転生したのはAIでした ~精霊として転生した私は《特殊スキル》システム管理AIで村の復興から始めます~

高田 祐一

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085:新たな転移者?

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 都市への帰還の事を考える必要も、夜営の心配もない私は、高度を上げてひたすらふよふよと時々道がカーブする街道を、真っ直ぐにショートカットしながら恐らく冒険者が普通に歩くペースより早く街道をデリム村方面に進んでいた。

『自警団員のリサさんと話が出来ました。やはり居場所を知っておられました。予想どうり困窮されているらしくリサさんが支援をされているようですが、それでも状況は厳しいみたいです』

 この報告の内容から考えると厳しいのは元デリム村の住人だけではなさそうだ。難民街の状況は日々悪化していると言っても良いかもしれない。

『ナマフという魚の件は話してくれた?』

『はい、リサさんもとても喜んでおられました。私達が都市に入れる事を話して輸送を請け負うと伝えました。受け渡しを孤児院で行う事になり今から村の代表の方と打ち合わせに向かう所です』

 やはりこういう事はセナが頼りになる。ロゼもついているし気を回す必要もなさそうだ。

『こちらも順調に進んでいるし、そっちの事はセナに任せるわ。何か困った事があったら連絡して』

『はい、ビスタさんもお気をつけて』

 向こうも移動中なのかもしれないので、必要な事だけ話すと【心話】を終えた。

◻ ◼ ◻

「思ったより早く到着しそう」

 私は空を飛んでいるので、街道のルートをかなり無視して、時には森の上空を通過した結果、思ってた以上に私は近道をしていたようだ。

「到着は真夜中になると思っていたから、最初の偵察は朝にしようかと思っていたけど、夜の状態も見ておくべきかな」

 まだ夕陽が沈む前に視線の先に村らしき姿が見えてきた。ゲームでは魔物が強力になったり夜にしか出現しないような魔物も存在したのだ。

「現実の世界とは違うけど、私は斥候なのだから色々な角度からの調査が必要よね」

 私はそう一人で納得すると、上空から密かに観察すべくデリム村の方角に向かったのだった。

◻ ◼ ◻

 夕焼けで赤く染まった空を、私はふよふよと飛び、やがてデリム村と思われる村落の上空に到着した。

「誰かが戦っている⁉」

 上空からの密かな偵察を予定していた私の目論見は、思っても見ない形で破られた。

 この村に到る行程の途中からは、冒険者の姿を全く見ることが無くなっていたので、まさか戦いの場面に出くわすとは予想もしていなかった。

「冒険者ギルドの斥候部隊? それにしては単独での戦闘というのは妙ね……誤って発見されたとかかな?」

 危機的な状況という様子ではなく、上手く囲まれないようにしながら巧みに魔法を放ち一対一に持ち込んで、ゴブリンらしき魔物を一匹づつ始末していくその様子は、思ったよりソロ戦闘慣れしているみたいだった。

「今のところ助けは必要なさそうね……でもあの姿……とにかく【鑑定】っと」

 私はゴーグル型の鑑定機でその黒髪のまだ少女と言っても良い女性を【鑑定】した。

《名称》アスカ

《年齢》12歳

《種族》ヒューマン

《評価ランク》C相当

《総合魔素数値》5000

《職業》付与魔剣士

《特技》【ヒール】【パラライズ】【スリープ】【マジック・エンチャント】【エアリアル・ウィンド】【剣技】【盾術】【鑑定】【収納】【ステータス】【分解】【合成】【浄化】【魔素吸収】


「……あの黒髪それに【ステータス】……もしかして新たな転移者⁉ でも何でこんな場所に……」

 日本人らしい容姿、そして私と似た特技の数々から、どう考えても元の世界からの転移者としか考えられなかった。

「ちょっとあいつらは不味そうね……あれがオークかな?」

 複数の魔物相手の戦いにもかかわらず、私がこの戦いを傍観していたのは、ゴブリンの総合魔素数値が何れも800未満で一対一なら彼女より明らかに格下だったからだ。

「あの子、オークが5匹でも撤退する気はないみたいね。確かに数値的にはまだ格下みたいだけど、数値が全てとは思えないのよね……それに魔物はまだまだいるようだし……」

 彼女も【鑑定】を持っているようなので、相手が格下と判断しているに違いなかった。彼女が敵を迎え撃とうとする様子に迷いが見えなかったからだ。

 だが、オークは長物の簡素な石槍のような武器を持っていて、小さな棍棒のような物を持つゴブリンより明らかに厄介そうな相手だった。

『ごめん、皆……突然で悪いけど戦闘になりそう準備して頂戴、撤退の支援をする事になりそう』

 私はいざとなれば先行して戦闘に参加するつもりだった。上手く立ち回れば彼女の撤退の隙ぐらいは作れそうだった。

『ビスタさん、リビングにクランメンバーが全員待機しています。扉を設定して頂ければすぐにでも出れます』

 【心話】ですぐにセナから返答が帰ってきた。私は少し迷ったが、扉を少し離れた場所に設置した。

「ビスタ~、だいじょうぶ?」

 真っ先に飛び出してきたミーナが、あまり緊張感のない口調でそう尋ねてきたが、耳がピクピクと警戒するように動いている様子から口調ほどは油断している訳ではないようだ。扉からはミーナに続いて、エリス、ロゼ、ヤンそしてセナの順番で飛び出してきた。

『ギルド長ビスタ、村の冒険者ギルドに登録している者を【心話】にて召集をかけらます。石門を設置して頂ければ、集まり次第すぐにでも増援を派遣できますが?』

 それは精霊樹の村の冒険者ギルドを管理しているセリエからの【心話】での連絡だった。
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