5 / 11
一歩
Ⅳ.アキラ、兎を狩る。
しおりを挟む
そしていよいよ、矢に羽根を蔓などの紐で結びつけて、完成する。見た目は不格好であるが、試しに撃ってみると先ほどとは違い遠くまで飛び、
「バフッ!!」
と木に突き刺さる。これなら、殺せる。
一応これで殺傷能力はあることが確認できた。
しかし、ここで問題が発生する。
弓矢には問題があるものの、それほど支障はないのだが、肝心の射手である自分の弓の扱いが全然ダメなのである。
確率は、10本に一発が、思い通りのまたに当たるほどで、なかなか命中しないのであった。
何時間か練習する内に、7本に一発は命中するようになる。
へへっ・・・、どんなもんだい・・・。
それぐらいになるときには、日が傾き始めていた、テラが僕を呼ぶ。
「アキラ!アキラ!ケムペーラ!」
どうやら、戻ってこい! との合図のように聞こえ、僕は家に戻るのであった。そして、今晩もまた、テラ様によるアレが待ち構えているのであった。
翌日、まだ日も明けていない早朝に、目が覚める。
身体が痛い。ベッドだけは譲らないテラを見ながら、起きる。
まぁ美少女を地べたで、寝かせるわけにもいかないよなと、納得しながら起きる。
朝食は、オニオンスープにおかゆを混ぜたような、健康的な朝食だ。なんか、あったかい家庭的な料理だ。
まるでテラがお袋に見えてくるようだった。
もちろん、介助は変わらなかった。
その後、食器を片づけ、いよいよ狩りだ!!
今日の獲物は兎です! あのキュートで、愛らしい動物を狩ることに抵抗を抱きつつも、肉を欲する本能には抗えないと実感しながら、準備をする。
昨日こさえた矢と弓を手に持つ、テラも
「アキラ、ブートィルグ」
と優しい声色を送ってくれる。僕もそれに答え
「ブートィルグ」
と答える。テラの表情に笑みがこぼれる。
とりあえず、近くの湖に赴くことにした。
昨日、鴨先輩に、石をお見舞いした湖だ。この数日何度か、ウサギを見かけることがあり、彼らは湖の方向に、よく出没していたのを記憶していた。
兎はいねがぁ~と、辺りを探す。草が生い茂るあたりを見渡しながら探すがまぁ、見当たらない。
まだ始めたばかりだ、気楽に行こう。
草がそよ風を教えてくれる。元いた世界では、考えられない光景だ。見渡す限りの自然、嗚呼、アイスが恋しいと思う自分であった。
それからどれくらい経っただろうか、見たいと思った時ほど現れてくれないのだなと、物欲センサーの存在を疑ったその時、向こうの草陰でなにか違和感に気が付く。
(識別マーク、茶色!!うさぎです。)
ついに見つけたお目当ての肉、逸る気持ちを抑え慎重に近づく。身を屈め、慎重に慎重に近いづいていく。
兎の耳がピクッと反応する。こちらの音に気付いたのだろうか、だが逃げ出そうとはしない。こちら側がうまいこと草に隠れている。
少し近づいては、じっとするを繰り返すうちに、練習していた間合いに詰めることに成功する。
矢をそっと矢袋から取り出して、呼吸を整え弦を引く。
指を離すと矢は鳥の如く飛んでいく。
しかし、その線は獲物を捉える事なく頭上を虚しく飛ぶ。
はずれた! 兎もそのことに気付き、まさしく脱兎のごとく逃げていく。
(くそぉ!!肉ぅぅぅううう!!)
と血が頭に上る。そんなことをしていても、獲物を取れないことに気付き、冷静になる。
悔しさを覚えながらも、再度ウサギを探しはじめるのであった。
幸運なことに狩人の神様は、僕を見離してはおらず、再戦の機会はすぐに訪れたのであった。
逃してから辺りを探し始めて十数分後、ふと山々を見る。
この景色は、見ていて気持ちのいいものだと感慨に浸りながら、目線を下に落とすと奴がいた。
そうウサギである。少し草が開けた場所につがいが、じゃれているのを見てとれた。
(今度こそ仕留める!!)
