90 / 105
090:現実世界という真実
しおりを挟む
ゴブリンとの戦闘を開始すると、騒ぎを聞き付けたオークの群れがやってくる。
接近してくるオークを、遠距離で放てる魔法の【パラライズ】と【スリープ】で素早く行動不能にして、残りのゴブリンとオークは【エアリアル・ウィンド】による防御と回避、そして【マジック・エンチャント・雷】の追加効果で麻痺させながら数を減らしていく。これがここ数日の、飛鳥の定番の戦法だった。
だが今日は少し違った。戦いに乱入してきたミーナという猫耳少女が、ゴブリンの一匹をあっという間に倒したのだった。
そして遅れてやって来た4人の仲間らしき者達が、行動不能になっているゴブリンとオークを素早く処理して、一人の少女が、「危険です! 撤退しましょう」と声をかけてきた。
「大丈夫、いつも倒してるから。ミーナ! そっちのゴブリンよろしく」
臨戦態勢の猫耳少女ミーナにゴブリンの相手を任せた飛鳥は、素早くオークの側面に回り込んだ。
オークは長物の槍を持った厄介な相手だ。【エアリアル・ウィンド】の風の防御を頼りに、少々力押しで相手に接近して自分の射程に持ち込むと、武器を持つ腕を斬っては、次の相手も同じように雷属性の効果で行動不能にしていった。
更に再詠唱可能になった【パラライズ】と【スリープ】であっという間に2体のオークを行動不能にしたのだった。
「凄い」
後ろの少女の驚きの声が聞こえた。だが飛鳥にとっても、この戦いはいつもよりずっと楽だった。
後方の4人もそれぞれの動きで、残ったオークを処理してくれて、ミーナは素早い動きでゴブリンを全滅させた。
「楽だったよ! 皆ありがとう!」
敵を壊滅させ、素早く【収納】していると、賢そうな少女が寄ってきて自己紹介してきた。
「セナと申します。援護の必要はなかったようですね……ですが他にもオークが接近してきているようです。何か事情がおありでなければ、一度撤退してはどうでしょう?」
まだ幼いが大人びた少女が、どうやって知ったのか接近してくるオークの新たな群れについて警告してくれたのだ。
「そうだね一旦撤退しましょう。 ……ところでこのゲームのログアウト方法を知ってたら、後で教えて欲しいんだけど」
「げえむ? ろぐあうと?」
セナという少女が、なんでしょう? という表情を向けてきた事で、飛鳥は、今まで考える事を避けてきた事実に、ようやく目を向ける事になったのだった。
彼女達が自分の知っている、NPCと呼ばれるゲーム内キャラクターの反応と違っていて、そして他のゲームプレイヤーでもないという事に……
「……この世界は現実なんだね……」
それは、飛鳥が薄々感じながらも、考えないようにしていた事実……「この世界はあまりにもリアルすぎる……ゲームとは思えない。少々バージョンアップしたぐらいで、これ程リアルになるのはおかしい」という常に感じていた疑問に対する答えだったのだ。
◻ ◼ ◻
走り出した5人に追従するように飛鳥は、村の門を目指した。オークは足が遅いようなので逃げるのは、難しくなかった。その点では、素早いゴブリンの方が厄介な相手だといえた。
「その石門に入ってください!」
セナという少女が振り向き声をかけてきた。そして先頭を駆けていたミーナが、木の柵と一本の木に隠すように設置されていた門に、飛び込んだ。
「えっ⁉ 消えた……」
ミーナに続いて他の4人も次々と石門に飛び込んだ。石門の周囲は朝靄のような霧が立ちこめていて、気にはなったが、皆迷うことなく飛び込んでいく姿を見て、飛鳥も覚悟を決めると石門に飛び込んだ。
「ここは? ……どこ?」
さっきまでいた場所とは違う事は、すぐに理解できた。そこはとても明るい雰囲気の場所だったからだ。獣人族とエルフらしい人々が、戻った5人と精霊に笑顔で声をかけている。
その精霊には見覚えがあった。
「あの子、シルフィーネだよね……」
ゲームのマスコットキャラクターが、ふよふよと浮かんでいて、獣人族の男性と親しげに会話している。
「ごめんなさい。思ったより彼女が強かったので、上手く敵を撒くことが出来たの」
シルフィーネが飛鳥を見ながらそう答えた。
「皆さん、助けて頂いて、ありがとうございます。私、名前をアスカと言います。実は……気がついたらこの近くの森の中に立っていたんです」
複雑すぎる事情を大幅に省略して、飛鳥はペコリと頭を下げて自己紹介を行ったのだった。
