11 / 105
011:難民街2
しおりを挟む
翌朝、早くから目を覚ましたが、ミーナはまだぐっすりと眠っているようだ。
ミーナがどのような人生を送っていたのか分からないが、荷物ひとつ持たずに行き倒れるような状態だったのだ、ここまでの道程は平坦なものではなかっただろう。
「自分で起きるまで寝かせておきましょう」
時間的にも夜が明けたばかりなので、慌てる必要もなかったし宿も二泊借りているのでミーナがゆっくりするのを妨げる要素もなかった。
私は天井付近に空いた丸穴から、部屋の外に飛び出したのだった。
◻ ◼ ◻
丸穴から外に飛び出した私は、ふよふよと上空に舞い上がった。
昨日は流されるように難民街に入って幸い泊まる場所もすぐに見つかったが、この街がどのような構造になっているのか全く分かっていなかった。
空から街を見下ろすと、既に人々が動き出しているようだ。
灯りの燃料費を気にするような暮らし向きの人々は、朝早くに起き、夜は早くに就寝するのが合理的な生活リズムだろうと思われた。
この世界の照明等の事情はまだ分からないが、魔石を使った魔道具のような物が売っていたようなので思っているより文明レベルは高いのかもしれない。
「お金になりそうな物を見つけるのも大切だけど、まずミーナをもう少し育成しないと……ついでに狩った獲物が宿代になるのが理想なんだけど」
どこに落ち着くにしてもミーナには自力で窮地を切り抜けられる実力を付けて貰いたかった。
「戦闘面では私があてにならないのが残念ね。前回の戦闘では襲ってきたのが一匹だったので助かったけど、何時もあんなに都合良くはいかないでしょうね」
独り言を呟きながら、周囲を見渡すと整然としているのは中央通りの周辺だけで、少し道を外れれば道が入り組んでいて慣れなければ確実に迷ってしまいそうだ。
街は密集しているのと思った以上に広いので住んでいる人口も相当になりそうだった。
「あら、中央通りのをそのまま真っ直ぐ進むと、街の終わりからすぐに森と草原が広がってるのね……あそこなら街に近いから手頃な魔物もいるかも」
森と草原の探索はミーナが起きてから行う事に決め、私は街に暮らす人々の会話に耳を傾けるべく人々が集まりそうな場所にふよふよと向かったのだった。
◻ ◼ ◻
人にも認識されないというのは、相手と会話できない不便さはあるが情報収集という面では非常に便利だった。
宿屋のおじさんも、ミーナの頭の上に乗っているのを気がついた様子はなかった。それは街の他の人々も同じらしい。
私は気付かれないのを良いことにかなり大胆に会話する人々に接近していた。
「まったく、近頃は魔物が増えすぎて嫌になるぜ」
今は二人の男性の会話に耳を傾けている。
「ああ、畑の被害も馬鹿にならねえよ、あのウサギなんとかならねえもんかね」
「ここらも流れて来る人間の数ばかり増えて、魔物と戦えるような連中は街で冒険者になっちまう。奴等は討伐報酬の出るような狼狩りやゴブリンやオークみたいな人を襲う奴等しか相手にしねえしな……まあ壁のない場所に住んでいる俺達からすれば退治してくれるのは、有り難い事なんだけどよ」
「それなら自警団連中に頼んでみるってのはどうなんだ?」
「あいつらは街から離れられねえだろ、それに装備も貧弱だし街に籠って侵入してくる魔物を追い返すのが精々だぜ」
「ウサギの野郎は人は襲わねえが、見つけるのも難しいし人を見るとすぐに逃げやがるからな。そのくせ攻撃されると強烈な突進をかけて来やがるから、下手に手を出して怪我する奴も多いらしい。それに苦労して退治しても大銅貨二枚程度しかならねえから誰も好き好んでやらねえよ」
「害獣指定される筈だな、食べると結構旨いんだけどな」
「はは、そうだな」
この二人の会話はとても有用だった。ウサギと言えば私が転生した森で唯一狩ることが出来た魔物だった。
「思っていたより、厄介な魔物だったんだ。私の場合、警戒されないし不意討ちの魔法で倒せるから相性の問題みたいね。大銅貨二枚か……どこで買い取って貰えるんだろう……」
会話を盗み聞きできるのはとても便利だったが、質問ができないというのが欠点だった。
「宿屋のおじさんにでもミーナに聞いて貰うかな」
私は会話していた二人が立ち去るのをなんとなく見送ると、ミーナのいる宿屋に戻ったのだった。