そう意気込み、身を屈め慎重に近づく。二匹のウサギはじゃれることに夢中で、こちらに気付いていない。
少しずつ、少しずつ間合いを詰めていく。
先ほどと同じくらい近づいた時、あることに気付く。ウサギが動き回り狙いが定まらない。
練習や先ほどは、止まっているものを狙っていたが、今回は訳が違う。動くものを射るのは、経験の浅い自分には無理なことだった。
しかし、獲物を目の前にして、気持ちが焦り矢を取り弦を引く。
(一かバチ、やってみるか。)
と無謀を挑もうとした時、ふと冷静さが戻りある考えが頭をよぎる。
(望みの薄いかけを挑むくらいなら・・・。)
呼吸を整え、その考えを実行に移す。
「ウワァ!!!!!」
大声を出す。すると、ウサギ達の動きが一瞬止まる。その瞬間を逃さずに狙いを定め、弦を離す。
(今度は、逃さない!!!)
と想いが通じたのか、矢が稲妻の如く駆ける。
矢は一匹のうさぎの腹部を捉えていた。そのウサギは最初は何が起こっているか分からずにいたが、次第に状況を理解し、のたうち回り始める。
続けて、もう一匹を射ようとするが、姿はなかった。
(二兎追うものは、一兎も得ずか。)
そんなことわざがふと思いつくのであった。
さっそく、仕留めたうさぎに近付く、
(どうしたら、良いものか・・・。)
数日前まで、ただの少年だった者が異世界に来たら、ほいそれと万能能力を得るものではない。微かな記憶を頼りに、肉の鮮度を保つため血抜きを行おうとする。
ウサギを持ち上げる、まだ温かく逃げようと、筋肉が動く。ウサギの胴体を触り、心臓あたりの太い動脈を探す。
「ドクン! ドクン! ドクン! ドクン! 」
嫌な感触だ、これから止まるであろう感触を、この手に感じてしまったのだから。
精々、虫しか殺したことのなかった自分には、ハードルが高すぎた。思い知ったのだ、
今までの人生で感じなかった。数多の死の上に今の自分がいることを、今この瞬間を持って、深く心に突き刺さったのである。涙が頬を伝う。
生きるために仕方ない。生きるために仕方ない。そう自分に言い聞かせる。
「ウワァアアアアアアアアアア!!」
矢を生命線に突き立てる。
「プスッ・・・グチャ、ドボボボボボ!! 」
生温かい血が穴からあふれ出す。
無意識に首を下に向け、ただただその光景を僕は見ることしたできなかった。
そのあとは、狩りを続行することはできないと思ってしまい家路につくのであった。
「バフッ!!」
と木に突き刺さる。これなら、殺せる。
一応これで殺傷能力はあることが確認できた。
しかし、ここで問題が発生する。
弓矢には問題があるものの、それほど支障はないのだが、肝心の射手である自分の弓の扱いが全然ダメなのである。
確率は、10本に一発が、思い通りのまたに当たるほどで、なかなか命中しないのであった。
何時間か練習する内に、7本に一発は命中するようになる。
へへっ・・・、どんなもんだい・・・。
それぐらいになるときには、日が傾き始めていた、テラが僕を呼ぶ。
「アキラ!アキラ!ケムペーラ!」
どうやら、戻ってこい! との合図のように聞こえ、僕は家に戻るのであった。そして、今晩もまた、テラ様によるアレが待ち構えているのであった。
翌日、まだ日も明けていない早朝に、目が覚める。
身体が痛い。ベッドだけは譲らないテラを見ながら、起きる。
まぁ美少女を地べたで、寝かせるわけにもいかないよなと、納得しながら起きる。
朝食は、オニオンスープにおかゆを混ぜたような、健康的な朝食だ。なんか、あったかい家庭的な料理だ。
まるでテラがお袋に見えてくるようだった。
もちろん、介助は変わらなかった。
その後、食器を片づけ、いよいよ狩りだ!!
