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Ⅹ.アキラ、鹿を見る。
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食事を食べ終わり、一服するふたり。その時僕はあることを思いつく。
「ねぇ、テラ。テラは耳とか目が良いから、今度一緒に狩りについてきてよ。」
と誘ってみることにした。しかし、テラは申し訳なさそうな顔をして、
「いげね。多分、わーじゃ役さ立だね。」
と予想通りの反応を見せる。
「いや、テラは、獲物を探してくれるだけでいいから。見つけたら後は、俺がこうブスッ!! っとやるから。」
弓を引くしぐさを見せる。しかし、テラは首を縦に振らない。
「違うの、私、壁の外には出られないの。」
ん?壁の外?どう言う意味だ?
テラは普通に家から出てるし、なんでだ?とテラの言っていることがわからなくなる。
「言うよりも、多分見せだ方早えど思う。ついてきて。」
とおもむろにテラが、立ちあがり外へと出る。僕もそれを追うかのように外へと出る。
東へと歩みを進める。僕が、異世界に降り立った場所の方向だ。3分ほど歩いただろうか。
急にテラが、苦しそうになっていく。僕は駆け寄る。
「大丈夫か、テラ!!」
「大丈夫、元の方向に戻れば大丈夫になるから。」
と答える。どういうことだ?すると、
「壁と言うのは、一種の活動範囲であります。この状態はその範囲外から、出てしまったことによるものだと考えられます。」
と精霊さんが答える。
「じゃあ、すぐに戻らなきゃ!」
急いで、テラを持ち上げて、来た道を戻る。来た道を戻るにつれて、テラの表情が、良くなってくるのが見てとれた。
「アキラ、もう大丈夫だよ。」
とテラが上目遣いをしながら、こちらを見る。
「そ、そうか。じゃあ下ろすね。無理しちゃ駄目だよ。」
心配になりながらもテラを下ろす。
それから家に戻っている最中に、精霊さんに詳しくこのことを聞いてみる。
「ねぇ、なんで俺は平気だったの?テラの気分が悪くなった所より、ずっと奥から俺、来たんだけどなんともなかったよ。」
精霊さんが答える、
「推測ですが、宿主はこの世界とは違う世界から来ましたので、何かの法則から外れていると推測されます。
今まで申し上げていなかったのですが、私が宿ったのも宿主が異質、故に親和性が高いと考えられます。
多分、私がテラさんに乗り移っても、親和性が低い故に宿主と同じようなスキルを扱うようなことはできないと考えられます。」
その瞬間、ここにいる人達が、鳥籠に捕らわれている小鳥に思えて仕方がなかった。しかし、精霊さんが僕の心を見透かしたように、
「しかし、この世界は途方もなく広いです。宿主が思っているようなことを現地の方々は、思っていないと考えられます。宿主の世界も丸い鳥籠みたいなものではないですか。」
嗚呼、なるほどと思い、この世界の仕組みの一端を理解するアキラであった。
この世界の仕組みの一部と、自分の異質さを実感したアキラは、テラの様子を窺う。
先ほどは、無理をさせ過ぎたことを後悔する。だが、当の本人は、元気よく家に帰っている。
「う~~ん、テラの嗅覚と視覚を生かせると思ったんだが、なんとかならないかなぁ~。なんとかならないかなぁ・・・。」
と精霊さんにそれとなく問うが、
「現状のところ、それは無理なようです。」
ときっぱりと否定される。気を取り直し、今日のやることを整理する。
今日はとりあえず、少し辺り散策しようと考え、そのことをテラに伝える。
「じゃあ、行ってくるね。」
「あ、アキラさん、気つけて行ってきてな。」
とテラが見送りをしてくれる。ついでに、木の実なども取って帰ろうと考える。いつもとは逆の西側へと足を進める。
「フフフン、フフフン。」
と進んでいく。
東側の森とは違い、この森は陽の光が入りやすく、辺りも見渡しやすい。十分ほど経っただろうか、小高い丘を上っていることに気付く。
そのまま、頂上を目指すことにする。
途中、食べる木の実を見つけ、簡易的な葉っぱの包みを作り、それをポケットの中に入れて木の実をそこに詰め込む。
