【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん

文字の大きさ
上 下
40 / 233

39:フードの男

しおりを挟む
その頃の竜の厩舎では、

 『『!!』』

 カイエルとイールは何かの気配に気が付いた。カイエルは飛び出しそうになるも、イールに止められていた。

 『気持ちはわかるけど、大人しくしていなさい!セレスティアに迷惑がかかるわよ!』

 イールはカイエルに『セレスティアが困る』というようなワードを使うとカイエルが大人しくなることことがわかっていた。

 『くっ!』

 カイエルは直ぐにもセレスティアの傍に駆け付けたかったが、さすがに日中では人目につきすぎることもあり、何とか気持ちを押し殺していた。

 『大丈夫よ。確かに放っておけない気配だけど、少なくとも今はセレスティアに害が及ぶものではないわ。』

 『ほ、本当か?!』

 『ええ、今のところはね。』

そう言ってイールは目の前には何もないがその気配の方向見つめていた。

  





 「そうですけど、失礼ですがここは関係者以外は立ち入り禁止ですよ。もし面会を希望されるのであれば、あちらで受付をしていただけますか?」

 そう言ってセレスティアは、門付近にある、受付所を指差した。

 「あ、そうなの?わかった。受け付けすればいいんだね!」

 男の反応を見て、竜騎士の誰かの身内なのだろうと思い、安堵するも男の次の言葉で一転した。

 「あ、でも・・・名前知らないんだ。」

 「・・・え?」

 名前を知らない、ということは、関係者ということではなくなる。ただの飛竜見たさか、軍内部の誰かに懸想をしたかで会いに来たということになる。

 「申し訳ありませんが、関係者でないのでしたら通すわけには参りません。お引き取りをお願いします。」

 「えーなんでそんなこと言うの?!俺は会いに来ただけなんだよ?」

 フードを被った男は甘えた感じで、まるで駄々っ子のような物言いだった。だが、不思議と違和感はない。

 「いえ、だから名前も知らないんですよね?だったら関係者ではないですよね?」

 セレスティアが投げかけるも、男の返ってきた返事は思いも寄らないものであった。

 「関係?何言ってんの?大ありだよ!」

 男は、なんでそんなことを言われるのかわからない、といった口調であった。

 「どういう意味ですか?」

 「俺の番がここにいるんだもん!大ありでしょ?!」

 「・・・・え?」

 まさか『番』という言葉が、目の前の男の口から出てくるとは思わなかったので、セレスティア驚いた。

  





 「ローエングリン団長!申し訳ありません!至急お話ししたい事があります!」

 セレスティアは今しがた出てきた、団長室にトンボ返りすることになってしまった。とはいえ、敷地内であるから当然大した距離ではない。慌てて、団長室のノックをすると、声がした。
 
 「入っていいよ。?どうしたんだい?」

 「も、申しわけありません。至急にご相談したいことができまして・・・」

 団長室に入ると、仕事モードになっていたユージィンはライモンド副官と一緒にいた。

 「ライモンド副官もご一緒でしたか・・・」

 セレスティアは不味いと思った。ユージィンだけに相談したかったからである。

 「セレスティア・ローエングリン、後ろの御仁は?」

 ライモンドは、セレスティアの背後にいるフードの男に目をやった。

 「えっと、その・・・」

 ユージィンだけなら話せるのだがライモンドが一緒となるとセレスティアは、どうしたらいいかと困ってしまった。

 「ふ~ん。ごめん、ライモンド副官、席を外してくれないか?」

 「え?」

 ライモンドはまさか自分が追い出されるとは思っていなかったので驚いた。

 「え・・と?」

 ライモンドは動揺したが、

 「すまないね。身内の話なんだ。」

 ユージィンが公私混同するのは珍しいと思ったライモンドは、きっと自分の知らない何かがあり、それはきっと詮索してはいけないものだろうと、瞬時に理解した。

 「わかりました。では終わったら続きをしますので、また呼んでください。」

 「うん。」

 「ライモンド副官、申し訳ありません!」 

 セレスティアは慌ててライモンドに頭を下げた。

 「構わないよ。」

 ライモンドは優し気に微笑んで、その場から離席した。そしてドアが閉まり、しばらく間を空けてから、ユージィンは声をかけた。 

 「さ、セレスティア余程のことなんだろう?君が踵を返して、ましてや部外者を連れてきているのだから。」
 
 ユージィンは机に肘をついて手の甲に顎を乗せながら、ニッコリとしながら話をしていたが、セレスティアにはわかっていた。ユージィンの目は笑っていないことを。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

薬屋の少女と迷子の精霊〜私にだけ見える精霊は最強のパートナーです〜

蒼井美紗
ファンタジー
孤児院で代わり映えのない毎日を過ごしていたレイラの下に、突如飛び込んできたのが精霊であるフェリスだった。人間は精霊を見ることも話すこともできないのに、レイラには何故かフェリスのことが見え、二人はすぐに意気投合して仲良くなる。 レイラが働く薬屋の店主、ヴァレリアにもフェリスのことは秘密にしていたが、レイラの危機にフェリスが力を行使したことでその存在がバレてしまい…… 精霊が見えるという特殊能力を持った少女と、そんなレイラのことが大好きなちょっと訳あり迷子の精霊が送る、薬屋での異世界お仕事ファンタジーです。 ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~

八重
恋愛
【全32話+番外編】 「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」  伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。  ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。  しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。  そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。  マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。 ※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております

呪われた黒猫と蔑まれた私ですが、竜王様の番だったようです

シロツメクサ
恋愛
ここは竜人の王を頂点として、沢山の獣人が暮らす国。 厄災を運ぶ、不吉な黒猫─────そう言われ村で差別を受け続けていた黒猫の獣人である少女ノエルは、愛する両親を心の支えに日々を耐え抜いていた。けれど、ある日その両親も土砂崩れにより亡くなってしまう。 不吉な黒猫を産んだせいで両親が亡くなったのだと村の獣人に言われて絶望したノエルは、呼び寄せられた魔女によって力を封印され、本物の黒猫の姿にされてしまった。 けれど魔女とはぐれた先で出会ったのは、なんとこの国の頂点である竜王その人で─────…… 「やっと、やっと、見つけた────……俺の、……番……ッ!!」 えっ、今、ただの黒猫の姿ですよ!?というか、私不吉で危ないらしいからそんなに近寄らないでー!! 「……ノエルは、俺が竜だから、嫌なのかな。猫には恐ろしく感じるのかも。ノエルが望むなら、体中の鱗を剥いでもいいのに。それで一生人の姿でいたら、ノエルは俺にも自分から近付いてくれるかな。懐いて、あの可愛い声でご飯をねだってくれる?」 「……この周辺に、動物一匹でも、近づけるな。特に、絶対に、雄猫は駄目だ。もしもノエルが……番として他の雄を求めるようなことがあれば、俺は……俺は、今度こそ……ッ」 王様の傍に厄災を運ぶ不吉な黒猫がいたせいで、万が一にも何かあってはいけない!となんとか離れようとするヒロインと、そんなヒロインを死ぬほど探していた、何があっても逃さない金髪碧眼ヤンデレ竜王の、実は持っていた不思議な能力に気がついちゃったりするテンプレ恋愛ものです。世界観はゆるふわのガバガバでつっこみどころいっぱいなので何も考えずに読んでください。 ※ヒロインは大半は黒猫の姿で、その正体を知らないままヒーローはガチ恋しています(別に猫だから好きというわけではありません)。ヒーローは金髪碧眼で、竜人ですが本編のほとんどでは人の姿を取っています。ご注意ください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...