い耳を持ち、赤茶色の長い髪を二つにおさげをして眼鏡をかけていたが、眼鏡の奧の瞳の色はマーブル模様、虹彩色を持つ特徴的な瞳であった。

 「はい。あの・・それでお名前を教えていただけませんか?」

 「あ、あぁ失礼。獣人を見たのは初めてだったもので。私はセレスティア・ローエングリンと言います。」

 「セレスティアさん・・・ステキなお名前ですね。」

 そういうと彼女はニッコリと笑ったのだが、セレスティアは堪らなかった。何せ目の前にある耳は兎の耳なのである。(可愛い!!モフモフしたい!)実はセレスティアは動物好きであったので、目の前にいる兎の耳を持つエメリーネに少々興奮していた。(注:断じて性的な意味ではない)

 「?あのセレスティアさん?」

セレスティアは声をかけられ、自分が少々取り乱したことに気が付いた。

 「あ、あぁ、何度も失礼しました。それでは、私はこれにて、「あの!」へ?」

 セレスティアは自分が仕事中だということに我に返り、本来の目的(お菓子を買う事)を遂行しようとしていたのだが、エメリーネに呼び止められてしまった。そしてエメリーネの顔をよく見るとなんだか思い詰めていた。

 「えっと、まだ何か?」

 さすがにセレスティアも様子がおかしいことに気が付き、もしや厄介なことを持ち込まれるのでは?という予感めいたものが働いた。

 「あの、助けてもらったばかりな上、こんなことを言うのは図々しいのを承知の上で言うのですが、どうか、私に協力を・・・ご助力いただけないでしょうか?!」

 「!」

 やっぱり!と思ったものの、エメリーネは瞳はウルウルと涙目になって懇願しており、その姿は正に小動物を彷彿するもので、セレスティアの琴線に触れていた。(か、可愛いーー!だ、だめよ、セレスティア!兎の可愛い姿に惑わされちゃあ!)彼女の中で厄介毎は勘弁したいという気持ちと、ほっとけないという気持ちがせめぎ合っていたのであった。

 「ど、どうして私に?」

 「すみません、すみません!私ここまで一人ぼっちで来たのはいいんですが、知り合いもいないしどうしたらいいか、途方に暮れていたんです。そこへ助けてくれたセレスィアさん貴方を見て、ピンと来るものがあったんです。信じてもらえないでしょうが、うちの家系は代々『直感』は信じろという家訓があるんです!」

 なに、その信憑性の薄い話!とセレスティアは思ったが、思いのほかエメリーネの顔は真剣で今にも泣きそうになっている様子を見て、セレスティアは溜息を付いた。

 「わかりました。お話しだけでも伺いましょう。」 

 セレスティアは結局ほっとくという選択肢を選ぶことはなかった。 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

報酬を踏み倒されたので、この国に用はありません。

白水緑
ファンタジー
魔王を倒して報酬をもらって冒険者を引退しようとしたところ、支払いを踏み倒されたリラたち。 国に見切りを付けて、当てつけのように今度は魔族の味方につくことにする。 そこで出会った魔王の右腕、シルヴェストロと交友を深めて、互いの価値観を知っていくうちに、惹かれ合っていく。 そんな中、追っ手が迫り、本当に魔族の味方につくのかの判断を迫られる。

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

処理中です...