【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん

文字の大きさ
上 下
16 / 233

15:竜騎士の同期達

しおりを挟む
 『竜の御目通り』の騒ぎの後、逃げ出さなかった飛竜たちは、その後自分達のパートナーを選んだ。そしてセレスティアを含む6名が、竜の就任式を行うことになっていた。

 竜の就任式は、なかなか迫力があり壮観であったことから、フェリス王国の名物にもなっていた。わざわざそれを見物をしに他国から観光客がくるほど観光業に一役買っているほどなのだ。

 セレスティアを初め、新人の竜騎士達は、騎士学校を卒業する前に、『竜の御目通り』にてバディを組んだ飛竜達と一緒に生活をする為、騎士学校の寮から寄宿舎へ移動となる。騎士学校卒業後、間を明けずにして早々に竜の就任式があるからだ。それまでにパートナーとなった飛竜達とある程度密に行動できるようにならなければいけないので、卒業前から既に訓練は開始されることとなり、新人の竜騎士達は既に騎士として活動しているのだ。

 セレスティアが継母からの縁談話を断った翌日、同僚から飲み会のお誘いがあった。仲間内だけで、就任祝いをしないか、というものだった。

 「セレスティア、良かったら皆で一緒に飲まないか?就任祝いとこれからの親睦も兼ねてさ。まぁいわゆる親睦会ってやつなんだけど・・・」

 そう誘ってきたのは、騎士学校で同級生のルッツ・ヘルマンであった。

 セレスティアはどうしようかと一瞬悩んだが、確かにこれからは同僚としてお世話になることも、仕事で連携しなければいけないことも出てくるだろし、コミュニケーションは必要か、と考えに至った。

「飲み会ね・・・わかった。では参加させていただくわ。」

「そ、そうか、良かった!では18時に『月の兎亭』に同期全員で6人だから。」

「えぇ、では後ほど。」

そういうとセレスティアは颯爽とその場を後にした。



 その場を見ていた同じく同級生のノアベルト・ミュラーが勢いよく、ルッツの背中を叩いた。

「おい!誘えたのか?あの『氷の人形』を?!」

「痛いよ、ノア。断れらたらと心臓バクバクものだったけど、参加するって。」

「へぇ~てっきり断るかと思ってたけど、意外だったな。でも良かったな!ルッツ!少しはこれで距離を縮められるんじゃないか?」

 そういうと、ノアベルトはニヤニヤとルッツを肘でつついた。

 「ば、ばか!何を言ってるんだよ!俺達はこれから恋愛は5年間禁止なんだぞ!」

 「だけど、お前『氷の人形』のことずっと惚れてただろ?」

 「!!な、なんでその事?!じゃなくってあっ!!」

 うっかり肯定してしまい、慌てて口を覆ったが、時すでに遅しで

 「何だ、お前バレてないと思ってたの?バレバレだったけど?」
 
 「うそ!」

ルッツは顔が真っ赤になっていた。

 「しょっちゅう『氷の人形』のこと見てたじゃん。お前の目線の先にはいつも彼女がいたから、誰でも気付くぞ?」

 「うわぁ~~~俺穴があったら入りたい!」

 そういうとルッツは屈んで、顔を隠してしまった。

 「ま、どのみち5年間はなぁ。それに彼女のパートナーはあの黒い飛竜だろ?焼もちキツそうだから気をつけろよ?」

 『竜の御目通り』でセレスティアがいなかっただけで、『竜の祭壇』の観客席を破壊して犯人の男を噛み殺そうした飛竜だ。誰の目にも相当な焼もち焼きであろうと推測するのは容易かった。

 「うっ・・・気を付ける。」

 ルッツとノアベルトは幼馴染だ。二人もセレスティアと同じように小さい頃から竜騎士になりたいと、騎士学校では上位の成績だった。

 ルッツ・ヘルマンはセレスティアと同じく伯爵位を持つ家だ。濃い茶色の髪に緑の瞳の、甘いマスクをした優しそうな男で、実際見た目と変わらず気の優しい男であった。彼は茶化された通りで、騎士学校の時からずっとセレスティアに片思いをしていたが、竜騎士のことがあるから、ずっと思いを秘めていたのだ。
 対してノアベルトは、言葉遣いは悪いが家は侯爵家であった。シルバーブロンドの髪に琥珀の瞳を持ち、その整った容姿から女性から大変人気はあった。貴族にしては言動が軽いため、遊び人と誤解されるこもしばしばであったが、本人は周りの評価は気にしない男であった。

 今回の6人の新人竜騎士は、貴族でが4名、平民が2名の構成であるが、平民が竜騎士になった場合は、特例で一代限りの『騎士爵』が与えられる。
  
 ルッツとノアベルト以外に至っては、顔見知り程度であった為、今日の親睦会が初めて言葉をまともに交わす機会となったのだ。 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

叶えられた前世の願い

レクフル
ファンタジー
 「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

処理中です...