【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん

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5:竜騎士ユージィン(セレスティア9歳)

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 セレスティアの兄弟には兄ディーンと義妹ソフィア、弟ショーンがいる。ソフィアはジョアンナの連れ子でショーンはまだ幼児で半分血が繋がっている。 

 兄のディーンはセレスティアより5つ上で、10歳の時には騎士学校の騎士寮に入っていたので、家に帰ってくるのは大きな休みの時だけだった。この事もあり、セレスティアがジョアンナやソフィアからぞんざいな扱いを受けていることを知らなかった。またセレスティア自身もその事を兄に話していなかったからだ。

 セスとディーンが不在時を狙って、ジョアンナとソフィアはセレスティアに意地悪をしていた・・・が、何度も言うが、家事の類はセレスティアにとって修行だし、騎士志望である彼女にとっては、嫌がらせの効果はない。だがらいろんな事をもっとやりたいと思っていた。
 
 とはいえ、意地の悪い事を言われたりされたりするのは、さすがのセレスティアもあまりいい気はしていなかった。かといって、それらを言いつけることによって、夫婦の仲や家族の仲がこじれてしまったらどうしようなどと考えると、セレスティアはやるせない気持ちになっていた。

 継母、義妹ともセレスティアに対してだけ当たりはきついのだ。兄のディーンは父親のセスにそっくりのせいなのか、義母や義妹から意地悪をされるどころか、義母はディーンに対して致せりつくせり状態だし、ソフィアはディーンには懐いていているというか、ディーンが寮から帰宅した時には、実の妹のセレスティアよりもべたべたと引っ付いていた。
 これらの事から、自分だけがあの二人から当たりが強いことはセレスティアも自身も理解していた。 
 だけど、これも10歳になるまでの我慢だと思っていた。彼女は騎士になるのが目標だったので、兄と同じく、騎士学校に入り騎士寮に入るつもりだったからだ。だから、あと少しのことだと思い、彼女は父にも兄にも黙っていることにしていた。
  
 だが、この事情を知っている人物が一人だけいた。セレスティアの叔父である、竜騎士のユージィン・ローエングリンだ。

 父セスの弟であるユージィンは竜騎士団の副団長で若くしてその地位に就いており、実際その実力は役職に恥じないものであった。 

 ユージィンはセスとは年の離れた兄弟ではあったが見た目の印象は随分と違った。二人とも少しクセの入った亜麻色の髪でセスは短髪で薄水色の瞳の男らしい容姿をしているが、同じ髪色でもユージィンは亜麻色の肩の下まである髪を後ろでくくり、容姿は中性的な作りをしているので、顔だけみれば女性と見紛うくらい美形であった。タイプは違うが兄弟揃って女性受けはとても良かったのだ。
 セスはティーニアと結婚をし、ティーニア亡きあとは再婚もしたが、ユージィンはいまだ独身であった。

 竜騎士ユージィンと初めて会えたのは、父の再婚の時だった。
 ユージィンは少し前まで遠征に出ていたことと、竜騎士の接触禁止期間もあったことから、兄であるセスとも長らく会えていなかったのだ。
 それからは何度かセレスティアはユージィンとは会える機会は増えたのだが、ユージィンは何故かセレスティアが義母と義妹からいびられていることを知っていた。セレスティアはその事をユージィンには話していなかったから、不思議であったが、ユージィンからその理由を聞いて納得していた。 




 その日は、前々からセレスティアとユージィンは会う約束をしていた日だった。

 コンコンとセレスティアの自室のドアをノックする音がした。

 来たんだわ!

 「やぁ、セレス遊びにきたよ。」

 「ユージィン叔父様!!待ってたわ!」

 セレスティアはユージィンを見るなり満面の笑顔になった。

 「あぁ、イールも楽しみにしているよ。」

 「本当?!嬉しい!イールがそんな風に思ってくれるなんて。」

 「ふふ、君は気難しいイールが気に入った数少ない女の子だからね。」

 ユージィンの相棒の飛竜イールは、珍しいメスの赤い飛竜だった。他の竜騎士とタッグを組んでいる飛竜はほとんどがオスだからだ。

 「さ、イールが外で待っている。行こうか。」

 「うん!じゃなかった、はい!」

 「はは、別にうんでいいのに。」

 「いいえ、ダメよ叔父様。今からちゃんっとしておかないと、騎士にはなれないわ!」

 「フフ、セレスのそういうところ僕は好きだよ。」

 「ありがとう、叔父様。だけど本当は竜騎士になりたいんだけどね」

 そう話したセレスティアの顔は少し寂しそうだった。この頃の彼女は女性で竜騎士がいないことも、そもそも『竜の御目通り』も女性は対象外だということも知っていたので、本来のなりたい職業が現状では厳しい現実を目の当たりにしていた。

 「ところで、相変わらずみたいだね、君の継母君と義妹は。」

 「叔父様さすがね。あ、イールから聞いたのね?」
 
 「あぁ、イールは悪意には敏感だからね。さっき着いた時から、変わっていない、というか悪化してるかも。って言っていたよ。」

 「悪化?」

 「あぁ詳しくはわからないけどね。」 
  
 「そうなんだ・・・」

 セレスティアは何故自分がこんなにも義母や義妹から疎まれているのか、いまだその理由はわからずじまいだった。
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