転生したのはAIでした ~精霊として転生した私は《特殊スキル》システム管理AIで村の復興から始めます~

高田 祐一

文字の大きさ
上 下
38 / 105

038:自警団の戦い6

しおりを挟む
 剣で触れるだけで手が痺れるというのは、厄介な能力だった。勇者タカギが巡回警備兵という職種に採用させているのだとすれば、恐らく殺傷するほどの威力が出ないように調整されているに違いない。

 職種の名称から推測するに、逮捕、拘束が役目のような気がするので、いきなり相手を殺すような武器より特殊雷撃警棒は最適な武器になのだろう。

(さすまた、とかも導入してたりするのな? 現実にあれば拘束用として便利そうだけど)

 ゲームでもこの手の武器は、イベント用のネタ武器として配布したりしていたのだ。

 私が、そんな感想をノンビリと持っていられたのは、団長達がゼノアの言葉を警戒して睨み合いの状態に入っていたからだ。

 ゼノアの取り巻きは二人で【鑑定】の結果、元ランクDの冒険者らしい。状況は人数的にも実力的にも拮抗しているようだ。

「よお、どおしたよ、攻めてこねえのか? さっきまでの威勢は何処いっちまったんだ? 下手に麻痺すればこの武器でバッサリだもんな……わかるぜぇ」

 ゼノアは完全に挑発モードである。剣で触れただけで麻痺というのがハッタリの可能性もあったが、団長達はエリスが特殊雷撃警棒で昏倒させられる所を見ているのだ警戒するのは当然だった。

 私が状況を変えるべく動こうかと考えているその時――

「【ウィンドブレード】」

 飛び込んできたミーナがいきなり魔法をゼノアに放ち、取り巻きの一人の特殊雷撃警棒を木剣で打ち払った。

「何だと!」

 団長達を雑魚の烏合の衆と煽ってはいたが、実際はかなり団長達に意識を集中していたのだろう、小柄で素早いミーナが低姿勢の状態で接近し、いきなり魔法を放ったのだ……その結果は見事な奇襲攻撃となったようだ。

 私はゼノアと取り巻きの一人がミーナの奇襲により、厄介な特殊雷撃警棒を落としてしまったのをぼんやりと見ていた訳ではなかった。

 取り巻きが落とした特殊雷撃警棒を【収納】して、少し離れたゼノアのそれを、【ウィンドブレード】で団長の元に吹き飛ばした。

 威力の弱い私の魔法でも、この程度の嫌がらせくらいは出来るのだ。団長は素早く動き私が吹き飛ばしたそれを拾い構えた。

 私は【収納】した警棒を不自然にならないように注意しながら、私の側にいた自警団のリサの処に取り出して転がした。

 リサは奇妙な表情をしていたが、素早く拾うと団長と同じく構えた。

「やっぱり、俺達自警団の勝ちのようだな。さあどうする?」

 団長の先程と同じく強気の姿勢でそう言った。

「くそっ!」

 ゼノアは先程までの強気の姿勢が嘘のように、その場から逃げ出した。

「ぎゃあ! 痛てぇ!」

 逃げようとしたゼノアの脚にクロスボウの矢が突き立っていた。それは密かに回り込んで機会を伺っていた狩人のようなヤンの一撃だった。

「武器なんぞに頼らず、元Cランクの実力のみでまともに戦っていれば負けたのは俺の方だったかもな」

 団長はそう言うと警棒をゼノアに当て雷撃を放ったのだった。

 特殊雷撃警棒を失った取り巻きの男は、ミーナの追撃とリサの使った特殊雷撃警棒の雷撃によって皮肉にも昏倒させられた。

 残りの一人は仲間二人が倒れた事を確認すると抵抗を諦めて武器を手放したところを拘束されたのだった。

 終わってみれば随分と呆気ない幕切れだった。まさか電気を通しにくい木剣だった事がこんなところで役に立つとは思わなかった。

 雇われた者達も拘束されたようだった。自警団にも怪我人はいたようだが何れも軽症のようだ。

 少ない人数での不利な戦いだったが、皆が軽症程度で済んだのは日頃の訓練の成果と魔物との実践経験の豊富さ故だったに違いない。
 
 ミーナと揉めたダンも軽症で済んだようだ。私は皆が無事に済んだ事にホッとしていた。

 そして、団長に勝手に戦いに参加した事を叱られながらも、頭をグリグリと撫でられて気持ちよさそうにしているミーナを見つめて満足した気持ちになっていたのだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...