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209:ラルフさんの意見
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一層に戻った僕とサラは、ラルフさんの姿を探しながら草原を歩いていた。
上空にはルピナスに乗ったニースが楽しそうに旋回を繰り返しながら飛び交っており、僕達が歩く前方には並んで歩くディーネと子狼の浮遊精霊のフェルトの姿があった。
「お帰りなさい!」
子供達が手を振っているのが見えた。僕が初めてレッサーラビットと戦った木の木陰で、ラルフさんと子供達が休んでいる姿が見えた。
「ユーリさん、お戻りでしたか。随分早かったですね」
そう言ったラルフさんの後ろには、レッサーラビットが血抜きの為に吊るされていた。ディーネに手伝って貰おうかとも考えたがやめておいた。
急いでいる訳でもなかったし、僕の精霊達は、孤児院の子供達と一緒にフェルトを追いかけて遊んでいる。
僕はラルフさんに、リサさんから貰った地図を見せて意見を貰う事にした。
「なるほど……この地図は遠征時に用いられた、なるべく迅速に敵との会敵が少ない道程を記した物ですね」
「つまりは探索者用としては情報が不足しているという事ですか?」
強くなる為には敵と戦わなければならない。確かによく見ると、ルート以外の部分の魔物の情報は記されておらず、詳細に見えた地図もある意味、簡略化された物だと分かった。
「16層以降は私も、未到達なのではっきりとした事は言えませんが……この地図をユーリさんに渡した意図は、さっさと十層帯を抜けて二十層に到達せよという事でしょうね。そして、私もその意見に賛成です。少なくとも16層まではこのルートに沿って進まれる事をお勧めします」
ラルフさんは、詳細に地図を確認した後も意見を変えなかった。
「魔人騒動でゴブリンジェネラルの魔素を吸収した時に感じました。あの時点の私であれば単独でも16層を越えられるとね。もちろんお二人であれば問題ありません。そうですね……少しでも色々な種類の魔物との戦いをお望みでしょうから、この地図に記載されているポイントで狩りをされる事をお勧めしますね」
「自力でダンジョンを走破する必要性の話をした後で、こんな便利な地図を貰って良かったのかしら?」
サラが地図を覗き込みながら、眉を寄せて考え込んだ。
「そうですね……一つ私から言える事は、弱い魔物といくら戦っても強くはなれないという事ですかね」
ラルフさんが楽しそうに、そう答えたのだった。
◻ ◼ ◻
時間がまだ早かったので、僕は猪鹿亭には戻らず、ダリル鍛冶屋に寄る事にした。
新たな装備を得て、今までお世話になったセダさん達に借り受けていた装備をようやく返すことが出来るのだ。
ここまでやってこれた、この装備一式を返すにあたり、せめてメンテナンスをして綺麗な状態で三人に返したいと思ってダリル鍛冶屋を訪ねたのだった。
「だから~、兄ぃ! この街は長いんだろ? 試練越える間だけでもいいんだよ! どっか、もぐり込めそうなクランを知らねえのか?」
ダリル鍛冶屋の前に到着した、僕達の耳に飛び込んできたのは、威勢の良さそうな少女らしい人物の声だった。
「俺はここでは細々とやってるから、そんな階層攻略をするような大規模クランに伝なんかねえよ! 作業の邪魔だ!」
恐らく作業中に声をかけられ煩わしいのだろう。槌を使う音が、若干激しいように感じたのは、気のせいではなかっただろう。
「何だよう……怒ってんのか? 細々って……生活できてんのか? 母ちゃんが心配してたぞ……作業手伝おうか?」
何だか急に大人しくなったので、サラがさっさと中に入っていった。
「あっ! サラじゃねえか? そうだ! 確か査察団についてったよな? あたいもなんとかダンジョンに連れてってもらえない?」
どうやら中にいる少女は、サラの知り合いのようだった。
上空にはルピナスに乗ったニースが楽しそうに旋回を繰り返しながら飛び交っており、僕達が歩く前方には並んで歩くディーネと子狼の浮遊精霊のフェルトの姿があった。
「お帰りなさい!」
子供達が手を振っているのが見えた。僕が初めてレッサーラビットと戦った木の木陰で、ラルフさんと子供達が休んでいる姿が見えた。
「ユーリさん、お戻りでしたか。随分早かったですね」
そう言ったラルフさんの後ろには、レッサーラビットが血抜きの為に吊るされていた。ディーネに手伝って貰おうかとも考えたがやめておいた。
急いでいる訳でもなかったし、僕の精霊達は、孤児院の子供達と一緒にフェルトを追いかけて遊んでいる。
僕はラルフさんに、リサさんから貰った地図を見せて意見を貰う事にした。
「なるほど……この地図は遠征時に用いられた、なるべく迅速に敵との会敵が少ない道程を記した物ですね」
「つまりは探索者用としては情報が不足しているという事ですか?」
強くなる為には敵と戦わなければならない。確かによく見ると、ルート以外の部分の魔物の情報は記されておらず、詳細に見えた地図もある意味、簡略化された物だと分かった。
「16層以降は私も、未到達なのではっきりとした事は言えませんが……この地図をユーリさんに渡した意図は、さっさと十層帯を抜けて二十層に到達せよという事でしょうね。そして、私もその意見に賛成です。少なくとも16層まではこのルートに沿って進まれる事をお勧めします」
ラルフさんは、詳細に地図を確認した後も意見を変えなかった。
「魔人騒動でゴブリンジェネラルの魔素を吸収した時に感じました。あの時点の私であれば単独でも16層を越えられるとね。もちろんお二人であれば問題ありません。そうですね……少しでも色々な種類の魔物との戦いをお望みでしょうから、この地図に記載されているポイントで狩りをされる事をお勧めしますね」
「自力でダンジョンを走破する必要性の話をした後で、こんな便利な地図を貰って良かったのかしら?」
サラが地図を覗き込みながら、眉を寄せて考え込んだ。
「そうですね……一つ私から言える事は、弱い魔物といくら戦っても強くはなれないという事ですかね」
ラルフさんが楽しそうに、そう答えたのだった。
◻ ◼ ◻
時間がまだ早かったので、僕は猪鹿亭には戻らず、ダリル鍛冶屋に寄る事にした。
新たな装備を得て、今までお世話になったセダさん達に借り受けていた装備をようやく返すことが出来るのだ。
ここまでやってこれた、この装備一式を返すにあたり、せめてメンテナンスをして綺麗な状態で三人に返したいと思ってダリル鍛冶屋を訪ねたのだった。
「だから~、兄ぃ! この街は長いんだろ? 試練越える間だけでもいいんだよ! どっか、もぐり込めそうなクランを知らねえのか?」
ダリル鍛冶屋の前に到着した、僕達の耳に飛び込んできたのは、威勢の良さそうな少女らしい人物の声だった。
「俺はここでは細々とやってるから、そんな階層攻略をするような大規模クランに伝なんかねえよ! 作業の邪魔だ!」
恐らく作業中に声をかけられ煩わしいのだろう。槌を使う音が、若干激しいように感じたのは、気のせいではなかっただろう。
「何だよう……怒ってんのか? 細々って……生活できてんのか? 母ちゃんが心配してたぞ……作業手伝おうか?」
何だか急に大人しくなったので、サラがさっさと中に入っていった。
「あっ! サラじゃねえか? そうだ! 確か査察団についてったよな? あたいもなんとかダンジョンに連れてってもらえない?」
どうやら中にいる少女は、サラの知り合いのようだった。
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