7 / 233
6:紅玉の飛竜イール(セレスティア9歳)
しおりを挟む
ユージィンが乗ってきた飛竜は、セレスティアがお気に入りの場所、敷地内の丘の上で待っていた。
「イール!」
セレスティアが赤い飛竜の名を呼ぶと、飛竜が喉を鳴らした。
『キュルル』
「イール久しぶりだね!元気そうで良かった!」
セレスティアはイールの足に抱き着いた。飛竜は馬の大きさの3倍ほど、高さにして3m以上の体長である。だが、イールはメスの飛竜のせいか他の飛竜よりは若干小柄ではあった。そしてイールはかなり光沢のある綺麗目の赤い鱗に覆われた美しい飛竜であることから『紅玉の飛竜』と呼ばれていた。
「はは、イールも喜んでるよ。」
「うん、叔父様私にもわかるよ!」
飛竜は基本タッグを組んだ人間以外とは馴れ合いをしないのだが、なぜかイールはセレスティアには、一目見た時から懐いていた。
「うん、相変わらず赤い鱗がとても綺麗ね。こういう色はなかなかないんじゃないかしら?」
『キュル!』
「『よくわかってるじゃない!』だってさ。」
「フフ、イールったら自信家さんね。」
イールを見ると、どーだと言わんばかりのどや顔をしているのはセレスティアにも見てとれた。
「相変わらず叔父様は、イールの言葉がわかるのね、私も何となくはわかるけど、詳細にはまだまだわからないわ。残念。」
「いや、その年で何となくでも、わかるのなら凄いと思うよ。」
「ホント?」
セレスティアは嬉しくなり一瞬パアと顔が明るくなったが、ハッとしてすぐに落ち込んでしまった。
「う~竜騎士なりたいなぁ。ダメ元でいいから受けさせてくれないかなぁ、『竜の御目通り』」
「そうだね、なかなか今までなかったことを覆すのは難しいけれど、セレスなら、変えられるかもしれないな。」
「ホント?!叔父様!」
ユージィンはいつもは柔らかな表情をしているのが常ではあるのだが、この時は妙に真剣な顔で、セレスティアを見据えて言葉を放った。
「これは竜騎士だけにとは限らないけど、チャンスはどこに転がっているかわからないからね、最後まで諦めない事だ。」
「・・・・ありがとう、叔父様。私今まで竜騎士に女性がいなかったから諦めかけていたけれど・・・そうよね。諦めちゃったらそこで終わっちゃうもの。私最後まで諦めないわ。足掻いて見せる!」
セレスティアは笑顔でユージィンに誓った。
「あぁ、それでこそローエングリン家の子供だ。」
「叔父様、ありがとうね。」
「いや、別に僕は大したことは言ってないよ、だけどあっちは結局そのままにするのかい?」
「お義母様とソフィアね。うん、とりあえずはいいかなって。」
「ま、僕としては正直なところは不本意だけど、セレスが待ったをかけるなら、まだ黙っておくよ。」
「ごめんね、叔父様。」
『キュルルル!!!』
「あ、イールも怒ってくれてるのね?ごめんね、せっかくイールが気付いて叔父様にわざわざ教えてくれたのに。」
そう、飛竜のイールは悪意に敏感だったため、義母のジョアンナや義妹のソフィアがセレスティアに悪意を放っていることに気付いたのだ。それをパートナーであるユージィンに伝えたため、ユージィンはセレスティアが不当な扱いを受けていることに気付いたのだ。
普段は当然身内には見られないように、セレスティアに対して意地悪をしているが、もちろん人目がある(使用人以外)ところでは繕ってはいたけれど、心の内は隠せるはずもなく放たれる敵意は、イールにはバレバレだったのだ。
「あ、そういえばイール、私のことで何かあるんだよね?悪化って何のことかわかる?」
セレスティアがイールに話しかけると、イールはチラッとユージィンの方に目線を向け、
『キュルキュル、キュルルル』
「・・・ふむ、なるほどな。さっきも言ったけど詳しくはわからない。だけどあの義母と義妹は何か仕掛けてくるから気を付けろだって。」
イールは悪意に敏感だ。義母ジョアンナと義妹のソフィアの悪意に作為的なものがあると感じ取ったらしく、それをユージィンに伝えたのだ。
「仕掛けてくる?」
ただならぬ言葉に、さすがに前向きなセレスティアでも動揺した。
だが、この言葉の意味は早々に知ることとなった。
「イール!」