今日の獲物は兎です! あのキュートで、愛らしい動物を狩ることに抵抗を抱きつつも、肉を欲する本能には抗えないと実感しながら、準備をする。
昨日こさえた矢と弓を手に持つ、テラも
「アキラ、ブートィルグ」
と優しい声色を送ってくれる。僕もそれに答え
「ブートィルグ」
と答える。テラの表情に笑みがこぼれる。
とりあえず、近くの湖に赴くことにした。
昨日、鴨先輩に、石をお見舞いした湖だ。この数日何度か、ウサギを見かけることがあり、彼らは湖の方向に、よく出没していたのを記憶していた。
兎はいねがぁ~と、辺りを探す。草が生い茂るあたりを見渡しながら探すがまぁ、見当たらない。
まだ始めたばかりだ、気楽に行こう。
草がそよ風を教えてくれる。元いた世界では、考えられない光景だ。見渡す限りの自然、嗚呼、アイスが恋しいと思う自分であった。
それからどれくらい経っただろうか、見たいと思った時ほど現れてくれないのだなと、物欲センサーの存在を疑ったその時、向こうの草陰でなにか違和感に気が付く。
(識別マーク、茶色!!うさぎです。)
ついに見つけたお目当ての肉、逸る気持ちを抑え慎重に近づく。身を屈め、慎重に慎重に近いづいていく。
兎の耳がピクッと反応する。こちらの音に気付いたのだろうか、だが逃げ出そうとはしない。こちら側がうまいこと草に隠れている。
少し近づいては、じっとするを繰り返すうちに、練習していた間合いに詰めることに成功する。
矢をそっと矢袋から取り出して、呼吸を整え弦を引く。
指を離すと矢は鳥の如く飛んでいく。
しかし、その線は獲物を捉える事なく頭上を虚しく飛ぶ。
はずれた! 兎もそのことに気付き、まさしく脱兎のごとく逃げていく。
(くそぉ!!肉ぅぅぅううう!!)
と血が頭に上る。そんなことをしていても、獲物を取れないことに気付き、冷静になる。
悔しさを覚えながらも、再度ウサギを探しはじめるのであった。
幸運なことに狩人の神様は、僕を見離してはおらず、再戦の機会はすぐに訪れたのであった。
逃してから辺りを探し始めて十数分後、ふと山々を見る。
この景色は、見ていて気持ちのいいものだと感慨に浸りながら、目線を下に落とすと奴がいた。
そうウサギである。少し草が開けた場所につがいが、じゃれているのを見てとれた。
(今度こそ仕留める!!)
そう意気込み、身を屈め慎重に近づく。二匹のウサギはじゃれることに夢中で、こちらに気付いていない。
少しずつ、少しずつ間合いを詰めていく。
先ほどと同じくらい近づいた時、あることに気付く。ウサギが動き回り狙いが定まらない。
練習や先ほどは、止まっているものを狙っていたが、今回は訳が違う。動くものを射るのは、経験の浅い自分には無理なことだった。
しかし、獲物を目の前にして、気持ちが焦り矢を取り弦を引く。
(一かバチ、やってみるか。)
と無謀を挑もうとした時、ふと冷静さが戻りある考えが頭をよぎる。
(望みの薄いかけを挑むくらいなら・・・。)
呼吸を整え、その考えを実行に移す。
「ウワァ!!!!!」
大声を出す。すると、ウサギ達の動きが一瞬止まる。その瞬間を逃さずに狙いを定め、弦を離す。
(今度は、逃さない!!!)
と想いが通じたのか、矢が稲妻の如く駆ける。
矢は一匹のうさぎの腹部を捉えていた。そのウサギは最初は何が起こっているか分からずにいたが、次第に状況を理解し、のたうち回り始める。
続けて、もう一匹を射ようとするが、姿はなかった。
(二兎追うものは、一兎も得ずか。)
そんなことわざがふと思いつくのであった。
さっそく、仕留めたうさぎに近付く、
(どうしたら、良いものか・・・。)
数日前まで、ただの少年だった者が異世界に来たら、ほいそれと万能能力を得るものではない。微かな記憶を頼りに、肉の鮮度を保つため血抜きを行おうとする。
ウサギを持ち上げる、まだ温かく逃げようと、筋肉が動く。ウサギの胴体を触り、心臓あたりの太い動脈を探す。
「ドクン! ドクン! ドクン! ドクン! 」
嫌な感触だ、これから止まるであろう感触を、この手に感じてしまったのだから。
精々、虫しか殺したことのなかった自分には、ハードルが高すぎた。思い知ったのだ、
今までの人生で感じなかった。数多の死の上に今の自分がいることを、今この瞬間を持って、深く心に突き刺さったのである。涙が頬を伝う。
生きるために仕方ない。生きるために仕方ない。そう自分に言い聞かせる。
「ウワァアアアアアアアアアア!!」
矢を生命線に突き立てる。
「プスッ・・・グチャ、ドボボボボボ!! 」
生温かい血が穴からあふれ出す。
無意識に首を下に向け、ただただその光景を僕は見ることしたできなかった。
そのあとは、狩りを続行することはできないと思ってしまい家路につくのであった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる