上 下
10 / 11
共生

Ⅸ.アキラ、解体する。

しおりを挟む
 前回と同じように血を抜き、ウサギを担ぎ家路につく。



その途中、弓の熟練度が上がったという知らせを思い出す。そして、精霊さんになにかスキルを覚えれたのかと質問する。



「はい、宿主の今までの努力により、スキル【命中】を覚えました。これは、命中率が確率的に上昇するスキルですが、習得しますか?一度、習得したスキルは、使っていけばいくほど向上していき、上位スキルに変化していきます。」



と言われる。今までは、運よく狩れていたがこれからは、スキルにも頼っていく必要がある。



「オーケー、精霊さん。その【命中】習得するよ。」



僕は、声高々に宣言する。



「ポワワン」



と、毎度、気の抜けた音が鳴る。締まらないなと思いつつも、試しにスキルを実行する。



遠くの木に矢を放つと、前の自分なら、絶対に当てることができない距離だが、20本目にして命中する。



まぐれか必然かわからないので、もう一度試してみる。3本目の弓を放つ。



「これもはずれたか。」



と感触でわかる。



しかし、弓は理解を超えた力が働いたのか、軌道を意図的に変える。今度は3本目で命中する。



「お見事。」



と精霊さんが褒める。



たしかに、このスキルは確率で作用するが、使っていけば化けると確信し、スキルの潜在能力に驚嘆するのであった。



 そういえば、スキルはを習得しますか?と、精霊さんに聞かれたことを思い出す。なぜ、ふと覚えるのかと聞かれるのか疑問に思う。



「そういえば、なんで、スキルを習得するって聞いてくるの?覚えたんだから、使えるんじゃないの?」



と質問を投げかける。すると、精霊さんは淡々とそれに答える。



「スキルの習得は、私たちの親和性により使えるようになります。例えるなら、レベルアップですね。宿主が、何かを習練することによって、宿主と私の親和性が向上します。



ある程度、それが向上すると、精霊技術容量が増えます、その容量には上限があり、いくつもスキルを連続して取れないと言う訳です。しかし、親和性を高めることにより、容量の上限を増やしていくことができるということです。」



「つまり、習練をしてレベルを上げて、レベルポイントをスキルに振れってことだね。」



と解釈してみると、



「その通りです。」



「なるほど、まるでゲームみたいだな。じゃあこれ使いまくれば、どんどんレベルアップしていけば、短時間で上がるってこと?」



「理論上は可能ですが、マナのことをお忘れなく。補給しなければ私たちは死にますし、その量を一日の食事量で賄うことは、できないと考えられます。」



確かに、ごもっともでございます。無双までの道のりは、相当遠いなと諦めるアキラなのであった。

  精霊さんの説明を聞きながら、ウサギを抱えながら、テラの家に帰える。



前回ほど足取りは、重くなく達成感の方がむしろ多い。人というのは、不思議なものだ。



絶対無理だと感じていた物が、やってみた後では、その印象が180度変わるのである。



今日はテラに解体をまかすのではなく、自分でやってみることを決意する。



やがて、小さな家だが、テラが待つ家が見えてくる。ドアを開けると、帰りを今か今かと、待ちわびていたテラが、出迎えてくれる。



「おっけなさい。猟の結果はどげぇでしたか?」



と目をきらめかせながら、聞いてくる。僕は大げさにその報告をする。



「今回の~結果は~~ウサギ、一匹です!!イエイ!!」



「お~~、えらいです。えらいです。」



とまるで、自分のことのように喜んでくれる。



そして、ここからは、私の番です! というが如く、両手を差し出しこちらを見つめる。

しかし、今回は熟練度向上のためにも、



「今回は一緒にやろう。」



と僕は言う、テラは一瞬驚いたが僕の心を理解したのかただ一言、



「んだば、やってみるっけ。」



と笑顔で答えてくれた。



さぁ!!愛玩動物君の解体の始まりだ。



まず、その前に刃物を煮沸消毒する。菌怖いからね。そして、テラの眼つきが変わり、



「いが、今のわっきゃシュラだ。解体のシュラだはんでね、容赦はすねよ。」



とテラの目から優しさが消える。



テラさん怖い~。そして、ウサギを外へと運び出し、頭を下にして外の柱に吊るす。



気を取り直して、いよいよ、解体の始まりだ。



 まずは頭を切断して胴体と頭を分ける。そして、前足も切断しておく。そして、皮をむく。



次に、後ろの両足の付け根に切りこみを入れて皮を持ち、下に下ろしていく。



股間まで下ろすと、腹部と皮膚が繋がっている部分があるので、それをカットしていく。



尻尾の部分もカットしてそして、ググッっと下におろしていく。下まで剥がした完了だ。



「ふぅ~~皮剥ぎ完了~どうですか?テラ先生。」



とテラの方をチラりと見る。笑顔で無言に頷いている、ここでは先輩だから俺より慣れてそうだから、安心である。



 さて、次は内蔵を取りだす。肛門周辺部を切りとり、腹部をあけていく。



この時、膀胱を傷つけないように注意する。もしも、傷つけてしまえば、尿が肉にかかり悲惨なことになる。



慎重に腹を割っていき、膀胱を傷つけずに取りだす。



(うわぁ~~~、生で見るのは初めてで、現代っ子には刺激が強すぎる。)



