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194:下級魔人1
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駿足の踏み込みで距離を詰めたニールセン老騎士は、黒い両手剣を振りかぶり魔人に降り下ろした。
「ほー、ワシの降り下ろしをこんなに簡単にしかも片手持ちで止めて、しかも刃こぼれひとつせんか……この両手剣の強化魔法はこの剣の限界強度いっぱいなんじゃがのう……次いくぞい」
そういうと素早く回転して両手剣を横薙ぎに振るった。
「なるほど、少なくとも地竜よりは丈夫みたいじゃな」
ニールセン老騎士の降り下ろしを右手に持った魔人剣で受け止め、身体の回転を利用した横薙ぎの一閃をその黒い鱗に覆われた左腕で受け止めた。
『なるほどなかなかの威力だ、腕の半分まで到達したか……やはり人間は侮れんな』
そう言うと今度はお返しとばかりにニールセン老騎士に向かって魔人剣を振るった。
それから両者の打ち合いは続いた。巨大な大剣での技の応酬は凄まじく、周囲にいる騎士達も義勇軍の者も加勢する事が出来なかった。
(僕なんかが下手に踏み込んだらどちらかの剣にやられそうだった)
それはガザフの騎士達も同じらしく固唾を飲んで見守っている様子からもその事が分かった。
「あんな戦いに加勢出来るとしたら、派遣されてきたエルフィーデの戦士の中でもミリア様かリサ姉さんか後は……ナザリー副長くらいかしら……エミリさんも気が弱いけど意外といけそうかな……」
僕の側に来たサラが食い入るように戦いを見守っている。
(エミリさんと言えば最初の防衛戦でリサさんの撤退命令のきっかけとなる意見を言った人だよね、あのエルフさん幼そうに見えたけど強かったんだね……)
「あら~、でもあそこの義勇軍のご老体達はサラみたいな気弱な様子じゃないようよ~」
寄ってきたフィーネが指し示す先では――
「ニールセン、そろそろワシと代われ! 足元がふらついておるぞ、無理をするな! ワシの両手槍の出番じゃ」
「いかんぞ! ワシの両手斧が動き出しそうじゃ! このままでは大変な事になってしまうわい」
義勇軍の老騎士達が一人戦うニールセン老騎士に向かって頻りに声援を送っていた。
(あれは声援だよね⁉)
「やれやれ年は取りたくないもんじゃわい、魔人よワシがもうちっと若い時に出てきて欲しかったのう」
魔人から距離を取ったニールセン老騎士は片膝を突き胸を押さえている。彼の黒い鎧は黒魔鉄製のハーフメイルだったが、その防具が陥没していた。
『人間、お前は人間で言うところの老成体という状態にあるな……技の技量は見事だが、人間としての全盛期は過ぎているようだな。確かにお前が全盛期の頃であれば、次撃の段階で腕が飛んでいたであろうな。では去らばだ』
魔人はそう言うと持っていた大剣に力を込めた。
「魔法剣⁉ 不味い!」
僕は咄嗟に飛び出し、土壁を使おうとしたが距離が遠くて間に合いそうになかった。
魔人の持つ大剣から黒い【風刃】のようなものが放たれた。
「【ストーンウォール】」
上空から可愛い声が響きニールセン老騎士の前に土壁が生まれた。上空にはルピナスに乗ったニースの姿が見えたが、ルピナスは「ピピッ」と一声泣くとニースを乗せて逃げて行った。
黒い【風刃】はニースの生んだ土壁に到達し、轟音が起こった。
「土壁が……」
ニースの土壁は黒い【風刃】の一撃を防いでくれたが轟音と共に崩れ去った。
僕とサラそしてゼダさん達が、ニールセン老騎士の元に到達し、僕はすぐさま土壁を生み出し、サラとフィーネが【ウィンドウォール】を重ねがけしてくれた。
ゼダさん達に担がれるようにしてニールセン老騎士が後方に下がって行った。
その僕の目に義勇軍の老騎士達が、魔人に殺到する姿が写った。
『どうやら、お前達人間は衰退期にあるようだな。この状況において向かって来るのが老成体ばかりとはな……』
魔人のその言葉に――
「何、寝ぼけた事を言ってやがる! 俺達人間は死ぬ順番が決まっているってのよ! 若けえ奴等が順番を抜かそうとした時にや嫌味ったらしく順番を守れと怒鳴りつけるのが、嫌なじじいの役割よ!」
義勇軍の老騎士の一人が、そう魔人に叫んだ。
「俺は良いじじいだから、可愛い孫が悲しむかもな」
「だが女房は俺がくたばれば、さぞせいせいするだろうよ!」
「ちげえねえ」
義勇軍の老騎士達は、そう口々に言うと魔人に向かって各々の得意武器を振るった。
『そうか、ならば先に逝くのだな』
魔人はそう言うと大剣に力を込め始めた。
「あら、エルフは長生きだから人間の順番なんて守らないわね」
そう言って突然、現れたミリアさんが、ミスリルの片手剣を振るった。
「【風切斬一閃:斬舞】」
ミリアさんの放った複数の斬撃が、魔人の持つ大剣を右手ごと切り飛ばしたのだった。
「ほー、ワシの降り下ろしをこんなに簡単にしかも片手持ちで止めて、しかも刃こぼれひとつせんか……この両手剣の強化魔法はこの剣の限界強度いっぱいなんじゃがのう……次いくぞい」
そういうと素早く回転して両手剣を横薙ぎに振るった。
「なるほど、少なくとも地竜よりは丈夫みたいじゃな」
ニールセン老騎士の降り下ろしを右手に持った魔人剣で受け止め、身体の回転を利用した横薙ぎの一閃をその黒い鱗に覆われた左腕で受け止めた。
『なるほどなかなかの威力だ、腕の半分まで到達したか……やはり人間は侮れんな』
そう言うと今度はお返しとばかりにニールセン老騎士に向かって魔人剣を振るった。
それから両者の打ち合いは続いた。巨大な大剣での技の応酬は凄まじく、周囲にいる騎士達も義勇軍の者も加勢する事が出来なかった。
(僕なんかが下手に踏み込んだらどちらかの剣にやられそうだった)
それはガザフの騎士達も同じらしく固唾を飲んで見守っている様子からもその事が分かった。
「あんな戦いに加勢出来るとしたら、派遣されてきたエルフィーデの戦士の中でもミリア様かリサ姉さんか後は……ナザリー副長くらいかしら……エミリさんも気が弱いけど意外といけそうかな……」
僕の側に来たサラが食い入るように戦いを見守っている。
(エミリさんと言えば最初の防衛戦でリサさんの撤退命令のきっかけとなる意見を言った人だよね、あのエルフさん幼そうに見えたけど強かったんだね……)
「あら~、でもあそこの義勇軍のご老体達はサラみたいな気弱な様子じゃないようよ~」
寄ってきたフィーネが指し示す先では――
「ニールセン、そろそろワシと代われ! 足元がふらついておるぞ、無理をするな! ワシの両手槍の出番じゃ」
「いかんぞ! ワシの両手斧が動き出しそうじゃ! このままでは大変な事になってしまうわい」
義勇軍の老騎士達が一人戦うニールセン老騎士に向かって頻りに声援を送っていた。
(あれは声援だよね⁉)
「やれやれ年は取りたくないもんじゃわい、魔人よワシがもうちっと若い時に出てきて欲しかったのう」
魔人から距離を取ったニールセン老騎士は片膝を突き胸を押さえている。彼の黒い鎧は黒魔鉄製のハーフメイルだったが、その防具が陥没していた。
『人間、お前は人間で言うところの老成体という状態にあるな……技の技量は見事だが、人間としての全盛期は過ぎているようだな。確かにお前が全盛期の頃であれば、次撃の段階で腕が飛んでいたであろうな。では去らばだ』
魔人はそう言うと持っていた大剣に力を込めた。
「魔法剣⁉ 不味い!」
僕は咄嗟に飛び出し、土壁を使おうとしたが距離が遠くて間に合いそうになかった。
魔人の持つ大剣から黒い【風刃】のようなものが放たれた。
「【ストーンウォール】」
上空から可愛い声が響きニールセン老騎士の前に土壁が生まれた。上空にはルピナスに乗ったニースの姿が見えたが、ルピナスは「ピピッ」と一声泣くとニースを乗せて逃げて行った。
黒い【風刃】はニースの生んだ土壁に到達し、轟音が起こった。
「土壁が……」
ニースの土壁は黒い【風刃】の一撃を防いでくれたが轟音と共に崩れ去った。
僕とサラそしてゼダさん達が、ニールセン老騎士の元に到達し、僕はすぐさま土壁を生み出し、サラとフィーネが【ウィンドウォール】を重ねがけしてくれた。
ゼダさん達に担がれるようにしてニールセン老騎士が後方に下がって行った。
その僕の目に義勇軍の老騎士達が、魔人に殺到する姿が写った。
『どうやら、お前達人間は衰退期にあるようだな。この状況において向かって来るのが老成体ばかりとはな……』
魔人のその言葉に――
「何、寝ぼけた事を言ってやがる! 俺達人間は死ぬ順番が決まっているってのよ! 若けえ奴等が順番を抜かそうとした時にや嫌味ったらしく順番を守れと怒鳴りつけるのが、嫌なじじいの役割よ!」
義勇軍の老騎士の一人が、そう魔人に叫んだ。
「俺は良いじじいだから、可愛い孫が悲しむかもな」
「だが女房は俺がくたばれば、さぞせいせいするだろうよ!」
「ちげえねえ」
義勇軍の老騎士達は、そう口々に言うと魔人に向かって各々の得意武器を振るった。
『そうか、ならば先に逝くのだな』
魔人はそう言うと大剣に力を込め始めた。
「あら、エルフは長生きだから人間の順番なんて守らないわね」
そう言って突然、現れたミリアさんが、ミスリルの片手剣を振るった。
「【風切斬一閃:斬舞】」
ミリアさんの放った複数の斬撃が、魔人の持つ大剣を右手ごと切り飛ばしたのだった。
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