ミーナがどのような人生を送っていたのか分からないが、荷物ひとつ持たずに行き倒れるような状態だったのだ、ここまでの道程は平坦なものではなかっただろう。
「自分で起きるまで寝かせておきましょう」
時間的にも夜が明けたばかりなので、慌てる必要もなかったし宿も二泊借りているのでミーナがゆっくりするのを妨げる要素もなかった。
私は天井付近に空いた丸穴から、部屋の外に飛び出したのだった。
◻ ◼ ◻
丸穴から外に飛び出した私は、ふよふよと上空に舞い上がった。
昨日は流されるように難民街に入って幸い泊まる場所もすぐに見つかったが、この街がどのような構造になっているのか全く分かっていなかった。
空から街を見下ろすと、既に人々が動き出しているようだ。
灯りの燃料費を気にするような暮らし向きの人々は、朝早くに起き、夜は早くに就寝するのが合理的な生活リズムだろうと思われた。
この世界の照明等の事情はまだ分からないが、魔石を使った魔道具のような物が売っていたようなので思っているより文明レベルは高いのかもしれない。
「お金になりそうな物を見つけるのも大切だけど、まずミーナをもう少し育成しないと……ついでに狩った獲物が宿代になるのが理想なんだけど」
どこに落ち着くにしてもミーナには自力で窮地を切り抜けられる実力を付けて貰いたかった。
「戦闘面では私があてにならないのが残念ね。前回の戦闘では襲ってきたのが一匹だったので助かったけど、何時もあんなに都合良くはいかないでしょうね」
独り言を呟きながら、周囲を見渡すと整然としているのは中央通りの周辺だけで、少し道を外れれば道が入り組んでいて慣れなければ確実に迷ってしまいそうだ。
街は密集しているのと思った以上に広いので住んでいる人口も相当になりそうだった。
「あら、中央通りのをそのまま真っ直ぐ進むと、街の終わりからすぐに森と草原が広がってるのね……あそこなら街に近いから手頃な魔物もいるかも」
森と草原の探索はミーナが起きてから行う事に決め、私は街に暮らす人々の会話に耳を傾けるべく人々が集まりそうな場所にふよふよと向かったのだった。
◻ ◼ ◻
人にも認識されないというのは、相手と会話できない不便さはあるが情報収集という面では非常に便利だった。
宿屋のおじさんも、ミーナの頭の上に乗っているのを気がついた様子はなかった。それは街の他の人々も同じらしい。
私は気付かれないのを良いことにかなり大胆に会話する人々に接近していた。
「まったく、近頃は魔物が増えすぎて嫌になるぜ」
今は二人の男性の会話に耳を傾けている。
「ああ、畑の被害も馬鹿にならねえよ、あのウサギなんとかならねえもんかね」
「ここらも流れて来る人間の数ばかり増えて、魔物と戦えるような連中は街で冒険者になっちまう。奴等は討伐報酬の出るような狼狩りやゴブリンやオークみたいな人を襲う奴等しか相手にしねえしな……まあ壁のない場所に住んでいる俺達からすれば退治してくれるのは、有り難い事なんだけどよ」
「それなら自警団連中に頼んでみるってのはどうなんだ?」
「あいつらは街から離れられねえだろ、それに装備も貧弱だし街に籠って侵入してくる魔物を追い返すのが精々だぜ」
「ウサギの野郎は人は襲わねえが、見つけるのも難しいし人を見るとすぐに逃げやがるからな。そのくせ攻撃されると強烈な突進をかけて来やがるから、下手に手を出して怪我する奴も多いらしい。それに苦労して退治しても大銅貨二枚程度しかならねえから誰も好き好んでやらねえよ」
「害獣指定される筈だな、食べると結構旨いんだけどな」
「はは、そうだな」
この二人の会話はとても有用だった。ウサギと言えば私が転生した森で唯一狩ることが出来た魔物だった。
「思っていたより、厄介な魔物だったんだ。私の場合、警戒されないし不意討ちの魔法で倒せるから相性の問題みたいね。大銅貨二枚か……どこで買い取って貰えるんだろう……」
会話を盗み聞きできるのはとても便利だったが、質問ができないというのが欠点だった。
「宿屋のおじさんにでもミーナに聞いて貰うかな」
私は会話していた二人が立ち去るのをなんとなく見送ると、ミーナのいる宿屋に戻ったのだった。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる