転生したのはAIでした ~精霊として転生した私は《特殊スキル》システム管理AIで村の復興から始めます~

高田 祐一

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055:隠れ村4

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「重要な話だと? ……分かった取り敢えず中に入りなさい」

 中に招き入れようとする父親の背に――

「精霊樹の森を見つけたのです……昔、精霊シルフィーネが隠したという場所かもしれません!」

 一刻も早くその事を伝えたかったのだろうエリスが、捲し立てる様に早口でそう告げた。

「そんな物がそう簡単に見つかる訳があるまい……ん……精霊だと⁉ だがシルフの筈はあるまい……世界樹が燃え尽きたのだ、他の精霊達も精霊樹と共に消えてしまったのだ……ワシは幻まで見えるくらい耄碌してしまったというのか……」

 そう言うと、その場に座り込んでしまった。

「やれやれ、エルフの族長ともあろう者が、この有り様じゃな……まあ俺達獣人族とは失った物の重さが違うんだが……それにしても、もう少しどうにかならんものかな……族長がこの調子なもんで他のエルフ達もすっかり意気消沈しちまってるんだよな」

 ガルフはすっかり力を無くしてしまったエルフに口では厳しい事を言っているが、同情の眼差しで見つめているのが表情から分かった。

「しっかりしてくださいお父様!」

 エリスはそう言うと、自分の父親の両肩を掴むと強く揺すった。

「ご免なさいお父様……ビスタさん! この村の中に石門を設置して下さいませんか? 今、必要なのは本物を見せる事です……」

 エリスは力を失ってしまった父親が余程ショックだったのだろう。顔色も凄く悪かった。

「父ちゃん、何か見せてくれるの?」

 後からサリーナと手を繋ぎ部屋にやって来たガルフの娘のナタリーが無邪気にそう尋ねた。

「ああ、ここにいる皆が元気になるような物を、今からそこの精霊ビスタが見せてくれるのさ」

 まるで周囲の者を元気付けるかのように、ガルフは大声をあげた。私達が外に出てみると入り口付近に獣人族だけではなく、エルフ達も集まってきているようだ。

「エリス! 無事で良かった!」

 女性のエルフ達が部屋から出てきたエリスを見つけて寄ってきた。そしてお互いの無事を確かめ合っているようだ。

「村にいるあらかたの者達に声をかけといたさね」

 どうやらサリーナが皆を集めてくれたようだ。

 エリスの父親が族長らしいので、既にその一族にあたるエルフ達も強制的に精霊樹の村の村人として登録済みである。

(ガルフの時と違って本当に勝手に村人登録してしまった……やっぱり相手側の意思は関係ないんだな)

 ガルフの時は、獣人族のリーダーとしてもう少しお互いに意思の疎通があったのだ。だが今回はお互いの名乗りすら行っていなかった。

 私がふよふよと村の中央の広い場所に飛んで行くと、周囲の注目が嫌が上にも集まった。

「精霊よ!」

「どうして精霊が……世界樹の森は全て失われたんじゃ……」主にエルフ達の集団からそんな声が聞こえた。

 私はそんな声に反応を示さず、システムメニューを開くとハウジングの欄から霧の石門を選び設置した。

「門が突然……それにこの白い霧は……」

「これって迷いの霧じゃない?」

 エルフ達にもこの霧は馴染みのあるものらしい。突然の石門の出現に驚いていたが白い霧に対しては思ったよりも冷静な反応が返っていきた。

「さあ、いくぞ! この門の先に俺達の新天地がある!」

 ガルフとサリーナ、そして二人の子供達がまず率先して石門の中に入っていった。平原ダンジョンに同行した獣人族達も自分の家族を促して石門に入っていく。

 獣人族はリーダーの行動に従い皆、問題なく石門に入っていった。だが問題はエルフ達だった。

「皆、中に入ってみれば分かるわよ!」

 エリスの声に周囲の同年代らしいエルフの女性達も、「でもサザン族長や長老様達が……」

 どうやらエルフ達は悪い意味でのリーダーシップが発揮されてしまい、若いエルフ達もどうすれば良いのか困惑が先に立ってしまっているようだ。

 私もさすがにどうしようもないのかと諦めかけた時――

「あら獣人族の皆さんは来てくれたのに、何故エルフの皆はこちらに来てくれないのですか? 世界樹の若木が皆さんを恋しがっていますよ」

 石門の中から、世界樹の若木を見守る為に精霊樹の村に残っていてくれた、精霊シルフが姿を現したのだった。
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