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67:囚われの王女(シエラ)

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 ・・・わかってはいるのよ、きっとユーナは泣いて泣いて、ひたすら謝って・・・きっと今は居た堪れない心境になっていることも、私の独りよがりだということもわかってはいるのよ。それでも・・・私には見殺しにするなどできなかったのよ。だから後悔なんてしていない。でも、ごめんね。きっとユーナは今辛いだろうね。あの護衛騎士も、私の護衛なんかしなければ、殺されることもなかっただろうに、本当にごめんなさい。

 私は自分が今どこにいるのか、わかっていないんだけど(何せマントでおおわれて、視界が真っ暗だったのよ)わかっているのは、連れ出された王宮からそう離れていない場所らしいということはわかっている。

 鳥のような生き物に乗せられたんだけど、割とすぐに違う場所に到着したのよ。そのまま目隠しをされていたから場所はよくわからなくて、そのままどこかわかない部屋に監禁されてしまった。そこで、目隠しは外されたのだけど・・・ここが恐らく身分の高い人の住まいであろうというのは、部屋の様子を見てわかったわ。置いてあるものが高価なんだもの。

 だけど、うっかり忘れてたのよね・・・
 夜になると元の大人の姿になるってことを!!

 どうしよう・・・幻惑用のネックレスはヤンギルド長に投げちゃったし。服はイライザさんの魔法仕立てで何とも都合よく大人になったら、ちゃんとサイズが大人用になるよう術を施してもらってるから、そこは安心なんだけどね。だけど元の姿なんか見られたりなんかしたら、あの魔人トリスタンの研究意欲というか、変に刺激をするというか・・・できるだけ見せたくないのよね。

 もう少ししたら、夜になる。アルバードが助けに来てくれるまでには、なんとしても隠し通さないと!とは、思ったものの・・・

 「うーん、どうしようかしら・・・」

 「何がどうするんですかねぇ?」

 「!!」

 「だから、どうするんですかねぇ?」

 トリスタンがいつの間にか部屋に入ってきたのを知らなかった。私を見下ろしてて怖い!

 「女性の部屋にノックもしないで、入るには失礼じゃないかしら?」

 だけど、腹も立ったのでまずは抗議した。

 「これはこれは失礼しました。ノックはしたんですよぉ?ですが返事がなかったもので。」

  あ、考え事してたから気付いてなかったのかも!それでもっよ!

 「それでも、返事があるまで、待機するのが礼儀ではありませんか?」

 フンだ!だからって、淑女がいる部屋に気安く入るんじゃないわよ!

 「くくくっ、王女様はなかなか気が強いですなぁ。」

 そういうと、トリスタンはニヤリと私に笑った。
 シエラはその様を見て、ゾクッとした。
 怖い!そうだ、こいつは何人も人を殺してるんだ!

 「・・・私をどうするつもり?」

 「貴方がヤン・リーリンに言っていた通りですよ。私はシエラ王女の『祝福』に非常に興味があるのですよぉ。何せ私の渾身の出来のオルゴールの呪殺効果を無効化してくれましたからねぇ?」

 「おあいにく様ね!あのイライザさんだって、まだ私の『祝福』は解明できていないのよ?貴方がそれをできるとは思えないわ。」

 「くくっ、まさにソレですよ、ソレ!!」

 「?」

 「あの黒の魔女が解明できなかったものが、私が解明できたらどうします?あの黒の魔女の悔しそうな顔を想像したら・・・クフフフ、堪らないじゃないないですかぁ。」

 そう言いながら、トリスタンはソレを想像しているのか、恍惚の表情を浮かべていた。

 やだーー!こいつもまた別の種類の変態じゃない!!もう、ホントにやだ!!!
 シエラは嫌悪感が止まらなかった。

 「そう簡単に事が上手くいくかしらね?きっと私を助けに精鋭がくるわよ?」

 これは、本心だ。絶対にアルバードは来てくれる!

 「そうでしょうねぇ、あのヤン・リーリンが居たくらいですし、イライザも・・・そして貴方の婚約者も?」
 
 !!こいつ・・・知ってて!私は腹が立ってきて、そっぽを向いた。

 「おや?図星?それともお怒りな様子かなぁ?」 

 シエラは、だんばりを決め込んだ。すると、それにイラっときたトリスタンは、いきなりシエラの顎を無理やりつかみ自分の顔に近づけた。

!!

 「おい、身分はともかく、今の状況は私が上なんだよ。ちょっとは自分の立場を理解したらどうだ?」

 トリスタンは先ほどまでの口調とは違い、どすの利いた声で、シエラに言い聞かせた。
だが、それでもシエラは反抗的な態度を改めることはなかった。

 「ふん!」

 「くっくっくっくっ、本当に面白い。」

 だが、そんなシエラの様子をトリスタンは面白そうに見て、

 「・・・幼女を襲う趣味はありませんがねぇ・・・貴方の『祝福』が何なのか調べるためにも、そういうのを試すのも有りなんですよ?・・・言ってる意味わかりますよねぇ?」

 「!!!」

 トリスタンは、わざわざシエラの耳元でそれを言ってのけた。そして、見下ろしてシエラが動揺しているのをほくそ笑んでいた。

 「ふふっ、後で夕飯は届けて差し上げますよ。今日はいろいろあってお疲れだと思いますから、この辺で。明日からはいろいろと・・・ねぇ。それでは。」

 意味深な言葉を残し、トリスタンは部屋から出て行った。
 シエラは、先ほどトリスタンが言った言葉の意味がわからぬほど、初心うぶではなかった。


 い・・いや!嫌ぁあ!!

 アルバード!助けて!!このままじゃ、私・・・私、アルバード以外に触れられなくない!!お願い、早く私を助けて!!!

 シエラは、震える自分の小さな体を、己の両手で抑え込んでいた。
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