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077:冒険者ギルド1
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冒険者ギルド中は、外から見て壮麗な建物なだけでなく、内装もなかなか立派だった。建物には多くの冒険者らしき装備と武器を携行した者達で溢れ返っていた。
「セナお嬢様、外観だけでなく中も立派な様子でございますね」
セナの後ろに付いて歩くロゼが、マナと手を繋ぎながら建物内の天井や内装の立派さに感心したように話している。
「自警団事務所とはやはり規模が違いますね」
セナはそう言いながら、受付に並んでいる女性の1人の前に立った。
「冒険者ギルドへようこそ。何かご依頼でしょうか?」
笑顔で問いかけてきた受付嬢は、セナ達が冒険者登録を希望してここに来たとは考えもしなかったようだ。子供が4人と大人といってもメイドが1人のこの集団が冒険者を希望すると思う方が無理はあったのだが……
「いいえ、私達は依頼を頼みに来たのではありません。冒険者としての登録を希望しています……ここに紹介状もあります」
セナはそう言うと、ジェノア監察官から受け取った紹介状を受付嬢に手渡した。
「こ、これは失礼致しました……ジェノア監察官のご紹介で……騎士爵のご令嬢でしたか」
ジェノア監察官のくれた紹介状の効果は、物事をスムーズに運ぶ程度には十分の効果があったようだ。紹介状には、セナの騎士爵の長女である身分に付いても説明されていたらしい。
「登録される事は、問題は御座いませんが……一定期間の間にある程度の功績を上げて頂かないと規則で資格が失効される場合がありますが?」
どうやら、貴族の道楽程度の気持ちで登録されても資格の維持は難しいですよと、言外に伝えたいようだった。
「功績とはどういった方法で判定されるのでしょうか?」
ある程度、歓迎されない対応をされる事は、セナも予想していたのだろう。セナの対応は冷静そのものだった。
「そうですね……都市周辺ではフォレストウルフの被害が増えて来ています。それにフォレストラビットの農業被害は厄介な問題となっていますね……ですがどちらもそれぞれに厄介な相手なので……おすすめは森での薬草になる野草等の採集でしょうか……どの様な物が必要かは、常にあそこの壁の掲示板に依頼状として掲示されています」
ジェノア監察官の紹介状には、さすがにセナ達の力量に付いてまでは記載されていなかったようだ。
(まあ、短時間で走り書きのように紹介状を書いてくれたのだから無理もないし、登録を拒絶されないだけジェノア監察官には感謝しないとね)
受付嬢の態度はセナ達を侮っているというよりは、子供が無理しないように対応してくれている様子なので不愉快な訳ではないのだが、いい加減面倒ではあった。
私達の目的は港湾都市の解放を目指しているという冒険者ギルドで、情報の収集ないし、その解放の活動に参加する事なのだから。
『ロゼ、用意してきたフォレストウルフの素材を受付嬢に見せてあげて』
ロゼは背中に少し大きめのバックを背負っている。ヤンも少し小型だが同様の物を背負っている。重くはないのだがそれなりの量があるのは、ミーナと出会った時に倒したフォレストウルフの素材が詰め込まれているからだった。
実力を示すには一番手っ取り早い方法だと思い、冒険者ギルドに入る寸前に【収納】から取り出しておいたのだ。
「あの、依頼を受けずに倒した獲物を今から納品したとしたら、功績として認められますでしょうか?」
ロゼが進み出て、背負っていたバックを開け中から私の【分解】スキルで処理されたフォレストウルフの毛皮と牙を取り出した。
「あの、確かに納品して頂ければ、功績としては認められますが……これはご自分で倒されたのでしょうか?」
さすがにセナも少し面倒になってきたのか、ヤンに背負っていたフォレストラビットの素材を開封させて――
「ジェノア監察官は、私達の実力を認めて頂き紹介状をわざわざ書いて下さったのです。決して私が騎士爵の娘だからだという訳ではありません。この事は可能であればジェノア監察官に確認して頂ければはっきりすると思います」
セナが子供とは思えない雰囲気でハッキリとそう述べると、さすがに受付嬢も自分がかなり失礼な事を言っていると気が付いたのだろう
「申し訳ありません……悪気があったわけではないのですが……そうですね、そのような嘘をついても直ぐにバレますし。登録の作業を致しましょう」
ジェノア監察官の紹介状があってもこれだから、なかったらもっと面倒であったろうと思われた。
セナ達はミーナも含め渡された書類に名前と年齢を記入した。
「これだけでいいんですか?」
セナが些か拍子抜けしたように尋ねた。もっと色々と記入の必要があると思っていたらしい。
「はい。以前までは必要だったのですが、今はこの勇者タガギ様が考案されたギルド証の発行機能で十分なのです」
