転生したのはAIでした ~精霊として転生した私は《特殊スキル》システム管理AIで村の復興から始めます~

高田 祐一

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033:自警団の戦い1

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「武器の準備はいいか? 捕縛用装備だぞ! おいダン! そいつはフォレストウルフの狩りに使う奴だ!」 

 自警団事務所内は俄に騒然とし始めた。私はその様子をカウンターに座りながら眺めていた。

「いいか相手は奴隷商人が最近集めている私兵だが、ほとんどが数だけの雑魚だ。何人かお抱えの奴がいるが、そいつらはリカルドかリサに任せろ。そして奴隷商人のゼノア、そいつはなかなかの手練れだ、俺が相手をする」

 団長がその名を口にした時、元から厳しかった表情が更に厳しい物になった気がした。

 団長を【鑑定】してみると赤ネームのままだった。ということはその団長でさえ厳しい表情をする相手が今回の親玉という事だ。

(影から手助けするにしても、ミーナに親玉のゼノアの相手だけはさせられないな)

 私は今回の件の手助けを行う事に決めていた。団長達の会話から権力者の話は出て来なかったし、私兵は数はいるが、お金に釣られてかき集められたような者達がほとんどのようだ。

 ミーナとセナ達が協力して何人か無力化すれば、自警団員が他の相手に向かえる事になるのだから、結果的に団長や主要メンバーへの負担を減らせるだろう。

 リサとリカルドの2人の【鑑定】を行うと、どちらも赤ネームのままだった。

(団長には悪いけどミーナが協力するとしても、お抱えの連中を無力化するまでね)

「団長、本当に奴隷商人のゼノアって野郎は自ら出て来るんでしょうか?」

 そう不安そうに問いかけたのは、ミーナに絡んであしらわれたダンだった。

「ダン、怖いのか?」

 団長の厳しかった表情が少し和らいだように見えた。

「怖くはないです……ただ人間相手っていうのが俺始めてで……正直殺れる自信がないです」

 ダンは絞り出すようにそう心情を吐露した。

「俺は怖いぜ! だがゼノアの野郎をふん縛れば、過去に捕まった者のうち何人かは解放できるかもしれない……殺る必要はねえ、逃げる奴も追うな。俺達の目的はゼノアの捕縛のみだ」

 団長の表情には決意のような強い意思が感じられた。

「うっす! 俺も全力でぶちのめします。しかし団長、奴は本当に現れるでしょうか?」

 ダンの表情にもさっきの質問の時とは違う力強さがあった。

「ああ、来るさ。今回の件の騙されそうになった情報提供者は、奇妙なメイドだったんだが……そのメイドが言うには奴が本気で狙っているのは、世界樹の森から来たというエルフらしい」

 クランルームの裏庭の周囲に広がる森の木々が精霊樹だったので、この世界にもきっと居るだろうと思っていた種族であるエルフの名が、意外なところからあがった事に私は驚かされたのだった。

◻ ◼ ◻

 私は自警団での情報収集を終えると、クランルームのミーナの個室を経由して一旦宿屋に戻った。

 検問へは宿からの方がかなり近いからだ。そこからミーナの頭に乗って検問所まで移動した。

「ミーナ、とりあえず此処までで良いから。一旦、宿に戻っていて……私は夜になるまで周囲の調査をして、扉を何処に呼び出すか考えるから」

 私はミーナを宿に返すと、ふよふよと今晩の騒動の場所になるだろう検問所の西側を見て回り、身を隠すのに最適な場所がないか確認していた。

 扉はクランメンバー以外には見えないが、出入りする瞬間を見られるのはさすがに不味いと考え、なんとか周囲から見えにくい場所を探して回った。
 
「ここら辺が良さそうだけど、自警団員もこの辺りに身を潜めそうよね……」

 情報提供者からおおよその時間と、場所が教えられていたので、自警団事務所でその情報を得た私は、先回りして確認を行っているのだ。

「都市の材木の供給所になっているから、製材小屋のような建物しかないのね、でもこういう場所だから悪事を働くには都合が良いのか」

 検問所の西側は明らかに人間の手がはいったと思われる、森林が広がっている。間伐が行われているので、放置された森とは違い採光がよく、比較的森の中の見通しも良かった。

 だがそれは昼間の間の事で、夜になれば近くまで来なければ、中で何かが行われていても気がつくのは難しいだろうと思われた。

「いくら事情があるといっても、夜中にこんな場所に来て何かあっても自業自得じゃないかと思うんだけど」

 私はぶつぶつと文句を言いながらも、なんとか目的に叶いそうな場所を見つけていた。

「少し離れているけど、ここから潜んで行けば良いかな。最初に私が周囲の安全を確認すれば良いわけだし」

 その周囲を木々に囲まれた小さな隙間に扉を呼び出した私は、真夜中までかなりあるのでクランルームに移動したのだった。
 
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