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212:タリサの提案
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僕達は明日の予定について話し合っていた。タリサが転移施設を使用できるのかという問題だった。
「ルナ達や、ラルフさんも呆気なく許可を貰えたし、大丈夫でしょ。一層の施設にいる技師長のサリナさんにでも相談してみましょう……キャロが……」
タリサは既に一つ羽の探索者らしいので、許可さえ貰えれば問題なさそうだった。そう言ったサラが会話の途中で、驚いたようにキャロの名を口にしたのだ。
「うん? キャロがどうしたの?」
僕の位置からは、キャロの姿は見えない。見えるのはサラの驚いた顔と、タリサの興味深げに見つめる様子だった。ルナは特に気にしている様子はなかった。
後ろを振り向いた僕の目に入ったのは、木製の両手剣らしきものを熱心に素振りするキャロの姿だった。
「ドルフさんに頼んで両手剣の基本的な型を教えて貰ったみたいなんです……それで最近では、暇を見つけては、あんな風に型の反復を熱心に取り組んでいるんです」
その両手木剣を振るキャロの熱心な姿を見て、僕は同じぐらいの歳に、じいちゃんから指導を受け始めた頃の事を考えていた。そしてふと疑問に思った。
「でも何で、両手剣なんだろ?」
まだ子供のキャロが、強い武器に憧れを抱く気持ちは理解できたが、色々ある武器の中から、敢えてあの武器を選んだ理由が分からなかった。
キャロくらいの子供であれば、ショートソードくらいが扱いやす手頃そうに思えた。
「実は前の戦いで、両手剣で戦うドルフさんの姿を見て、亡くなった探索者だったお母さんの事を少し思い出したみたいなんです……その思い出の中のお母さんが背負っていた武器が両手剣だったみたいで……私も商人だった父と同じ商人を目指しています。だから何となくキャロの気持ちは理解できます」
それは僕にも理解できる心情だった。僕もよくポーションを作っていた、じいちゃんの姿を覚えていて、もしルナのような水の属性適正があれば、今頃は、錬金術師として身を立てる為に努力をしていたかもしれなかった。
「へえ、あの猫獣人族の子、たいした動きだね! 才能あるんじゃない?」
素振り用の太く大きい木剣を振るキャロの姿は、なかなか堂にいったものを感じた。その姿を見てタリサが頻りと感心している。
「今すぐでも、実戦で通用しそうだね。あの年齢で木剣とはいっても重い練習用の両手剣を軽々と振り回して、基本の型をきっちりと、こなせるなんてね……あの子は探索者志望なのかい?」
タリサが隣に座ったサラに尋ねた。
「キャロと言って、私の契約者よ! なかなかのものでしょ?」
そう言いながら飛んできたシルフィーが、タリサの前で自慢そうに胸を張った。
「へえ、猫獣人族が風の精霊とね……珍しいね」
タリサが感心する事情に、僕は心当たりがあった。精霊樹に宿る風の精霊は、エルフが子供の時に、精霊樹と正式に契約の儀式を行って、加護精霊となるといった話を、マリアさんから聞いていたのだ。
「やっぱり珍しい事なんだね」
僕の相鎚にサラが、
「そうね……まったく例がないっていう訳じゃないのよ……森の精霊樹はエルフのそれぞれの一族で、決められた精霊樹と契約する事が多いのよ。たまに強い素質を持った獣人族が、見込まれて契約する事はあるみたいね」
サラが僕も知らない情報を教えてくれた。
「そうよ、キャロは、私が見込んで選んだ子なのよ! それに、既にあの年齢で一つ羽の探索者なのよ」
シルフィーはキャロが褒められて嬉しかったのかもしれない。頻りとタリサに自慢している。
「へえ~、面白いじゃないさ! なら……あたいが、あの子でも使えそうな武器を鍛えてあげようか? これでもダングル特級鍛冶師の娘だからさ、それなりの実力はあるよ!」
タリサは、そんな話が出ている事も知らずに、熱心に訓練に励むキャロを見ながら愉快そうにそう告げたのだった。
「ルナ達や、ラルフさんも呆気なく許可を貰えたし、大丈夫でしょ。一層の施設にいる技師長のサリナさんにでも相談してみましょう……キャロが……」
タリサは既に一つ羽の探索者らしいので、許可さえ貰えれば問題なさそうだった。そう言ったサラが会話の途中で、驚いたようにキャロの名を口にしたのだ。
「うん? キャロがどうしたの?」
僕の位置からは、キャロの姿は見えない。見えるのはサラの驚いた顔と、タリサの興味深げに見つめる様子だった。ルナは特に気にしている様子はなかった。
後ろを振り向いた僕の目に入ったのは、木製の両手剣らしきものを熱心に素振りするキャロの姿だった。
「ドルフさんに頼んで両手剣の基本的な型を教えて貰ったみたいなんです……それで最近では、暇を見つけては、あんな風に型の反復を熱心に取り組んでいるんです」
その両手木剣を振るキャロの熱心な姿を見て、僕は同じぐらいの歳に、じいちゃんから指導を受け始めた頃の事を考えていた。そしてふと疑問に思った。
「でも何で、両手剣なんだろ?」
まだ子供のキャロが、強い武器に憧れを抱く気持ちは理解できたが、色々ある武器の中から、敢えてあの武器を選んだ理由が分からなかった。
キャロくらいの子供であれば、ショートソードくらいが扱いやす手頃そうに思えた。
「実は前の戦いで、両手剣で戦うドルフさんの姿を見て、亡くなった探索者だったお母さんの事を少し思い出したみたいなんです……その思い出の中のお母さんが背負っていた武器が両手剣だったみたいで……私も商人だった父と同じ商人を目指しています。だから何となくキャロの気持ちは理解できます」
それは僕にも理解できる心情だった。僕もよくポーションを作っていた、じいちゃんの姿を覚えていて、もしルナのような水の属性適正があれば、今頃は、錬金術師として身を立てる為に努力をしていたかもしれなかった。
「へえ、あの猫獣人族の子、たいした動きだね! 才能あるんじゃない?」
素振り用の太く大きい木剣を振るキャロの姿は、なかなか堂にいったものを感じた。その姿を見てタリサが頻りと感心している。
「今すぐでも、実戦で通用しそうだね。あの年齢で木剣とはいっても重い練習用の両手剣を軽々と振り回して、基本の型をきっちりと、こなせるなんてね……あの子は探索者志望なのかい?」
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「キャロと言って、私の契約者よ! なかなかのものでしょ?」
そう言いながら飛んできたシルフィーが、タリサの前で自慢そうに胸を張った。
「へえ、猫獣人族が風の精霊とね……珍しいね」
タリサが感心する事情に、僕は心当たりがあった。精霊樹に宿る風の精霊は、エルフが子供の時に、精霊樹と正式に契約の儀式を行って、加護精霊となるといった話を、マリアさんから聞いていたのだ。
「やっぱり珍しい事なんだね」
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サラが僕も知らない情報を教えてくれた。
「そうよ、キャロは、私が見込んで選んだ子なのよ! それに、既にあの年齢で一つ羽の探索者なのよ」
シルフィーはキャロが褒められて嬉しかったのかもしれない。頻りとタリサに自慢している。
「へえ~、面白いじゃないさ! なら……あたいが、あの子でも使えそうな武器を鍛えてあげようか? これでもダングル特級鍛冶師の娘だからさ、それなりの実力はあるよ!」
タリサは、そんな話が出ている事も知らずに、熱心に訓練に励むキャロを見ながら愉快そうにそう告げたのだった。
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