The Thunder:SENSE OF THE EAGLE ;異世界狩ろう録

なんよ~

文字の大きさ
上 下
11 / 11
共生

Ⅹ.アキラ、鹿を見る。

しおりを挟む
 食事を食べ終わり、一服するふたり。その時僕はあることを思いつく。



「ねぇ、テラ。テラは耳とか目が良いから、今度一緒に狩りについてきてよ。」



と誘ってみることにした。しかし、テラは申し訳なさそうな顔をして、



「いげね。多分、わーじゃ役さ立だね。」



と予想通りの反応を見せる。



「いや、テラは、獲物を探してくれるだけでいいから。見つけたら後は、俺がこうブスッ!! っとやるから。」



弓を引くしぐさを見せる。しかし、テラは首を縦に振らない。



「違うの、私、壁の外には出られないの。」



ん?壁の外?どう言う意味だ?



テラは普通に家から出てるし、なんでだ?とテラの言っていることがわからなくなる。



「言うよりも、多分見せだ方早えど思う。ついてきて。」



とおもむろにテラが、立ちあがり外へと出る。僕もそれを追うかのように外へと出る。



東へと歩みを進める。僕が、異世界に降り立った場所の方向だ。3分ほど歩いただろうか。



急にテラが、苦しそうになっていく。僕は駆け寄る。



「大丈夫か、テラ!!」



「大丈夫、元の方向に戻れば大丈夫になるから。」



と答える。どういうことだ?すると、



「壁と言うのは、一種の活動範囲であります。この状態はその範囲外から、出てしまったことによるものだと考えられます。」



と精霊さんが答える。



「じゃあ、すぐに戻らなきゃ!」



急いで、テラを持ち上げて、来た道を戻る。来た道を戻るにつれて、テラの表情が、良くなってくるのが見てとれた。



「アキラ、もう大丈夫だよ。」



とテラが上目遣いをしながら、こちらを見る。



「そ、そうか。じゃあ下ろすね。無理しちゃ駄目だよ。」



心配になりながらもテラを下ろす。



 それから家に戻っている最中に、精霊さんに詳しくこのことを聞いてみる。



「ねぇ、なんで俺は平気だったの?テラの気分が悪くなった所より、ずっと奥から俺、来たんだけどなんともなかったよ。」



精霊さんが答える、



「推測ですが、宿主はこの世界とは違う世界から来ましたので、何かの法則から外れていると推測されます。



今まで申し上げていなかったのですが、私が宿ったのも宿主が異質、故に親和性が高いと考えられます。



多分、私がテラさんに乗り移っても、親和性が低い故に宿主と同じようなスキルを扱うようなことはできないと考えられます。」



その瞬間、ここにいる人達が、鳥籠に捕らわれている小鳥に思えて仕方がなかった。しかし、精霊さんが僕の心を見透かしたように、



「しかし、この世界は途方もなく広いです。宿主が思っているようなことを現地の方々は、思っていないと考えられます。宿主の世界も丸い鳥籠みたいなものではないですか。」



嗚呼、なるほどと思い、この世界の仕組みの一端を理解するアキラであった。

 
 この世界の仕組みの一部と、自分の異質さを実感したアキラは、テラの様子を窺う。



先ほどは、無理をさせ過ぎたことを後悔する。だが、当の本人は、元気よく家に帰っている。



「う~~ん、テラの嗅覚と視覚を生かせると思ったんだが、なんとかならないかなぁ~。なんとかならないかなぁ・・・。」



と精霊さんにそれとなく問うが、



「現状のところ、それは無理なようです。」



ときっぱりと否定される。気を取り直し、今日のやることを整理する。



今日はとりあえず、少し辺り散策しようと考え、そのことをテラに伝える。



「じゃあ、行ってくるね。」



「あ、アキラさん、気つけて行ってきてな。」



とテラが見送りをしてくれる。ついでに、木の実なども取って帰ろうと考える。いつもとは逆の西側へと足を進める。



 「フフフン、フフフン。」



と進んでいく。



 東側の森とは違い、この森は陽の光が入りやすく、辺りも見渡しやすい。十分ほど経っただろうか、小高い丘を上っていることに気付く。



そのまま、頂上を目指すことにする。



途中、食べる木の実を見つけ、簡易的な葉っぱの包みを作り、それをポケットの中に入れて木の実をそこに詰め込む。



しばらく行くと、森が開け、少し急だが頂上らしきところが、見えてくる。



「宿主、足元にご注意を。滑りやすくなっております故。」



精霊さんが、警戒を促してくれる。



「へい、わかりました、用心します。」



気分は、冒険家にでもなったようだった。それでも、足元に注意しながら、頂を目指していく。



 そして、ついに頂へとたどり着く。辺りを見渡すと、少し遠くにテラの家が見える。そして、反対側の向こう側に、小さな村を発見する。



その時、精霊さんが言葉を発する。



「いい景色ですね。あ、そうだ。親和性が向上して、容量が増えました。



且つ探索の熟練度向上し、スキルを覚えました。スキル名は【目的地】です。習得されますか?」



唐突に、熟練度の向上を教えてくれる。ん?それ詳しく思うと、続けて精霊さんが、説明してくれる。



「今、見ている場所を目的地に、設定できるスキルです。例えば、見えなくなっても、その目的地がどの方角か直感で、わかるようになります。」



なんと便利なスキルだ。即決で習得する。試しに、村にセットしてみる。大体の距離がわかる。



これは往復すると日が、暮れそうなので、明日訪れることに決め、目的地をテラの家にセットする。



頂を降りていくと、テラの家が見えなくなるが、なんとなくどっちの方向に、向かって歩いていけばいいかわかる。



これほんと便利。その帰り道に小枝を拾いながら帰っていく。



『ガサガサ。』



なにやら動く音が、遠くの方から聞こえる。



その方向を見ると、角らしきものが、木の陰から見えるではないか。咄嗟に身を屈め隠れる。角の正体は雄鹿だった! 



こちらの音に気付いたのか、片足を上げて止まったように、こちらの方向を凝視している。



「野性の鹿、初めてみたよ。」



と感心していると、鹿が向きを変えて、大きくジャンプしてぴょん! ぴょん! と逃げ去っていってしまう。



どうやら、バレたようだ。



「隠密性が足りませんね。もっと習練度を上げなくてはなりません。」



精霊さんが言う。それに僕は、



「そうだな、つまり、上げていけばバレずに、狩れるってことだね。頑張ってあげていくよ。」



とこれからの課題を確認して、家路に着くのであった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...