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82:形勢逆転!(アルバード)

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 アルバード達が駆け付けて来た時、見ればトリスタンがシエラに手を伸ばしているのを見て、アルバードは有無を言わさず思い切りトリスタンの顔を、殴って吹っ飛ばしていた。

 「てめぇ、なに人の女に触ろうとしてるんだよ。殺すぞ?」

 シエラは、ホッとした。やっと助けに来てくれたのだと。安心したらまた涙がでてきた。

 「あ、アルバード、アルバード!!」

 シエラ嬢は泣きながら俺の名前を連呼していた。俺はそれを見て思い切り彼女を抱きしめていた。そして彼女も俺を抱きしめ返してくれた。

 「遅くなってごめん!!ちょっと手間取って、って言い訳だよな!本当にごめん!」

 「アルバード!助けに来てくれるって信じてた!でも先にランスロット王子の手当を!」

 少し離れたところで、血まみれで火傷を負った状態で横たわっているランスロット王子がいた。Aランクのランベルクをこんな様にするとは、さっきは咄嗟に殴ったけど、侮れない相手なようだ。とにかくすぐに処置しないと!

 「!ヴァイオレット!頼む!!」

すぐにヴァイオレットに振った。治癒や回復にかけては聖女ほどの適任者はいないからな。

 「任せてくださいな!」

 ヴァイオレットは、ランスロットの元に駆け付けると、洩れなくキースもスカーレットも付いてきた。

 「ランスロット王子、こっぴどくやられましたわね。」

 「・・・・!」

 ヴァイオレットはランスロット王子の惨状に痛々しい顔をし、メガネっ子は絶句しているようだった。

 「は、は・・・めん・・・ぼ・・・くな・・い」

 喋るのもキツイだろうにランスロットは反応した。ヴァイオレットは魔力を増幅させる錫杖を掲げ、

 「少しお待ちになってね。すぐに治して差し上げますわ。《満ちよ、清光の聖杯》」

 ヴァイオレットの癒しの聖なる魔法で、見る見るうちに火傷や傷が塞がっていった。これはかなりの上位魔法だから、聖女でないと扱えない呪文だ。これで取り合えずは大丈夫だろう。

 「それと、こちらを飲んでください。流れてしまった血液が多すぎますから、これで少しは補えます。」

 キースが聖水をランスロットに飲ませた。流れでたものは、さすがに魔法でもどうしようもない。血液の代用補充は適切な処置だ。

 「ありがとう。聖女ヴァイオレット、守護者キース。スカーレットも心配かけてすまない。」

 うん、はっきりと話せているから、大丈夫だ。

 「シエラ、本当にごめん。不安な思いをさせてしまって本当にごめんな。」
 
 俺は、何度も何度も謝った。いや、謝ればいいってもんではないんだけどな。

 「いいわ、助けに来てくれたから許してあげる。」
 
 シエラ嬢は泣きながらも少し笑ってくれた。見たところシエラ嬢は無事なようだったが、可哀想に綺麗な顔が涙でぐしゃぐしゃだった。俺はシエラ嬢の前では顔には出さず、腹の中は煮えくり返っていた。こんなに泣かしたあの大馬鹿野郎を絶対に許さない!っていうか、攫った時点で確定だけどな!  

 「ランスロット王子、駆け付けるのが遅くなった。すまない。」

 服が焼け焦げてボロボロになっている。火の魔法をまともに食らったのだろうが、恐らくシエラ嬢を庇ったのだろう。

 「いいえ、ほぼ予定通りでしたから、問題はなかったですよ。ただあのクソ野郎に想定していたとはいえ、早く感づかれてしまいましたからね。」

 ランスロット王子はそう言うと、さきほど吹っ飛ばされたトリスタンの方向を見た。

 「ぐっ、ぬっ・・うぅ・・・」

 ん?何か呻いてるな。

 「くっ、こ、このぉ!貴様!!」

 お、立ったか。まぁ俺としてもその方が助かる。

 「ほぉ。喚く元気はあるようだな。俺も一発だけでは、到底気が収まらないから、調度いい。」

 「くっくくくく、今はちょっと油断してしまいましたがね、冒険者とかいう、烏合の衆が集まったところで、私を止めたりことはできませんよぉおお!《烈火爆四散》」

 呪文を唱えたトリスタンの背後から、火の球がまるで花火のように現れたかと思うと、無数の火の玉になって標的は俺だけに留まらずあちこちに飛び散った。

 「フハハハハ、これは、避けられませんよぉおお!皆焼かれるがいい!!」

 「そうか。」

 だが、俺は片手をかざし

 「《蓮花氷水縛》」

 アルバードが呪文を唱えたそれらは、アルバードを中心に氷の花が無数に舞い、トリスタンが放った火の玉を全て包み込んでしまった。それらは閉じ込めれたことで、勢いなくし落下していった。

 「なっ!」

 「キレイ・・・」

 シエラも思わず、アルバードの放った魔法に感嘆の声がもれた。

 「あー俺ね、魔法は得意ではないんだけど、戦闘魔法だけは話しは別なんだよ。それに、こんな明け方の時間に花火は向いてないだろう?」

 俺は、こいつをどう料理してやろうかと思うと、なぜか顔が二ヤついてしまっていた。
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