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196:下級魔人3
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魔人の構えた剣に再び膨大な黒い魔力が集まるのが見えた。
「皆の者、包囲をとけ、戦うのはワシ一人だ。ユーリと申したな皆の代わりをせよ」
ダスティン辺境伯は大声で周囲に展開するガザフの騎士に指示を出すと、僕に向かってそう命じた。
「閣下それでは! 我等にもせめて閣下を御守りする盾としての役目を……」
リガル部隊長がそう叫んで懇願した。
「リガルよ……ワシは若き日より戦場を駆け、戦友と共に肩を並べてここまでやって来た男だ。既にガザフの実権は息子に引き続き引退した身だ、この上は昔日に戻って後の者の為に剣を振るうのみ……ワシを守る為の盾は不用だ!」
そう言い放つと、魔人より放たれた黒い【風刃】を一刀のもとに切って捨てた。
僕には、ダスティン辺境伯のミスリルブレードが一瞬、白と赤の混じったような輝きを放ち、黒い闇を打ち払ったように見えた。
「あれって【雷炎】を瞬間的に発動してるのよね?……戦いには強い武器が必要だと思っていたけど……もし、私がミスリルの武器を持っていたとしても使いきれる自信がないわ……黒魔剣も使いきっていると言えないけど」
僕が【ストーンウォール】で戦場を囲い始めてからも、サラは僕を守る為に側に居てくれた。
「あらあ~、サラにも以前ミリア様の仰ってた強い武器を使うにもそれに見合う技量が必要だという意味がやっと分かったのかしら~」
同じくサラと共に僕の守りについてくれているフィーネが、サラをからかうように周囲をふよふよと飛び交っている。
「うるさい! フィーネ、分かってるわよ……今、凄く実感してるところよ」
相変わらず喧嘩しているようだが、フィーネがサラを常に気遣っているのがよくわかるので、寧ろ見慣れたこの光景に癒される思いだった。
「ピピッ」
さっきニースを乗せて待避したルピナスが戻ってきて、ニースが僕の作業を手伝い始めた。
ダスティン辺境伯と魔人の戦闘は、魔人の力押しのような黒い【風刃】による攻撃の嵐が暫く続いた後、膝を突いたのは魔人の方だった。
ダスティン辺境伯は最小限の剣の斬撃で降り注いだ、黒い【風刃】の連続攻撃を全て防ぎきった。
それのみでなく、魔人の身体はダスティン辺境伯の放った斬撃により既に大量の傷を負っていたのだ。
盾は不用と言い切った剣一本での攻防の技量は凄まじかった。黒い【風刃】から身を守るだけではなく、同時に【雷炎】の斬撃を放ってもいたのだろう。
魔人の全身から黒い魔素が吹き出している。修復が間に合わないほどの数の斬撃を受けていたようだ。
『どうやら進化に失敗した段階で、私の敗北は確定していたようだ……まさかこの技を使う事になるとはな……だが貴様は生かしておけないと判断した』
魔人は持っていた魔人剣を黒い魔素の霧に包み込むと上空に高々と放った。
『魔人剣に過剰な魔素を注ぎ込めばどうなるか知っているかね? 壊れる瞬間に吹き出した黒炎により周囲一帯で生き残れる者はいないでしょう……もちろん私とて例外ではありませんが』
何処か嗜虐な表情の魔人の全身から吹き出した魔素が吸い寄せられるように上空に立ち昇っていく。
「【ファイアストーム】」
後方で待機していたミゼル子爵が放った炎の魔法が魔人の周囲を包み込んだ。
「【雷炎】」
ダスティン辺境伯も同じく斬撃を放った。即興的な複合魔法だったが、魔人に到達した瞬間、見事に爆炎となって弾けた。
「放て!」
リサさんの号令が響き、魔法の矢が上空の魔人剣のある辺りに次々と突き刺さった。
