転生したのはAIでした ~精霊として転生した私は《特殊スキル》システム管理AIで村の復興から始めます~

高田 祐一

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062:精霊樹の村へ2

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「別に構わねえんじゃねえか? 人間といっても子供だろ?」

 ガルフが事もなげにそう言うと、獣人族の長老達からも特には反対意見も出てこなかった。

 今日の議題は設置した畑に主に何を植えるのかという話し合いが行われる予定だったらしい。

 ハウジングには色々な野菜の種が選択可能だったのだが――

(これって異世界の植物だよね……勝手に持ち込んで大丈夫かな)

 こんな事を考えてはいたが、既に一部の畑で栽培していたりする。一応出来た野菜は皆に試して貰い精霊樹の村だけで当面は消費する予定だった。

 話し合いの前に、都市から孤児院の子供達を連れてきた経緯を、集会所に集まった精霊樹の村の主だった者達に説明したのだが……獣人族の長に当たるガルフの返答は、非常に素っ気ないものだった。

(まあガルフは積極的に反対しないと思ってたけど……そんなに簡単に賛成して良いのかね?)

 自分で言い出した事なのに私が内心そんな風に考えていると、

「なかなかよう働く子供達じゃよ……さぞかし苦労しておるのじゃろうな。不憫なことじゃよ」獣人族の長老の一人がしみじみとそう言った。

 老人はガルフと同じく狼獣人で体格は良いがとても優しい目をした老人だった。名前をガザフと言い前族長でガルフの父親らしい。

 獣人族の中でも畑について詳しく、今回採取してきた芋の一部を種芋にして増やす試みを行うらしい。

 ケン達を知っているのは、手伝わせて欲しいと言ってきたケン達に、指導しながら畑で働く術を教えていたからだろう。

 指導を受けながら熱心に取り組んでいるケン達や、幼い子供達が一緒に出来ることをお手伝いしているのを見ると、子供達の成長のためにも村への受け入れは何とかしたかった。

「ビスタの話を聞く限り、精霊樹が受け入れた者達という事なら、我々エルフが拒む道理もない……」

 そう言って口を開いたのは、エリスの父親でエルフの族長であるサザン族長だった。

「……だがビスタ、この精霊樹の村は我々に運営を委ねて貰ってはいるが……本来ここは、お前の村だ。誰を住まわせるかは最終判断は委ねたい。もちろん我々も意見は言わせて貰う……だが決めるのはビスタ……お前だ」

 サザン族長の言葉に、この集会に参加している者達も黙って頷いている。

「わかったよ……でもここは小さな村だから受け入れは慎重にする事は約束するよ。でも世界が大変なのは間違いないので急な受け入れをする可能性もあるのよ、その時は皆にも協力をお願いしたいの……」

 ハウジングの力で作り上げた村だから、皆が自分達の村と直ぐには考えにくいのは無理もなかった。開拓した土地は開拓した者の物という考え方かもしれない。

(その辺りの心理的な問題は、時間がやがて解決してくれるかもね……)

 それに受け入れの事も、魔族が攻めて来ているような状況なのだから、一時避難的な受け入れの可能性は考えられた。

「近いうちに港湾都市カイエスブルグにも行くつもりだから、そこで、もし魚人族が困っていれば、手助け出来ることもあるかもしれない」

 だから良い機会なので、事前にセナの故郷にいずれ行くつもりだと告げておいた。

「なに、俺達も魔族に村を燃やされた犠牲者だ、同じ境遇の者達に手を差し伸べるくらいはするさ……ところで子供達の住む場所はどうするつもりだ? 石門があるから元の住み処に問題がないならそのまま利用するというのも手だがな」

 精霊樹の結界があるので、あの場所は子供達にとって街での唯一の安全圏といえた。石門と組み合わせれば活動の場所も十分に広がるのだが――

「それについては、ちょっと面白い建物があるから。それに前の孤児院じゃ皆を受け入れられないし……今後もそういった境遇の子供達が出てくるだろうから最初の受け皿として余裕を持たせるつもりよ」

 ケン達も一緒に暮らせる場所が必要だった。更に、私は自警団にそういった子供達の保護をお願いするつもりだった。手の届く範囲の子供だけでも助けたいという思いがあった。
 
(根本的な救済は勇者のような存在が魔族を追い払う事でしか実現しない)

 それでも、手を伸ばす範囲を広げる努力はするつもりだった。
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