転生したのはAIでした ~精霊として転生した私は《特殊スキル》システム管理AIで村の復興から始めます~

高田 祐一

文字の大きさ
上 下
73 / 105

073:森の狼

しおりを挟む
「ガルフ、都市ミザレの難民街の側にある、あなた達の隠れ村があった森なんだけど……どうも魔物の発生具合が平原ダンジョンの回復力に似ているのよね。もう随分とミーナ達がフォレストラビットを狩ってる筈なんだけど数日後には数が元に戻っているみたい」

 私はミーナ達が随分と狩っても直ぐにフォレストラビットが回復する森についてガルフにこれまでの経緯を説明した。

 ミーナ達は成長しているので今のところ壊滅させる勢いでフォレストラビットの狩っている。ある意味では良い肉の供給源になっていると言えたが、それでも異常なことには違いなかった。

 平原ダンジョンのように人里から離れた場所にあるダンジョンであれば、有益な狩り場と言えたが、作物にも被害が及ぶ可能性がある現状を放置する訳にもいかなかった。

「なるほどな……俺達も住んでいて狼の多さに閉口していたのは確かだ。間引いちゃいたんだが、奴らを本格的に退治するまでには至らなかったんだが……」

 考え込んだ様子でそう話すガルフだったが、いつもの勢いがないのが不思議だった。獣人族の力量からすればそれほど苦戦する相手と思えなかったのだが……

「どうしたの? ガルフにしては歯切れが悪いじゃない? 俺達に任せろ丁度良い腕試しだ……ぐらいは言いそうだと思ったんだけど」

 私の言葉にガルフにしては珍しく、頭の後ろを掻きながら少し恥ずかしそうにしている。

「ハハッ、確かにな! 俺が言いそうな台詞だな……だが奴らは単体ならともかく群れで襲って来るからな。それにリーダーになるような上位個体の中には【遠吠え】で相手を一瞬、麻痺状態に陥らせる特技を使ってくる奴が居てな……そこを素早い動きで連携攻撃されると手に負えねえ」

 私はガルフの説明を聞いて納得がいった。それはミーナと出会った時に襲われた狼の群れだった。

「以前、それなりにベテランらしい冒険者二人が襲われて1人がやられて、1人が重傷を負った場に居合わせた経験があるの……なるほど、【遠吠え】にそんな効果があるなら納得ね」

 遭遇時に【遠吠え】を聞いた記憶があった。冒険者二人がミーナの存在を忘れる程に慌てて逃げ出した事情が今更ながら理解できた。

 あの時遭遇したフォレストウルフの中に上位個体が存在したのだろう。そう考えるとラロが辛うじて生き残ったのは相当運が良かったに違いなかった。

「【遠吠え】の対策って何かないのかな?」

 狼系の魔物のスピードとそれを利用したフットワークの軽快さは厄介だが、そこに麻痺効果まで加わったら少々強くなったと言っても危険だった。

「ああ、あるにはあるがな……恐怖心を克服する事、つまりは相手より圧倒的に強くなれば良いのさ。【遠吠え】の効果を受けるってのは恐怖心からの一種の恐慌状態になる事に近いらしい……つまりはそう言うことだな」

 結局のところもっと成長が必要との事だった。

「曖昧な表現ね、強くなるって具体的にどのくらいなのよ……いや、いいわ方法は有るかも……」

 ガルフの説明は納得がいく物だったが、具体性に欠けたものだと文句を言いかけたのだが、思い止まった。

「【鑑定】すればいいんだ。少ないとも赤ネームでなければ大丈夫って事かな。但し事前に敵の偵察が必要ね。忙しくなりそうミーナ達にも頑張って貰わないと」

 私はそう呟くとダンジョン入り口のある冒険者ギルドの地下部屋から出る為にミーナ達と共に、地下階段を上り地上に向かったのだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

処理中です...