転生したのはAIでした ~精霊として転生した私は《特殊スキル》システム管理AIで村の復興から始めます~

高田 祐一

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043:調査

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「申し訳ありません、取り乱してしまって……」

 一頻り泣いた後、エリスは少し恥ずかしそうにそう言ってから、また精霊樹の森を見やった。

「私の方こそ、ごめんね……ちゃんと説明せずにいきなりこの光景を見せたりしたから……」

 故郷失った者に対して配慮が足りなかった事を反省しながら、この精霊樹の森の事をどう説明したら良いか私は考えを巡らしていた。

「あの、この森はもしかして……昔にシルフィーネが悪戯で隠してしまったという精霊の森ではないですか?」

 どう説明したら良いか悩んでいた私にエリスから逆にそんな都合の良さそうな話を持ちかけられ……「そ、そうかもしれないわね……私も知らないうちにこの森を受け継いでいたみたいなのよね……」私はその話に便乗することにした。

「そうですか……ここから見ていると故郷の森に帰ってきたとしか思えないものですから」言い出した本人のエリスも何か確信があって言った訳ではない様子だった。

 本当の事を全て打ち明けられない事に多少の罪悪感を感じたが、私が元あるゲームのシステム管理AIである事を説明したところで、信じてはくれるかもしれないが、元の世界の文明に対する理解のない彼女達には、何となく不思議なこの世界とは違う魔法のような物として理解するしか出来ないだろう。

(それならいっそ、この世界に実際に存在する似ている物で置き換えて説明した方が理解しやすいだろうし、彼女達も混乱が少ないよね……それに、この精霊樹の森がエリスの言っている隠された森でないと言い切れないのも事実だし……)

 私も転生する時に、こに世界の修正力という物の影響を受けているのだ。その際に実在する隠されていた精霊樹の森を私のシステムに組み込まれて居た可能性が無いとは言い切れなかった。

(この世界に与える影響を考えると、逆に納得出来てしまうのよね……これはエリスにもっとこの森を良く見て貰う方が良いよね?)
 
「この森をこれから調査しようと思うんだけど……エリス良ければ協力して貰えないかしら?」

 実在した世界樹の森を知っているのはこの場にはエリスしか居ないのだから、この森が実際のところ何なのか知るためには、ここはエリスに協力して貰う他なかった。

「分かりました……私も知りたいと思っていたところなのでお願いします」

 力強く頷いたエリスと共に私達は、未だに手付かずだった精霊樹の森の詳細な調査に乗り出す事になったのだった。

◻ ◼ ◻

「植生を見る限り世界樹の森との違いは無いようです。……ですがこの森には精霊達の気配が全くありませんね」

 精霊樹の森は初めて踏み入った時に10メートル程度の範囲で囲われた箱庭のような場所であることは確認済みだった。だが今エリスが行っているような森に生育している植物の類いまでは調べてはいなかった。

「不思議な森です。まるで世界樹の森から精霊と私達エルフのみを取り除いて存在しているようですね……ですが小動物や小鳥……それを狙うような小さな肉食獣など、この森だけで小さな生態系が維持されているようです。それに……」

 エリスは白い霧に隠されるようにそこに存在する透明な壁を叩いた。

「この白い霧は世界樹の森の隠れ里の側の霧にとても似ています。この不思議な結界のような物は動物達には効力がないみたいですね。ほらあの小鳥を見て下さい」

 エリスの指差した先で飛び交っている小鳥達が、透明な壁の存在を無視するように霧の向こうから現れては消えを繰り返していたのだ。

「どうやらそうみたいね……という事はあの霧の向こうにうっすらと見えている森が実在している可能性はあるようね」

 もしかしたら幻か映像かもしれないと思っていた霧の向こう側の存在に私は、ゲーム的な発想でこの壁には解除条件のような物があるのではと考えていた。

(要はイベントによって解放されるようなものかな?)

 だがこの世界ではゲームでの知識はそのままでは役に立たないと思い直し反省していると――

『ビスタさん! マナが何かを見つけたようです!』セナが少し離れたところで手を振りながら【心話】で伝えてきた。

 精霊樹の森の探索は全員で来ており、危険は無さそうなので二人一組程度に別れて手分けして色々と見て廻っていたのだ。

『台座みたいなのがあるよ!』

 慌てて向かった私達は、精霊樹に囲まれて見えにくい場所にある石造りの台座を発見した。

「これマナの身長だから見つけられたんでしょうね……丁度枝葉で上の方が隠れてますから」

 セナの説明の通り台座は上手く分かりにくい場所に隠されていて、丁度マナの身長位の位置からじゃないとあると分かっていなければ見つかり難そうな場所にあった。

「マナ、ありがとうよく見つけてくれたね」

 嬉しそうなマナを誉めた後、私はふよふよと台座に近寄りその文字盤のような箇所に手を触れた。私はこの台座に見覚えが有りすぎるくらいにあった。

《この機能を解放するには[ダンジョンコア]が必要です》

 ――だが残念な事に私には心当たりの無いアイテムが必要なようだった。

「この世界にはダンジョンなんてあるのかな? なんかダンジョンコアという物が必要みたいなのよね」

 私の残念そうなその言葉に、エリスがポーチを触りだした。

「とても小さなものですが最近手に入れてポーチに入れたままになっていたものです」

 差し出した掌の上に綺麗な輝く石のような物が載っていたのだった。
 
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