しばらく行くと、森が開け、少し急だが頂上らしきところが、見えてくる。
「宿主、足元にご注意を。滑りやすくなっております故。」
精霊さんが、警戒を促してくれる。
「へい、わかりました、用心します。」
気分は、冒険家にでもなったようだった。それでも、足元に注意しながら、頂を目指していく。
そして、ついに頂へとたどり着く。辺りを見渡すと、少し遠くにテラの家が見える。そして、反対側の向こう側に、小さな村を発見する。
その時、精霊さんが言葉を発する。
「いい景色ですね。あ、そうだ。親和性が向上して、容量が増えました。
且つ探索の熟練度向上し、スキルを覚えました。スキル名は【目的地】です。習得されますか?」
唐突に、熟練度の向上を教えてくれる。ん?それ詳しく思うと、続けて精霊さんが、説明してくれる。
「今、見ている場所を目的地に、設定できるスキルです。例えば、見えなくなっても、その目的地がどの方角か直感で、わかるようになります。」
なんと便利なスキルだ。即決で習得する。試しに、村にセットしてみる。大体の距離がわかる。
これは往復すると日が、暮れそうなので、明日訪れることに決め、目的地をテラの家にセットする。
頂を降りていくと、テラの家が見えなくなるが、なんとなくどっちの方向に、向かって歩いていけばいいかわかる。
これほんと便利。その帰り道に小枝を拾いながら帰っていく。
『ガサガサ。』
なにやら動く音が、遠くの方から聞こえる。
その方向を見ると、角らしきものが、木の陰から見えるではないか。咄嗟に身を屈め隠れる。角の正体は雄鹿だった!
こちらの音に気付いたのか、片足を上げて止まったように、こちらの方向を凝視している。
「野性の鹿、初めてみたよ。」
と感心していると、鹿が向きを変えて、大きくジャンプしてぴょん! ぴょん! と逃げ去っていってしまう。
どうやら、バレたようだ。
「隠密性が足りませんね。もっと習練度を上げなくてはなりません。」
精霊さんが言う。それに僕は、
「そうだな、つまり、上げていけばバレずに、狩れるってことだね。頑張ってあげていくよ。」
とこれからの課題を確認して、家路に着くのであった。
「ねぇ、テラ。テラは耳とか目が良いから、今度一緒に狩りについてきてよ。」
と誘ってみることにした。しかし、テラは申し訳なさそうな顔をして、
「いげね。多分、わーじゃ役さ立だね。」
と予想通りの反応を見せる。
「いや、テラは、獲物を探してくれるだけでいいから。見つけたら後は、俺がこうブスッ!! っとやるから。」
弓を引くしぐさを見せる。しかし、テラは首を縦に振らない。
「違うの、私、壁の外には出られないの。」
ん?壁の外?どう言う意味だ?
テラは普通に家から出てるし、なんでだ?とテラの言っていることがわからなくなる。
「言うよりも、多分見せだ方早えど思う。ついてきて。」
とおもむろにテラが、立ちあがり外へと出る。僕もそれを追うかのように外へと出る。
東へと歩みを進める。僕が、異世界に降り立った場所の方向だ。3分ほど歩いただろうか。
急にテラが、苦しそうになっていく。僕は駆け寄る。
「大丈夫か、テラ!!」
「大丈夫、元の方向に戻れば大丈夫になるから。」
と答える。どういうことだ?すると、
「壁と言うのは、一種の活動範囲であります。この状態はその範囲外から、出てしまったことによるものだと考えられます。」
と精霊さんが答える。
「じゃあ、すぐに戻らなきゃ!」
急いで、テラを持ち上げて、来た道を戻る。来た道を戻るにつれて、テラの表情が、良くなってくるのが見てとれた。
「アキラ、もう大丈夫だよ。」
とテラが上目遣いをしながら、こちらを見る。
「そ、そうか。じゃあ下ろすね。無理しちゃ駄目だよ。」
心配になりながらもテラを下ろす。
それから家に戻っている最中に、精霊さんに詳しくこのことを聞いてみる。
「ねぇ、なんで俺は平気だったの?テラの気分が悪くなった所より、ずっと奥から俺、来たんだけどなんともなかったよ。」
精霊さんが答える、
「推測ですが、宿主はこの世界とは違う世界から来ましたので、何かの法則から外れていると推測されます。