『無駄ですよ、魔人の全てを注いだ魔素の奔流ですからね。いかに複合魔法とて全てを吹き飛ばす事は出来ませんよ。無駄な事はせず逃げた方が賢いのでは? まあ間に合わないかもしれませんがね』
複合魔法の爆炎によって一時は奔流が止まったように見えたが、その効果が消えた後には、先ほどと変わらずの魔人の姿があった。
「上空への攻撃も威力が足りないみたいね……黒い奔流が邪魔をして剣までとても届かない……不味いわね」サラが悔しそうにそう呟いた。
その時、トコトコと魔人の元に寄っていく幼い者の姿が見えた。その小さな精霊は「【マナ・ドレイン】」と言うと魔人から漂う魔素の奔流を吸収し始めた。
その精霊ディーネの魔人の黒い魔素の奔流に押し当てた手には精霊石が握られていて、その奔流から大量の魔素を吸収し始めた。
『おい、小娘! その魔素は我の復活の贄となるものだ横取りするでない』
同じく奔流から魔素を奪い始めたのは、ラルフさんの姿をした闇夜の精霊だった。
『闇夜の精霊、この期に及んでも魔素に対するその執着、見苦しい限りですね。その幼い精霊の意図は分かりかねますが、無駄な時間稼ぎは人間達の為ですか? それとも黒炎から自分達は無事に助かる手段でもお持ちでしょうか?』
精霊達によって奔流は明らかに勢いを失っている。それだけ吸収量が多いのだろう。
好機と見たエルフ達から魔法の矢が放たれたが、やはり効果は無かった。
「ミリア様のミスリルボウでの攻撃でも効果が無いなんて」
サラも黒魔弓を取りだし攻撃に参加しているが、思ったような結果が得られていなかった。
『さあそろそろ……何ですがそれは……水魔複合の魔法の矢ですと⁉』
それまで余裕のあった魔人の声から明らかな動揺が見られた。その驚愕の目はディーネの構えた魔法の矢に注がれていた。
「【ドレイン・スプラッシュ】」
尚も奔流から魔素を奪いながら形成された魔法の矢を構えたディーネから、膨大な魔力を孕んだ魔法の矢が真っ直ぐ魔人の剣に向かって放たれたのだった。
「皆の者、包囲をとけ、戦うのはワシ一人だ。ユーリと申したな皆の代わりをせよ」
ダスティン辺境伯は大声で周囲に展開するガザフの騎士に指示を出すと、僕に向かってそう命じた。
「閣下それでは! 我等にもせめて閣下を御守りする盾としての役目を……」
リガル部隊長がそう叫んで懇願した。
「リガルよ……ワシは若き日より戦場を駆け、戦友と共に肩を並べてここまでやって来た男だ。既にガザフの実権は息子に引き続き引退した身だ、この上は昔日に戻って後の者の為に剣を振るうのみ……ワシを守る為の盾は不用だ!」
そう言い放つと、魔人より放たれた黒い【風刃】を一刀のもとに切って捨てた。
僕には、ダスティン辺境伯のミスリルブレードが一瞬、白と赤の混じったような輝きを放ち、黒い闇を打ち払ったように見えた。
「あれって【雷炎】を瞬間的に発動してるのよね?……戦いには強い武器が必要だと思っていたけど……もし、私がミスリルの武器を持っていたとしても使いきれる自信がないわ……黒魔剣も使いきっていると言えないけど」
僕が【ストーンウォール】で戦場を囲い始めてからも、サラは僕を守る為に側に居てくれた。
「あらあ~、サラにも以前ミリア様の仰ってた強い武器を使うにもそれに見合う技量が必要だという意味がやっと分かったのかしら~」
同じくサラと共に僕の守りについてくれているフィーネが、サラをからかうように周囲をふよふよと飛び交っている。
「うるさい! フィーネ、分かってるわよ……今、凄く実感してるところよ」
相変わらず喧嘩しているようだが、フィーネがサラを常に気遣っているのがよくわかるので、寧ろ見慣れたこの光景に癒される思いだった。
「ピピッ」
さっきニースを乗せて待避したルピナスが戻ってきて、ニースが僕の作業を手伝い始めた。
ダスティン辺境伯と魔人の戦闘は、魔人の力押しのような黒い【風刃】による攻撃の嵐が暫く続いた後、膝を突いたのは魔人の方だった。
ダスティン辺境伯は最小限の剣の斬撃で降り注いだ、黒い【風刃】の連続攻撃を全て防ぎきった。
それのみでなく、魔人の身体はダスティン辺境伯の放った斬撃により既に大量の傷を負っていたのだ。
盾は不用と言い切った剣一本での攻防の技量は凄まじかった。黒い【風刃】から身を守るだけではなく、同時に【雷炎】の斬撃を放ってもいたのだろう。
魔人の全身から黒い魔素が吹き出している。修復が間に合わないほどの数の斬撃を受けていたようだ。
『どうやら進化に失敗した段階で、私の敗北は確定していたようだ……まさかこの技を使う事になるとはな……だが貴様は生かしておけないと判断した』
魔人は持っていた魔人剣を黒い魔素の霧に包み込むと上空に高々と放った。
『魔人剣に過剰な魔素を注ぎ込めばどうなるか知っているかね? 壊れる瞬間に吹き出した黒炎により周囲一帯で生き残れる者はいないでしょう……もちろん私とて例外ではありませんが』
何処か嗜虐な表情の魔人の全身から吹き出した魔素が吸い寄せられるように上空に立ち昇っていく。
「【ファイアストーム】」
後方で待機していたミゼル子爵が放った炎の魔法が魔人の周囲を包み込んだ。
「【雷炎】」
ダスティン辺境伯も同じく斬撃を放った。即興的な複合魔法だったが、魔人に到達した瞬間、見事に爆炎となって弾けた。
「放て!」
リサさんの号令が響き、魔法の矢が上空の魔人剣のある辺りに次々と突き刺さった。
『無駄ですよ、魔人の全てを注いだ魔素の奔流ですからね。いかに複合魔法とて全てを吹き飛ばす事は出来ませんよ。無駄な事はせず逃げた方が賢いのでは? まあ間に合わないかもしれませんがね』
複合魔法の爆炎によって一時は奔流が止まったように見えたが、その効果が消えた後には、先ほどと変わらずの魔人の姿があった。
「上空への攻撃も威力が足りないみたいね……黒い奔流が邪魔をして剣までとても届かない……不味いわね」サラが悔しそうにそう呟いた。
その時、トコトコと魔人の元に寄っていく幼い者の姿が見えた。その小さな精霊は「【マナ・ドレイン】」と言うと魔人から漂う魔素の奔流を吸収し始めた。
その精霊ディーネの魔人の黒い魔素の奔流に押し当てた手には精霊石が握られていて、その奔流から大量の魔素を吸収し始めた。
『おい、小娘! その魔素は我の復活の贄となるものだ横取りするでない』
同じく奔流から魔素を奪い始めたのは、ラルフさんの姿をした闇夜の精霊だった。
『闇夜の精霊、この期に及んでも魔素に対するその執着、見苦しい限りですね。その幼い精霊の意図は分かりかねますが、無駄な時間稼ぎは人間達の為ですか? それとも黒炎から自分達は無事に助かる手段でもお持ちでしょうか?』
精霊達によって奔流は明らかに勢いを失っている。それだけ吸収量が多いのだろう。
好機と見たエルフ達から魔法の矢が放たれたが、やはり効果は無かった。
「ミリア様のミスリルボウでの攻撃でも効果が無いなんて」
サラも黒魔弓を取りだし攻撃に参加しているが、思ったような結果が得られていなかった。
『さあそろそろ……何ですがそれは……水魔複合の魔法の矢ですと⁉』
それまで余裕のあった魔人の声から明らかな動揺が見られた。その驚愕の目はディーネの構えた魔法の矢に注がれていた。
「【ドレイン・スプラッシュ】」
尚も奔流から魔素を奪いながら形成された魔法の矢を構えたディーネから、膨大な魔力を孕んだ魔法の矢が真っ直ぐ魔人の剣に向かって放たれたのだった。
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