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165:討伐軍1

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「ミリア殿、このような防衛拠点をいつの間に構築された? 造りから見るとかなりの突貫工事なようだが、部下に確認させたが強度は申し分ないようだ。エルフィーデ女王国から連れてこられたという施設部隊の仕事ですかな?」

 急遽、討伐軍を編成してきたダスティンだったが、ミリアから防衛拠点を構築してあると聞かされてはいたが、思っていたよりも大規模な造りだったので驚いたようだった。

「私も報告を受けていた物より規模が大きくなっていて感心していたところです。恐らくはガザフの討伐軍を想定して拡張を行ったものかと」

 ミリアも報告以上の事は知らずに討伐軍と共に従軍してきたのでダスティンと同じ程度しか現場の状況を把握はしていなかった。

 だが誰が作ったのかというダスティンからの問い掛けについては肯定も否定もしなかった。勿論ユーリが土魔法で防衛拠点や遺跡の拠点整備を行っている事は報告を受けて把握していた。

「なるほど、現場判断という事ですな……だが数で劣る軍が大群を相手にするという点に於いては理にかなった造りになっていますな……もっとも、人間が相手ならばむざむざこのような不利な場所に入り込んではこないでしょうが、魔物が相手ならば有効ですな」

 適度に質問をはぐらかされた事は軽く受け流したダスティンは、拡張の意図についての話にすぐさま切り替えた。

 問われた事を何でも答えて貰えるとは思っていないし、逆に何でも簡単に答える相手を要職に就いている者としては、あまり信用はしない程度の老獪さは騎士である前に政治家であるダスティン辺境伯は持ち合わせていた。

「だが数が問題です。そしてその回復力も……」ミリアの深刻な表情から出た言葉にダスティンの表情もより引き締まった。

「そうですな……その点も人間とは違う。体力勝負になりそうですな」

 最外郭の防壁に開いた敵を引き込むための侵入口から見える荒野の景色を見つめながら、まだ見ぬ敵を想いダスティンはそう呟いたのだった。

◻ ◼ ◻

「弓歩兵部隊は最奥の防壁上にて待機せよ!」

 昨日までは最前線だった防壁上に五十人程の弓と軽装の者達が防壁への階段を上っていくのが見えた。

 弓は僕が持っているコンポジット・ボウと同じ物で、小型の盾とティムも装備している短杖を腰に差していて、防具も革製の上下で黒い鉄の板で補強した物を装備している。全体的に僕の装備に近い気がしたが、違いといえば上にガザフの紋章の入ったハーフコートを羽織っている事だった。

(フィーネから聞いていたよりも良い装備をしてるみたいだけど……あれが遠征用に急遽組織された部隊なんだろうか?)

 僕が次々と防壁上で展開していく弓部隊を眺めていると――

「次の遠征用に訓練中の部隊らしいわよ。聞いていたより人数は少ないみたいだけど……装備を充実するためにかなり選考は厳しく行われたみたいね」

 そう教えてくれたのはミリアさんに付いて従軍してきたサラだった。

「そうか……でもキャロ達の着ているような貫頭衣で遠征に参加する事にならなくて良かったよ」

 最初にフィーネから話を聞いた時は数を揃えるだけが目的のように思えたので、恐ろしい計画に感じたものだった。

「当初は聞いた通りの計画だったみたいだけど、さすがに騎士団側からも反対意見が出たみたいよ……それで計画は修正されたみたいだけど」

 そう言うとサラは防壁上の部隊を少し見上げてから――

「やはり、攻略最前線に向かうにしては少し心許ないかな……でも今日の戦いにはあれだけの数が居ればかなりの戦力になりそうね」

 確かにこの状況で別の目的だったとは言っても人員が増加しているのはガザフにとっては幸運だったに違いない。

 だがそれでも僕は楽観する気にはまったくならなかった。それは一度でも戦ってみた者にしか理解しにくい感覚のようなものだったかもしれない。

「ユーリ行くわよ! 私達は外郭の防壁上から迎え撃つ事になったわ」

 サラの言っている事はつまり、引き込んだ敵は騎士団と弓部隊に任せて外の敵を【流星雨】で倒すという事だった。

(地上部隊は乱戦になる可能性があるから【流星雨】は使えないか)

 僕はサラと共に防壁上に上って、外郭上にいるエルフの調査隊に合流するため移動したのだった。
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