今まで申し上げていなかったのですが、私が宿ったのも宿主が異質、故に親和性が高いと考えられます。
多分、私がテラさんに乗り移っても、親和性が低い故に宿主と同じようなスキルを扱うようなことはできないと考えられます。」
その瞬間、ここにいる人達が、鳥籠に捕らわれている小鳥に思えて仕方がなかった。しかし、精霊さんが僕の心を見透かしたように、
「しかし、この世界は途方もなく広いです。宿主が思っているようなことを現地の方々は、思っていないと考えられます。宿主の世界も丸い鳥籠みたいなものではないですか。」
嗚呼、なるほどと思い、この世界の仕組みの一端を理解するアキラであった。
この世界の仕組みの一部と、自分の異質さを実感したアキラは、テラの様子を窺う。
先ほどは、無理をさせ過ぎたことを後悔する。だが、当の本人は、元気よく家に帰っている。
「う~~ん、テラの嗅覚と視覚を生かせると思ったんだが、なんとかならないかなぁ~。なんとかならないかなぁ・・・。」
と精霊さんにそれとなく問うが、
「現状のところ、それは無理なようです。」
ときっぱりと否定される。気を取り直し、今日のやることを整理する。
今日はとりあえず、少し辺り散策しようと考え、そのことをテラに伝える。
「じゃあ、行ってくるね。」
「あ、アキラさん、気つけて行ってきてな。」
とテラが見送りをしてくれる。ついでに、木の実なども取って帰ろうと考える。いつもとは逆の西側へと足を進める。
「フフフン、フフフン。」
と進んでいく。
東側の森とは違い、この森は陽の光が入りやすく、辺りも見渡しやすい。十分ほど経っただろうか、小高い丘を上っていることに気付く。
そのまま、頂上を目指すことにする。
途中、食べる木の実を見つけ、簡易的な葉っぱの包みを作り、それをポケットの中に入れて木の実をそこに詰め込む。
しばらく行くと、森が開け、少し急だが頂上らしきところが、見えてくる。
「宿主、足元にご注意を。滑りやすくなっております故。」
精霊さんが、警戒を促してくれる。
「へい、わかりました、用心します。」
気分は、冒険家にでもなったようだった。それでも、足元に注意しながら、頂を目指していく。
そして、ついに頂へとたどり着く。辺りを見渡すと、少し遠くにテラの家が見える。そして、反対側の向こう側に、小さな村を発見する。
その時、精霊さんが言葉を発する。
「いい景色ですね。あ、そうだ。親和性が向上して、容量が増えました。
且つ探索の熟練度向上し、スキルを覚えました。スキル名は【目的地】です。習得されますか?」
唐突に、熟練度の向上を教えてくれる。ん?それ詳しく思うと、続けて精霊さんが、説明してくれる。
「今、見ている場所を目的地に、設定できるスキルです。例えば、見えなくなっても、その目的地がどの方角か直感で、わかるようになります。」
なんと便利なスキルだ。即決で習得する。試しに、村にセットしてみる。大体の距離がわかる。
これは往復すると日が、暮れそうなので、明日訪れることに決め、目的地をテラの家にセットする。
頂を降りていくと、テラの家が見えなくなるが、なんとなくどっちの方向に、向かって歩いていけばいいかわかる。
これほんと便利。その帰り道に小枝を拾いながら帰っていく。
『ガサガサ。』
なにやら動く音が、遠くの方から聞こえる。
その方向を見ると、角らしきものが、木の陰から見えるではないか。咄嗟に身を屈め隠れる。角の正体は雄鹿だった!
こちらの音に気付いたのか、片足を上げて止まったように、こちらの方向を凝視している。
「野性の鹿、初めてみたよ。」
と感心していると、鹿が向きを変えて、大きくジャンプしてぴょん! ぴょん! と逃げ去っていってしまう。
どうやら、バレたようだ。
「隠密性が足りませんね。もっと習練度を上げなくてはなりません。」
精霊さんが言う。それに僕は、
「そうだな、つまり、上げていけばバレずに、狩れるってことだね。頑張ってあげていくよ。」
とこれからの課題を確認して、家路に着くのであった。
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