接近してくるオークを、遠距離で放てる魔法の【パラライズ】と【スリープ】で素早く行動不能にして、残りのゴブリンとオークは【エアリアル・ウィンド】による防御と回避、そして【マジック・エンチャント・雷】の追加効果で麻痺させながら数を減らしていく。これがここ数日の、飛鳥の定番の戦法だった。
だが今日は少し違った。戦いに乱入してきたミーナという猫耳少女が、ゴブリンの一匹をあっという間に倒したのだった。
そして遅れてやって来た4人の仲間らしき者達が、行動不能になっているゴブリンとオークを素早く処理して、一人の少女が、「危険です! 撤退しましょう」と声をかけてきた。
「大丈夫、いつも倒してるから。ミーナ! そっちのゴブリンよろしく」
臨戦態勢の猫耳少女ミーナにゴブリンの相手を任せた飛鳥は、素早くオークの側面に回り込んだ。
オークは長物の槍を持った厄介な相手だ。【エアリアル・ウィンド】の風の防御を頼りに、少々力押しで相手に接近して自分の射程に持ち込むと、武器を持つ腕を斬っては、次の相手も同じように雷属性の効果で行動不能にしていった。
更に再詠唱可能になった【パラライズ】と【スリープ】であっという間に2体のオークを行動不能にしたのだった。
「凄い」
後ろの少女の驚きの声が聞こえた。だが飛鳥にとっても、この戦いはいつもよりずっと楽だった。
後方の4人もそれぞれの動きで、残ったオークを処理してくれて、ミーナは素早い動きでゴブリンを全滅させた。
「楽だったよ! 皆ありがとう!」
敵を壊滅させ、素早く【収納】していると、賢そうな少女が寄ってきて自己紹介してきた。
「セナと申します。援護の必要はなかったようですね……ですが他にもオークが接近してきているようです。何か事情がおありでなければ、一度撤退してはどうでしょう?」
まだ幼いが大人びた少女が、どうやって知ったのか接近してくるオークの新たな群れについて警告してくれたのだ。
「そうだね一旦撤退しましょう。 ……ところでこのゲームのログアウト方法を知ってたら、後で教えて欲しいんだけど」
「げえむ? ろぐあうと?」
セナという少女が、なんでしょう? という表情を向けてきた事で、飛鳥は、今まで考える事を避けてきた事実に、ようやく目を向ける事になったのだった。
彼女達が自分の知っている、NPCと呼ばれるゲーム内キャラクターの反応と違っていて、そして他のゲームプレイヤーでもないという事に……
「……この世界は現実なんだね……」
それは、飛鳥が薄々感じながらも、考えないようにしていた事実……「この世界はあまりにもリアルすぎる……ゲームとは思えない。少々バージョンアップしたぐらいで、これ程リアルになるのはおかしい」という常に感じていた疑問に対する答えだったのだ。
◻ ◼ ◻
走り出した5人に追従するように飛鳥は、村の門を目指した。オークは足が遅いようなので逃げるのは、難しくなかった。その点では、素早いゴブリンの方が厄介な相手だといえた。
「その石門に入ってください!」
セナという少女が振り向き声をかけてきた。そして先頭を駆けていたミーナが、木の柵と一本の木に隠すように設置されていた門に、飛び込んだ。
「えっ⁉ 消えた……」
ミーナに続いて他の4人も次々と石門に飛び込んだ。石門の周囲は朝靄のような霧が立ちこめていて、気にはなったが、皆迷うことなく飛び込んでいく姿を見て、飛鳥も覚悟を決めると石門に飛び込んだ。
「ここは? ……どこ?」
さっきまでいた場所とは違う事は、すぐに理解できた。そこはとても明るい雰囲気の場所だったからだ。獣人族とエルフらしい人々が、戻った5人と精霊に笑顔で声をかけている。
その精霊には見覚えがあった。
「あの子、シルフィーネだよね……」
ゲームのマスコットキャラクターが、ふよふよと浮かんでいて、獣人族の男性と親しげに会話している。
「ごめんなさい。思ったより彼女が強かったので、上手く敵を撒くことが出来たの」
シルフィーネが飛鳥を見ながらそう答えた。
「皆さん、助けて頂いて、ありがとうございます。私、名前をアスカと言います。実は……気がついたらこの近くの森の中に立っていたんです」
複雑すぎる事情を大幅に省略して、飛鳥はペコリと頭を下げて自己紹介を行ったのだった。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる