210 / 213
210:タリサ
しおりを挟む
兄妹喧嘩といっても、元気な妹が一方的に兄を責め立てているようにしか見えなかった。
ダリルさんの妹という事だと、少女もハーフドワーフなのだろうか? 赤銅色の髪に綺麗に日焼けした顔の勝ち気そうな少女だった。
それだけなら普通にいる12歳くらいの少女にしか思えなかったが、恐らく黒魔鉄鉱製と思われる、下がスカート状になったハーフプレートメイルを装備し、背中に自分の身体程もありそうな、巨大な黒いハンマーを背負っている。
彼女の装備が、その少女が尋常な存在でない事を証明しているかのようだった。
(あんな物を平気そうに常時装備しているなんて、普通の子供のパワーじゃないな……)
魔素を吸収して成長しても、基本的な身体能力の差は大きかった。本来の基礎体力を越える部分を魔力循環で補っていると、魔素の保持量に応じて何れ限界がくるのだ。
つまりは、見た目は幼く見えても、彼女は普通の人種の少女とは違うと云うことだった。
「タリサ……貴女、本国での鍛冶師としての修行に励んでるんじゃなかったかしら? もしかして修行が辛くて逃げてきたの?」
サラの遠慮のない口振りから、結構親しい間柄なのかなと思った。その程度は分かるくらいには、僕もサラとの付き合いはあった。
「あら~、ダングル特級鍛冶師殿の修行は厳しそうよね。タリサちゃんが逃げ出したとしても無理ないわあ~」
フィーネがクスクスと笑いながら口を押さえて笑う仕草をして見せた。隣にいたニースも、口に手をあてフィーネの笑う真似をしている。恐らく意味も分からず仕草を真似しているだけなのだろう。
(ニースに悪影響が……)
「相変わらずのお喋り精霊だな! あたいは、逃げ出したりしてないよ。ちゃんと親父にも許可は取ったさ!」
何も恥じるところはないとでも云うように、少女は胸を張った。彼女の年齢は分からなかったが、その仕草から見て、見た目に近い幼さなのかもしれなかった。
(でも、年齢は聞かないけどね……)
僕は一人で頷いていた。
「……ところで、そこにいるあんた、初めて見る顔だけどお客さんかい?」
僕が一人で頷いているのを見咎められてしまったようだった。正直、ちょっと面倒そうな少女だったので、皆の会話が終わるのを待ってメンテナンスを頼む装備を渡すか、今日のところは遠慮して帰ろうかと思っていたのだ。
サラが入っていかなければ、僕一人だったら遠慮して今頃、帰っていただろう。
「ええ、そうなんですけど、お取り込み中みたいなので、また来ます」
僕がそう言って、帰ろうとすると、「おう、ユーリ! 装備でも壊れたのか? 見てやるからこっちに来い!」と、ダリルさんに睨まれた。その目は明らかに、帰るんじゃねえと、訴えかけていた。
「あら、ユーリ、紹介もしないで悪かったわね……彼女は、私がエルフィーデの訓練所に居たときの同期で、名前をタリサって言うの。どうやらここのダリルさんの妹みたいね。私も知らなかったんで驚いてる所よ」
サラは、そう僕にタリサを紹介すると、今度は僕の事を紹介するつもりらしい。
「それで、こちらはユーリ。この街の探索者で召喚精霊術師ね……そして、まあ……私の相棒のようなものね」
最後の相棒というところを、少し恥ずかしそうに告げた。
「あんたも探索者なのか! なら二人に、相談に乗って貰いたい事があるんだ! 何処かでゆっくりと話せないか?」
と、凄い勢いで詰め寄られた。……やはりややこしい事からは、逃れられない運命のようだった。
ダリルさんの妹という事だと、少女もハーフドワーフなのだろうか? 赤銅色の髪に綺麗に日焼けした顔の勝ち気そうな少女だった。
それだけなら普通にいる12歳くらいの少女にしか思えなかったが、恐らく黒魔鉄鉱製と思われる、下がスカート状になったハーフプレートメイルを装備し、背中に自分の身体程もありそうな、巨大な黒いハンマーを背負っている。
彼女の装備が、その少女が尋常な存在でない事を証明しているかのようだった。
(あんな物を平気そうに常時装備しているなんて、普通の子供のパワーじゃないな……)
魔素を吸収して成長しても、基本的な身体能力の差は大きかった。本来の基礎体力を越える部分を魔力循環で補っていると、魔素の保持量に応じて何れ限界がくるのだ。
つまりは、見た目は幼く見えても、彼女は普通の人種の少女とは違うと云うことだった。
「タリサ……貴女、本国での鍛冶師としての修行に励んでるんじゃなかったかしら? もしかして修行が辛くて逃げてきたの?」
サラの遠慮のない口振りから、結構親しい間柄なのかなと思った。その程度は分かるくらいには、僕もサラとの付き合いはあった。
「あら~、ダングル特級鍛冶師殿の修行は厳しそうよね。タリサちゃんが逃げ出したとしても無理ないわあ~」
フィーネがクスクスと笑いながら口を押さえて笑う仕草をして見せた。隣にいたニースも、口に手をあてフィーネの笑う真似をしている。恐らく意味も分からず仕草を真似しているだけなのだろう。
(ニースに悪影響が……)
「相変わらずのお喋り精霊だな! あたいは、逃げ出したりしてないよ。ちゃんと親父にも許可は取ったさ!」
何も恥じるところはないとでも云うように、少女は胸を張った。彼女の年齢は分からなかったが、その仕草から見て、見た目に近い幼さなのかもしれなかった。
(でも、年齢は聞かないけどね……)
僕は一人で頷いていた。
「……ところで、そこにいるあんた、初めて見る顔だけどお客さんかい?」
僕が一人で頷いているのを見咎められてしまったようだった。正直、ちょっと面倒そうな少女だったので、皆の会話が終わるのを待ってメンテナンスを頼む装備を渡すか、今日のところは遠慮して帰ろうかと思っていたのだ。
サラが入っていかなければ、僕一人だったら遠慮して今頃、帰っていただろう。
「ええ、そうなんですけど、お取り込み中みたいなので、また来ます」
僕がそう言って、帰ろうとすると、「おう、ユーリ! 装備でも壊れたのか? 見てやるからこっちに来い!」と、ダリルさんに睨まれた。その目は明らかに、帰るんじゃねえと、訴えかけていた。
「あら、ユーリ、紹介もしないで悪かったわね……彼女は、私がエルフィーデの訓練所に居たときの同期で、名前をタリサって言うの。どうやらここのダリルさんの妹みたいね。私も知らなかったんで驚いてる所よ」
サラは、そう僕にタリサを紹介すると、今度は僕の事を紹介するつもりらしい。
「それで、こちらはユーリ。この街の探索者で召喚精霊術師ね……そして、まあ……私の相棒のようなものね」
最後の相棒というところを、少し恥ずかしそうに告げた。
「あんたも探索者なのか! なら二人に、相談に乗って貰いたい事があるんだ! 何処かでゆっくりと話せないか?」
と、凄い勢いで詰め寄られた。……やはりややこしい事からは、逃れられない運命のようだった。
0
お気に入りに追加
311
あなたにおすすめの小説

ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
Bランクダンジョンがある町に住む主人公のカナンは、茶色い髪の二十歳の男冒険者だ。地属性の魔法を使い、剣でモンスターと戦う。冒険者になって二年の月日が過ぎたが、階級はA〜Fまである階級の中で、下から二番目のEランクだ。
カナンにはAランク冒険者の姉がいて、姉から貰った剣と冒険者手帳の知識を他の冒険者達に自慢していた。当然、姉の七光りで口だけのカナンは、冒険者達に徐々に嫌われるようになった。そして、一年半をかけて完全孤立状態を完成させた。
それから約半年後のある日、別の町にいる姉から孤児の少女を引き取って欲しいと手紙が送られてきた。その時のカナンはダンジョンにも入らずに、自宅に引きこもっていた。当然、やって来た少女を家から追い出すと決めた。
けれども、やって来た少女に冒険者の才能を見つけると、カナンはダンジョンに行く事を決意した。少女に短剣を持たせると、地下一階から再スタートを始めた。
コーデリア魔法研究所
tiroro
ファンタジー
孤児院を出て、一人暮らしを始めた15歳の少女ミア。
新たな生活に胸を躍らせる中、偶然出会った魔導士に助けられ、なりゆきで魔法研究所で働くことになる。
未知の世界で魔法と向き合いながら、自分の力で未来を切り拓こうと決意するミアの物語が、ここから始まる。
追放されたけどFIREを目指して準備していたので問題はない
君山洋太朗
ファンタジー
異世界のヨーロッパ風国家「グランゼリア王国」を舞台にした合理主義冒険ファンタジー。
主人公レオン・クラウゼンは、冷静な判断と効率重視の性格を持つ冒険者。彼の能力「価値転換(バリュー・シフト)」は物や素材の価値を再構築するもので、戦闘向きではないが経済的な可能性を秘めている。パーティーから追放されたレオンは、自身の能力を活かし「FIRE(経済的自立と早期退職)」を目指す人生設計を実行に移す。
彼が一人で挑むのは、廃鉱での素材収集、不動産投資、商業ネットワークの構築といった経済活動。次々と成功を収める一方で、魔獣の襲撃や元パーティーとの因縁など、様々な試練が彼を待ち受けることになる。
「戦わずして生き抜く」レオンが描く、冒険者とは一線を画す合理主義の物語。追放を前向きに捉え、自らの手で自由を掴む彼の成長と活躍をお楽しみに!
この作品は「カクヨム」様にも掲載しています。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる