転生したのはAIでした ~精霊として転生した私は《特殊スキル》システム管理AIで村の復興から始めます~

高田 祐一

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059:難民街の孤児院1

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「あの、ミンとナンがお肉をいただいたと言っているんですが……今、生憎お金に余裕が無くてお支払いが出来そうにありません……リーファ様がお戻りになるまでお待ち頂けません?」

 年の頃は15歳位だろうか? ロゼと変わらない位の人間の少女だった。どうやらお肉の押し売りか何かと勘違いされたのかもしれない。

「あら? 子供達だけなの? 大人の方は一緒ではないのですね……もしかしてリーファ孤児院に入るために来たのかな?」

 相手が子供達だけだとわかって女性は安堵したのか、口調も普段から子供達を相手に話しているような物に変化した。

「いいえ、私達は確かに子供ですが狩りで生活しています。私はフォフナー騎士爵の娘セナと申します。そちらは従者のヤン、そして友人の自警団員のミーナです」

 子供扱いされた事が少し気にいらなかったのかもしれない。セナが随分と型どうりの挨拶をした。

「そ、そうですか、私はこの孤児院をリーファ様から一時的に任されているエミリと言います」

(可哀想にセナの勢いに少し気後れしちゃってるな……多分悪気があって子供扱いしたと言うより、普段からあんな調子なだけなのだろう)

『セナ、この人も悪気がある訳じゃないみたいだよ。それにセナくらいの年の子供相手だと、普通の対応だと思うよ』

 私は【心話】でセナに注意した。セナみたいに年齢から考えてもかなり賢い部類の子供は、余程の教育を受けないと滅多にいないのだ。

『そうですね……最近まで大人に馬鹿にされないように気を張っていた癖が……謝罪した方がいいでしょうか?』

 生真面目な反応がセナから返ってきた。

『別に構わないと思うよ。それにここはミーナに任せよう』

 私がそう言ったのは、ミーナがトコトコと進み出てエミリに近づいて「たきだし、なくなるからもってきた」と、持っていた二匹分のウサギの肉を差し出したからだった。

「ありがとうございます……正直に言えば凄く助かります。よろしければ中に入って皆にも会っていって下さい」

 そう言ったエミリの目は少し涙ぐんでいるように見えた。

(外からでは解らないけど、これは思っていたよりもかなり不味い状態なのかもしれない……)

 私達はエミリに案内されて建物の中に入っていったのだった。

◻ ◼ ◻

 建物は平屋の木造建築で思っていたよりもしっかりした造りのようだった。

 間取りとしては2部屋だろうか、入ってすぐ右手にドアがあり私達が入った部屋は板張りの家具も何もない部屋だった。

「多いですね……」

 セナが呟いた通り、そこには10人ほどの子供達が共同生活を送っている様子だった。年齢的には上の女の子が12歳くらいで他は10歳以下の子供が殆どのようだ。

「夜になると庭にやって来る男の子達が数人います……街で雑用をこなしながらなんとか暮らせている子供達です。この場所はリーファ様の結界が張られていて、不思議な事に庭にある精霊樹に認められた者しか入ってこれないのです……ですからここの庭なら安心して休めるらしいのです」

 セナはどうしてその子達も家に入らないのかと尋ねたりはしなかった。

 街で辛うじて生きていける子供は、街で生きていく力の無い幼い子供達にこの場所を譲っているのだろう。

「あ! おねえちゃんも、ここにすむの?」

 さっきお肉を持って家に駆け込んで行ったミンとナンが、ミーナに駆け寄って来てまとわりついた。
 
「おにく、もってきただけだよ」

 ミーナの【心話】での要望に答えて、私は、更に2匹ほどのウサギ肉を収納から取り出した。

「えっ! 何処からかお肉が……」

 ミンとナンは手渡された新たなお肉に夢中になって気にしていないようだったが、子供達の中でも一番年上らしい女の子が驚いて声をあげた。

(これが普通の反応だよね……猫っ子達はミーナもそうだけど細かい事が気にならない性格なのだろうか?)

 ミーナもあまり私のやることを気にしたりしない。説明要らずで楽な面もあったが、時々それで良いのかと疑問に思うことがあった。

(精霊樹が認めた者しかこの場所にはいないんだね……なら良いか)

 私がそう考えると同時に、《精霊樹の許可がある者達を村人として【契約】を行いますか? YES OR NO》

 件のシステムメッセージが表示された。なかなかに空気を読んだ許可範囲の設定だった。

(このメッセージの文面から考えると、エミリの結界の話は本当の事のようね)

 私がそんな事を考えていると――

「あ! シルフィーネさま!」

「えっ! でも……はだのいろが白いよ! それにシルフィーネさまは、もっとおとなのおねえさんだよ!」

 村人登録した事で、私の姿が見えるようになり子供達が騒ぎ出すのは想定内だったが、ここでシルフィーネの名前を聞くことになるとは思ってもみなかった。

 それにどうやらこの世界のシルフィーネは色黒らしかったのだった。
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