転生したのはAIでした ~精霊として転生した私は《特殊スキル》システム管理AIで村の復興から始めます~

高田 祐一

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042:精霊樹の森

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「ビスタさん、目覚めたエリス様がお会いしたいと言っておられます。何かとても急いでおられるようです」

 そう言うロゼ自身も少し慌てているようだ。

「わかった、直ぐ行くね」

 エリスには、精霊シルフと間違えられた経緯があるので、何と説明しようかと悩みながら私はエリスの個室にふよふよと向かった。

「わざわざ、すいませんお呼び立てして……」

 部屋に入った私をベッドから起き上がって迎えてくれたエリスの様子はとても元気そうに見えた。

 そして、その口調からは古くからの知り合いに対する物は感じられなかったので、どうやら誤解はロゼが解いてくれたものと理解した。

「はじめまして、精霊ビスタと申します。あなたに断りもなく私の精霊の迷い家にご招待した事をお詫び致します。もし、ご希望でしたら直ぐにでも元いた場所にお返し出来ますよ?」

 私はエリスが何か口を開く前に、一気に自己紹介と簡単な状況説明を強引に行い面倒なやり取りを省略した。

「いいえ、ここに連れて来ていただいた事に何も不満はありません……逆にあの状況で倒れた私を運び、こうして介抱して頂いた事にお礼を申し上げます。ありがとうございました」

 ベッドの上でペコリと頭を下げたエリスの様子から、特に面倒な事にはならなそうだった。

「それなら良かったよ。勝手に連れて来てしまって気にしてたんだよ」

 この台詞は、本心だった。セナと今後行動を共にするだろうロゼはともかく、エリスは非常事態とはいえ本人の眠っている間に勝手にクラン入りさせてしまい気になっていたのだ。

「お陰様で久しぶりに、快適にゆっくりと休む事が出来たみたいです」

 エリスはベッドの感触が気に入ったのか撫でながらそう言った。

「この部屋はエリスの専用として私の力で用意した場所だから、もし良ければこれからも好きに使ってくれて構わないよ……実は勝手に仲間として登録のような事をしてしまってね」

 クランの除名の機能は確認した事がないが、エリスが望むのなら試みてみるつもりだった。

「いいえ、それによって何か今後の行動が拘束されるとかでなければ構いません。それよりも、私には気になる事があるのです……ビスタさんは私の知らない精霊ですよね? ということは、私の知らないような精霊樹の森をご存知なのではありませんか?」

 私はこの突然の問いかけに驚くと同時に、自分の中にあった漠然としたモヤモヤの理由に思い当たった。私には精霊樹の森に心当たりが有りすぎる位にあったのだ。

 そしてエルフであるエリスをクランに加える時は、すっかりその事を忘れていたのだが、庭に広がる精霊樹の森を初めて見た時に、「こんな謎の森をエルフとかに見せたらどう思われるだろうか?」と考えた事を思い出していた。

「エリスに見せたい物があるのです……実は私は生まれてまだ1ヶ月も経たない幼い存在なのですが、つい最近この精霊の迷い家の力に目覚めたのです。見せたい物は庭にあります、もし体調に問題がないようでしたら一緒に見に行きましょう」

 私のその説明に真剣な表情で聞き入っていたエリスが、黙って頷いたのだった。

◻ ◼ ◻

 庭に出るとマナとミーナの二人と一緒にロゼもいて、庭のお世話をしていた。

 だがエリスには他の者達が目に入らないようだった。フラフラと進み出ると目を見張り――

「転移魔法陣で飛ばされた後、一度世界樹の森に戻りました。既に魔族によって精霊樹は焼き払われ、そこには何も残っていませんでした」

 エリスは涙を流しその場に座り込んでしまつた。

「エルフのお姉ちゃんどうしたの……大丈夫?」

 マナが心配そうに呟き、ミーナと二人でエリスに寄り添っている。

「もうこの森の姿を二度と見る事は叶わないと思っていました……」

 エリスの言葉には今の世界に溢れ返っているという故郷を失った者の悲しみが溢れていたのだった。
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