転生したのはAIでした ~精霊として転生した私は《特殊スキル》システム管理AIで村の復興から始めます~

高田 祐一

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048:平原ダンジョン

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 狩り場に到着したガルフ村長達が先ず狙い始めたのはファングシープだった。ガルフは両手斧を降り下ろし一撃で始末していく。他の獣人族達も各々の得意な獲物で次々とファングシープを仕留めていった。

 サリーナも同じく両手斧を振り回してファングシープを仕留めている。

(皆、このレベルの魔物程度なら楽勝な腕前みたいね……斧を使う人が多いのは森で木を伐るのに便利だからだろうか?)

 【鑑定】でガルフやサリーナの両手斧を見てみると武器としても使えるし伐採にも使用可能らしいコメントが記載されていた。

(【鑑定】有能すぎね……)

【鑑定】のこの世界のに対する情報データベースとしての情報量の多さは驚嘆するレベルだと思った。

「ウサギそっち行ったよ」

「わかった」

 セナが声をかけミーナが短剣でホーンラビットの首元を切り裂いた。

「フォレストラビットより小型だから素早いけど、倒すのは簡単ね」

 セナが盾で軽く弾けるホーンラビットの突進を受けて少々拍子抜けしたようにそう言った。

 私はセナは弾いた相手を【ウィンドブレード】で仕留めた。

「下級精霊になって魔法の威力も上がったみたい……まあホーンラビット相手だと実際のところは分からないけど。まあ見た感じだと結構な変化だわ」

 魔法の威力も上がったのだが、下級精霊に進化してもうひとつ大きな変化があった。

「驚きましたね、ビスタさんの姿は確か私達以外には見えなかったはずですよね?」

 セナが言っているのは、獣人族達が私を精霊として認識した事だった。

「そうね~、これも難民街の住人とかで確認してみないとはっきりとは断言出来ないけどね……」

 正直なところ、この変化は微妙な部分もあった。偵察等には認識されないという強みが役に立っていた面が確かにあったからだ。

「もしかすると人間には見えない可能性があるかもしれませんよ?」
 
 こちらはホーンビーを狩っていたエリスが私とセナの会話に加わった。

「人間は精霊が見えないって事?」

 私の質問にエリスが頷いた。

「精霊達は精霊樹の森をあまり出たがらないのですが、エルフの中で精霊の加護を受ける者が希にいるんです。その者が人間の世界に赴いた時に共に付いていった精霊がいたらしのです。その時、人間がその精霊を認識出来なかったと聞いた事があります。人間が精霊の存在を信じていないのが原因ではないかと伝えられています。まあ随分昔の事らしいですが……」

 エリスが人間の街に立ち寄っただけで揉め事に遭遇しているのだ。エルフも精霊も人間との交流は少ないようだ。

「エルフも人間の街との交流は少ないの?」

 エリスとの突然の成り行きによる出逢いとクランへの強制加入や、その後の精霊樹の森の出来事を経て色々とこちら側の事情の説明に終始してエリスの事情をゆっくりと聞く余裕がなかったのだ。

「ええ、私も今回の事がなければ都市に立ち寄ったりはしなかったと思います。人間の作る品が欲しい場合は獣人族の隠れ村に訪れるハーフの獣人族の商人の方が定期的に訪れてくれますし。精霊樹の森で採取出来る薬草等は都市でそれなりに高値で取引されるようなのです」

 ハーフの獣人族は人間との仲立ちのような存在なのかもしれない。そういう意味では人間社会に適応した者達は、人間とエルフや獣人族にとってお互いに必要不可欠な存在なのかもしれなかった。

「おう、こっちはあらかた狩り尽くしたぜ! こんなに狩っちまって本当に大丈夫なのか?」

 この場にはやって来たのは獣人族でも戦える者達ばかりらしい、ここにエルフが居ないのは怪我人が多かったのと、魔族に狙われたのが世界樹の森とそれを守護するエルフ自身だったかららしい。

 エリスが転移したあと、森は恐ろしい黒い炎で焼き尽くされたらしい。残って戦っていたエルフが撤退を決断し全滅を免れたのは単機でやって来た勇者タカギのお陰だったそうだ。

「勇者、独りで頑張っているのかな?」

 色々な場所で勇者の活躍は漏れ聞く事があるが、セナの街も守りきれたとは言い難い結果だった。

「有能な精霊使いのエルフが付いているという噂は聞くがな……今回の救援に単独でやって来たのもエルフの召喚した鳥が一人しか乗れなかったかららしいがな」

 ガルフさんの言葉に私は、(勇者は転移魔法までは使えないみたいね)と独り考え込んでいたが、今はのんびりとしている暇はなかった。

 私は積み上げられた獲物の山にふよふよと飛んでいった。まずは私の実力を獣人族に見せつける必要があったからだった。
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