セレスティアが赤い飛竜の名を呼ぶと、飛竜が喉を鳴らした。
『キュルル』
「イール久しぶりだね!元気そうで良かった!」
セレスティアはイールの足に抱き着いた。飛竜は馬の大きさの3倍ほど、高さにして3m以上の体長である。だが、イールはメスの飛竜のせいか他の飛竜よりは若干小柄ではあった。そしてイールはかなり光沢のある綺麗目の赤い鱗に覆われた美しい飛竜であることから『紅玉の飛竜』と呼ばれていた。
「はは、イールも喜んでるよ。」
「うん、叔父様私にもわかるよ!」
飛竜は基本タッグを組んだ人間以外とは馴れ合いをしないのだが、なぜかイールはセレスティアには、一目見た時から懐いていた。
「うん、相変わらず赤い鱗がとても綺麗ね。こういう色はなかなかないんじゃないかしら?」
『キュル!』
「『よくわかってるじゃない!』だってさ。」
「フフ、イールったら自信家さんね。」
イールを見ると、どーだと言わんばかりのどや顔をしているのはセレスティアにも見てとれた。
「相変わらず叔父様は、イールの言葉がわかるのね、私も何となくはわかるけど、詳細にはまだまだわからないわ。残念。」
「いや、その年で何となくでも、わかるのなら凄いと思うよ。」
「ホント?」
セレスティアは嬉しくなり一瞬パアと顔が明るくなったが、ハッとしてすぐに落ち込んでしまった。
「う~竜騎士なりたいなぁ。ダメ元でいいから受けさせてくれないかなぁ、『竜の御目通り』」
「そうだね、なかなか今までなかったことを覆すのは難しいけれど、セレスなら、変えられるかもしれないな。」
「ホント?!叔父様!」
ユージィンはいつもは柔らかな表情をしているのが常ではあるのだが、この時は妙に真剣な顔で、セレスティアを見据えて言葉を放った。
「これは竜騎士だけにとは限らないけど、チャンスはどこに転がっているかわからないからね、最後まで諦めない事だ。」
「・・・・ありがとう、叔父様。私今まで竜騎士に女性がいなかったから諦めかけていたけれど・・・そうよね。諦めちゃったらそこで終わっちゃうもの。私最後まで諦めないわ。足掻いて見せる!」
セレスティアは笑顔でユージィンに誓った。
「あぁ、それでこそローエングリン家の子供だ。」
「叔父様、ありがとうね。」
「いや、別に僕は大したことは言ってないよ、だけどあっちは結局そのままにするのかい?」
「お義母様とソフィアね。うん、とりあえずはいいかなって。」
「ま、僕としては正直なところは不本意だけど、セレスが待ったをかけるなら、まだ黙っておくよ。」
「ごめんね、叔父様。」
『キュルルル!!!』
「あ、イールも怒ってくれてるのね?ごめんね、せっかくイールが気付いて叔父様にわざわざ教えてくれたのに。」
そう、飛竜のイールは悪意に敏感だったため、義母のジョアンナや義妹のソフィアがセレスティアに悪意を放っていることに気付いたのだ。それをパートナーであるユージィンに伝えたため、ユージィンはセレスティアが不当な扱いを受けていることに気付いたのだ。
普段は当然身内には見られないように、セレスティアに対して意地悪をしているが、もちろん人目がある(使用人以外)ところでは繕ってはいたけれど、心の内は隠せるはずもなく放たれる敵意は、イールにはバレバレだったのだ。
「あ、そういえばイール、私のことで何かあるんだよね?悪化って何のことかわかる?」
セレスティアがイールに話しかけると、イールはチラッとユージィンの方に目線を向け、
『キュルキュル、キュルルル』
「・・・ふむ、なるほどな。さっきも言ったけど詳しくはわからない。だけどあの義母と義妹は何か仕掛けてくるから気を付けろだって。」
イールは悪意に敏感だ。義母ジョアンナと義妹のソフィアの悪意に作為的なものがあると感じ取ったらしく、それをユージィンに伝えたのだ。
「仕掛けてくる?」
ただならぬ言葉に、さすがに前向きなセレスティアでも動揺した。
だが、この言葉の意味は早々に知ることとなった。
10
お気に入りに追加
211
あなたにおすすめの小説

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