そう言うと受付嬢は笑顔で、その半円の水晶玉のような物がついた小型の装置を差し出して来たのだった。
「セナお嬢様、外観だけでなく中も立派な様子でございますね」
セナの後ろに付いて歩くロゼが、マナと手を繋ぎながら建物内の天井や内装の立派さに感心したように話している。
「自警団事務所とはやはり規模が違いますね」
セナはそう言いながら、受付に並んでいる女性の1人の前に立った。
「冒険者ギルドへようこそ。何かご依頼でしょうか?」
笑顔で問いかけてきた受付嬢は、セナ達が冒険者登録を希望してここに来たとは考えもしなかったようだ。子供が4人と大人といってもメイドが1人のこの集団が冒険者を希望すると思う方が無理はあったのだが……
「いいえ、私達は依頼を頼みに来たのではありません。冒険者としての登録を希望しています……ここに紹介状もあります」
セナはそう言うと、ジェノア監察官から受け取った紹介状を受付嬢に手渡した。
「こ、これは失礼致しました……ジェノア監察官のご紹介で……騎士爵のご令嬢でしたか」
ジェノア監察官のくれた紹介状の効果は、物事をスムーズに運ぶ程度には十分の効果があったようだ。紹介状には、セナの騎士爵の長女である身分に付いても説明されていたらしい。
「登録される事は、問題は御座いませんが……一定期間の間にある程度の功績を上げて頂かないと規則で資格が失効される場合がありますが?」
どうやら、貴族の道楽程度の気持ちで登録されても資格の維持は難しいですよと、言外に伝えたいようだった。
「功績とはどういった方法で判定されるのでしょうか?」
ある程度、歓迎されない対応をされる事は、セナも予想していたのだろう。セナの対応は冷静そのものだった。
「そうですね……都市周辺ではフォレストウルフの被害が増えて来ています。それにフォレストラビットの農業被害は厄介な問題となっていますね……ですがどちらもそれぞれに厄介な相手なので……おすすめは森での薬草になる野草等の採集でしょうか……どの様な物が必要かは、常にあそこの壁の掲示板に依頼状として掲示されています」
ジェノア監察官の紹介状には、さすがにセナ達の力量に付いてまでは記載されていなかったようだ。
(まあ、短時間で走り書きのように紹介状を書いてくれたのだから無理もないし、登録を拒絶されないだけジェノア監察官には感謝しないとね)
受付嬢の態度はセナ達を侮っているというよりは、子供が無理しないように対応してくれている様子なので不愉快な訳ではないのだが、いい加減面倒ではあった。
私達の目的は港湾都市の解放を目指しているという冒険者ギルドで、情報の収集ないし、その解放の活動に参加する事なのだから。
『ロゼ、用意してきたフォレストウルフの素材を受付嬢に見せてあげて』
ロゼは背中に少し大きめのバックを背負っている。ヤンも少し小型だが同様の物を背負っている。重くはないのだがそれなりの量があるのは、ミーナと出会った時に倒したフォレストウルフの素材が詰め込まれているからだった。
実力を示すには一番手っ取り早い方法だと思い、冒険者ギルドに入る寸前に【収納】から取り出しておいたのだ。
「あの、依頼を受けずに倒した獲物を今から納品したとしたら、功績として認められますでしょうか?」
ロゼが進み出て、背負っていたバックを開け中から私の【分解】スキルで処理されたフォレストウルフの毛皮と牙を取り出した。
「あの、確かに納品して頂ければ、功績としては認められますが……これはご自分で倒されたのでしょうか?」
さすがにセナも少し面倒になってきたのか、ヤンに背負っていたフォレストラビットの素材を開封させて――
「ジェノア監察官は、私達の実力を認めて頂き紹介状をわざわざ書いて下さったのです。決して私が騎士爵の娘だからだという訳ではありません。この事は可能であればジェノア監察官に確認して頂ければはっきりすると思います」
セナが子供とは思えない雰囲気でハッキリとそう述べると、さすがに受付嬢も自分がかなり失礼な事を言っていると気が付いたのだろう
「申し訳ありません……悪気があったわけではないのですが……そうですね、そのような嘘をついても直ぐにバレますし。登録の作業を致しましょう」
ジェノア監察官の紹介状があってもこれだから、なかったらもっと面倒であったろうと思われた。
セナ達はミーナも含め渡された書類に名前と年齢を記入した。
「これだけでいいんですか?」
セナが些か拍子抜けしたように尋ねた。もっと色々と記入の必要があると思っていたらしい。
「はい。以前までは必要だったのですが、今はこの勇者タガギ様が考案されたギルド証の発行機能で十分なのです」
そう言うと受付嬢は笑顔で、その半円の水晶玉のような物がついた小型の装置を差し出して来たのだった。
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