と思いながらも慎重に内臓を取り出していく。



「肝臓ど心臓は食えるよ。」



とテラが言うので、それらをテラの手に乗せる。テラはものすごくニッコリしてる。嗚呼、好きなんだね。



そして、すべて内臓を取り出したら、解体の完了だ。丸々と太っていたウサギも解体してしまえば、食べる所は案外少ないことに気付く。



それでも、一度、味を覚えてしまっているので、おいしそうなことには変わりない。



今日は、どんな風に調理するんだろうかと想いを馳せるアキラなのであった。

  テラが解体したお肉を持って、家の中に入っていく。



僕は、それに感謝しつつ後片付けをする。



穴を掘りそこに、内臓を埋めていく。え?何、料理も手伝えばいいじゃないかって、習練度が上げればいいじゃないかって?



その問いにお答えしよう。僕は、絶望的に料理のセンスがない。作れる料理が、野菜炒めしかないのだ。



他の料理にも現世で、チャレンジしてみたが、ゲロマズだったのだ。



それに精霊さんに聞いたら、食べるスキルはあるらしいんだけど、料理スキルはないらしい。



適材適所と言うものだよ、だってほら、テラの料理おいしいし、自分から進んでやってくれてるし。



そこは、そっとして置こうじゃないか。と自分に言い訳をするのかのように、料理をしないことを肯定しながら、穴を掘り進める。す



ると、精霊さんが、習練度向上を教えてくれる。



「筋力の習練度が、上昇しています。いいですね、いいですね、きてますよ。上腕二頭筋が、ほどよく来ていますよ。」



と精霊さんが僕を気遣い、ジムのトレーナーさんが如く、作業に合いの手を入れてくる。



悪い気もしないし、ただ無言で作業をするのも嫌なので、それを聞きながら、土を掘っていくのであった。



 程よい深さになった頃、家の中からいいにおいが、立ち込めてくるので、僕はこれぐらいにして、内臓を穴に廃棄して、土を被せていく。



「アキラさん、ご飯出来たよ~。」



とテラが呼んできてくれる。ふと、誰かが、遠くの方に見えたような気がしたが、目をこすりよぉ~く見るが、誰もいなかった。



う~~ん、幽霊!?



「違います。」



と精霊さんがすばやくツッコみを入れてくる。



そんなやり取りをしながら、家の中に入る。テラの作った料理を見てみると、先ほどのウサギの肉と、野菜を使った水炊きのような料理だった。



食欲をそそる匂いが鼻腔をくすぐる。



「いただきます。」



と元気よく言い、テラが慈愛に満ちた顔をして、その様子を見る。



で、味は?もちろん、薄味だが、素材の味が活かされており、うまい!!



食べ進めていくと、精霊さんがお知らせを伝える。



「摂食の習練度が向上して、スキルを覚えました。スキル【消化良好】こちらを習得されますか?」



まぁ、なんと健康的なスキル名だこと。僕はそれに質問する。



「どんなスキルなの?」



精霊さんは、コホンと言い、



「このスキルは、摂食された物のマナ摂取量を上昇させる効果があります。私は、ぜひこのスキルは優先して、覚えておく必要があると思います。」



と力説される。



そこまで、言うならと習得すると、



「現在のマナ摂取量上昇率は1%です」



と、あんまり変わんないじゃないかと思うのだが、初期だからしょうがないと納得する。



テラの方をチラリと見ると、ハツ(心臓)をおいしそうに食べている。



まぁ、好きなんだねと、僕はそっとレバーもテラによそってあげる。そのことに気付いたのか、テラが申し訳なさそうに、



「アキラさんも、た、食わねばまいねよ。大ぎぐなれねよ。」



と母親のようなことを言う。



「いや、いいよ。心臓も肝臓もそんなに好きじゃないから。」



と、もっともらしい理由をつけて、テラは、照れながらもその好意を受け取る。



俺だって、ハツやレバーは好きだけど、作り主に譲るのが、男の強がりってもんよ。と自分を褒めるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

処理中です...