薬屋の少女と迷子の精霊〜私にだけ見える精霊は最強のパートナーです〜
蒼井美紗
ファンタジー
孤児院で代わり映えのない毎日を過ごしていたレイラの下に、突如飛び込んできたのが精霊であるフェリスだった。人間は精霊を見ることも話すこともできないのに、レイラには何故かフェリスのことが見え、二人はすぐに意気投合して仲良くなる。
レイラが働く薬屋の店主、ヴァレリアにもフェリスのことは秘密にしていたが、レイラの危機にフェリスが力を行使したことでその存在がバレてしまい……
精霊が見えるという特殊能力を持った少女と、そんなレイラのことが大好きなちょっと訳あり迷子の精霊が送る、薬屋での異世界お仕事ファンタジーです。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜
西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」
主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。
生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。
その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。
だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。
しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。
そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。
これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。
※かなり冗長です。
説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

呪われた黒猫と蔑まれた私ですが、竜王様の番だったようです
シロツメクサ
恋愛
ここは竜人の王を頂点として、沢山の獣人が暮らす国。
厄災を運ぶ、不吉な黒猫─────そう言われ村で差別を受け続けていた黒猫の獣人である少女ノエルは、愛する両親を心の支えに日々を耐え抜いていた。けれど、ある日その両親も土砂崩れにより亡くなってしまう。
不吉な黒猫を産んだせいで両親が亡くなったのだと村の獣人に言われて絶望したノエルは、呼び寄せられた魔女によって力を封印され、本物の黒猫の姿にされてしまった。
けれど魔女とはぐれた先で出会ったのは、なんとこの国の頂点である竜王その人で─────……
「やっと、やっと、見つけた────……俺の、……番……ッ!!」
えっ、今、ただの黒猫の姿ですよ!?というか、私不吉で危ないらしいからそんなに近寄らないでー!!
「……ノエルは、俺が竜だから、嫌なのかな。猫には恐ろしく感じるのかも。ノエルが望むなら、体中の鱗を剥いでもいいのに。それで一生人の姿でいたら、ノエルは俺にも自分から近付いてくれるかな。懐いて、あの可愛い声でご飯をねだってくれる?」
「……この周辺に、動物一匹でも、近づけるな。特に、絶対に、雄猫は駄目だ。もしもノエルが……番として他の雄を求めるようなことがあれば、俺は……俺は、今度こそ……ッ」
王様の傍に厄災を運ぶ不吉な黒猫がいたせいで、万が一にも何かあってはいけない!となんとか離れようとするヒロインと、そんなヒロインを死ぬほど探していた、何があっても逃さない金髪碧眼ヤンデレ竜王の、実は持っていた不思議な能力に気がついちゃったりするテンプレ恋愛ものです。世界観はゆるふわのガバガバでつっこみどころいっぱいなので何も考えずに読んでください。
※ヒロインは大半は黒猫の姿で、その正体を知らないままヒーローはガチ恋しています(別に猫だから好きというわけではありません)。ヒーローは金髪碧眼で、竜人ですが本編のほとんどでは人の姿を取っています。ご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる