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162:連戦2
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「おう! マリアちゃんのお出ましかよ! こりゃあまた氷人形が大量に生まれちまうぜ!」
最前線で斧を振るっていたザザさんが、近づいてきたマリアさんにそう声をかけた。
「うっかりしてるとオメエも人形にされちまうぜ!」
嬉しそうに笑いながらドルフさんが襲いかかってきたゴブリンを両手剣で切り飛ばした。
「子供達は防壁の上に戻りなさい、弓での援護を頼む」ゼダさんがキャロ達にそう声をかけた。
本来なら地上に戻すべきなのかもしれないのだが、大量のゴブリンの魔素吸収を行い、リサさんが倒したゴブリンジェネラルの魔素まで吸収したキャロ達はここに来た時より遥かに強くなっていた。
ゼダさんが弓での援護を頼んだのも四人を貴重な戦力として認めているからに違いなかった。
「ディーネも皆と一緒に援護を頼むね」僕がディーネの頭を撫でると素直に頷き、キャロ達と一緒に防壁に走っていった。
「ディーネ、少し大きくなってるな」
僕は倒されたゴブリンジェネラルをリサさんに回収するように言われて拠点に戻ってからキャロ達と共に魔素吸収を行ったのだ。
その効果は召喚精霊達によって目に見える形で成長を実感する事が出来た。上空を飛んでいるルピナスも少し大きくなっているようだった。
だが……ニースはあまり変わったようには見えなかった。
「皆さん参りますよ」
周りの反応を気にする素振りもなくマリアさんが、まるで散歩にでも出掛けるようにまだゴブリンの屍が散乱している戦場を進んで行く。
その周囲をまるで護衛騎士のようにゼダさん達とラルフさんが取り囲んだ。
「来ましたね……さっさと終わらせて一息吐きたいところですよ」
さすがに連戦の疲れが出てきたのかラルフさんが少しうんざりしたようににそう言った。
「若いのに何言ってやがる、さっさと働け!」ドルフさんに激を飛ばされラルフさんが「中年のおじさんなんですけどね……」とぶつぶつと呟いている。
そんな掛け合いを少し和んだ気持ちで見ていた僕だったが、前方から来る凄まじい冷気の収束する様に気持ちを切り替えた。
「マリア嬢ちゃんの瞑想をギリギリまで援護するぞ!」ゼダさんの指示が飛び他の皆も武器を構え迎撃の態勢に入った。
その時、上空を大量の魔法の矢が過ぎ去り、ゴブリンの群れに降り注いだ。
リサさん達の防壁上からの【流星雨】による援護射撃だった。調査隊のほぼフルメンバーによる一斉射撃によってゴブリンの群れの先頭集団は一気に崩れ落ちた。
それでも屍を踏み越えて迫るゴブリン達をゼダさん達が迎え撃ち、僕とニースが土壁を設置して囲まれないように援護した。
その間もマリアさんの周囲には膨大な魔素の流れが発生していた。側にいる僕は、肌寒さを感じながらその光景を見守るしかできなかった。
(魔素がどんどん魔力に変換していっている。杖が補助しているみたいだけど……これだけの膨大な魔力を必要とする魔法って)
マリアさんの右手が上がり、その手が前後に動き戻れというような仕草に見えた。
「撤退してください! 来ます!」僕は意図を察して大声で叫んだ。戦闘中だった皆が無理矢理戦闘を切り上げて後ろに下がった。
「【氷雪】」撤退を確認したマリアさんがそう詠唱すると、マリアさんの持つ杖から白い霧が吹き出し、前方範囲を真っ白に染め上げた。
霧は群れ全体包み込み戦場を白く染め上げた。だが暫くすると次第に霧が晴れてきてそこには大量の氷の人形のような物が林立する光景が広がった。
(この突撃にリサさんが参加しなかった理由が分かったよ……援護で十分という事なんだな)
「また仕留め損ないましたか……やっぱり威力不足ですね」
だが僕のそんな考えに反して、マリアさんは残念そうに杖を見つめていた。
「ハハ マリア嬢ちゃん威力が今一歩だったみたいだな! 後は俺達に任せな!」ザザさんが威勢良くそう言うと、斧を掲げて突進していく。
「ザザ! お膳立てしてもらって偉そうにしてんじゃねえよ!」ドルフさんもそう言いながらも負けじと突進していった。
「全くあいつらときたら……だかこの際仕方あるまい」ゼダさんもそう言いつつ突撃していった。
「先輩方、張り切ってますな……まあ私も参加しておきますか」ラルフさんも負けじと走り出した。
遠方にいたゴブリンジェネラルとその周囲のゴブリン達は凍った地面に足を取られて動けないようだが無事なようだった。放っておけば何れは回復するだろうから今が倒す絶好の機会だった。
だが動けなくてもゴブリンジェネラルには対抗する術があった。危険を感じると即座に召喚を行い生まれでたゴブリンがザザさん達を迎え撃った。そして――
「黒い炎の玉! 不味い!」慌てて飛び出そうとした僕だったが――
「【ストーン・レイン】」上空からニースの可愛いい声が響き、小石のようなものが降り注いだ。
小石の雨は黒い炎を打ち落とし、周囲にいたゴブリンも何匹か倒したようだった。だが一発の威力はそれほど強力ではないようでゴブリンジェネラルを仕留めるまでには至らなかった。
「よし! 良くやった!」突進してきたザザさんだったが……それを追い抜いて一本の魔法の矢がゴブリンジェネラルを貫いた。
僕が矢が飛んで来た方角を見ると、ディーネが精霊石を片手に弓を振っている姿が見えた。どうやら変異種と戦った時に使った精霊石の力を借りる技をディーネは使ったようだった。
「カーッ! また負けたぜ! ガハハハ!」ザザさんの愉しそうな声が殺伐とした戦場に響き渡ったのだった。
最前線で斧を振るっていたザザさんが、近づいてきたマリアさんにそう声をかけた。
「うっかりしてるとオメエも人形にされちまうぜ!」
嬉しそうに笑いながらドルフさんが襲いかかってきたゴブリンを両手剣で切り飛ばした。
「子供達は防壁の上に戻りなさい、弓での援護を頼む」ゼダさんがキャロ達にそう声をかけた。
本来なら地上に戻すべきなのかもしれないのだが、大量のゴブリンの魔素吸収を行い、リサさんが倒したゴブリンジェネラルの魔素まで吸収したキャロ達はここに来た時より遥かに強くなっていた。
ゼダさんが弓での援護を頼んだのも四人を貴重な戦力として認めているからに違いなかった。
「ディーネも皆と一緒に援護を頼むね」僕がディーネの頭を撫でると素直に頷き、キャロ達と一緒に防壁に走っていった。
「ディーネ、少し大きくなってるな」
僕は倒されたゴブリンジェネラルをリサさんに回収するように言われて拠点に戻ってからキャロ達と共に魔素吸収を行ったのだ。
その効果は召喚精霊達によって目に見える形で成長を実感する事が出来た。上空を飛んでいるルピナスも少し大きくなっているようだった。
だが……ニースはあまり変わったようには見えなかった。
「皆さん参りますよ」
周りの反応を気にする素振りもなくマリアさんが、まるで散歩にでも出掛けるようにまだゴブリンの屍が散乱している戦場を進んで行く。
その周囲をまるで護衛騎士のようにゼダさん達とラルフさんが取り囲んだ。
「来ましたね……さっさと終わらせて一息吐きたいところですよ」
さすがに連戦の疲れが出てきたのかラルフさんが少しうんざりしたようににそう言った。
「若いのに何言ってやがる、さっさと働け!」ドルフさんに激を飛ばされラルフさんが「中年のおじさんなんですけどね……」とぶつぶつと呟いている。
そんな掛け合いを少し和んだ気持ちで見ていた僕だったが、前方から来る凄まじい冷気の収束する様に気持ちを切り替えた。
「マリア嬢ちゃんの瞑想をギリギリまで援護するぞ!」ゼダさんの指示が飛び他の皆も武器を構え迎撃の態勢に入った。
その時、上空を大量の魔法の矢が過ぎ去り、ゴブリンの群れに降り注いだ。
リサさん達の防壁上からの【流星雨】による援護射撃だった。調査隊のほぼフルメンバーによる一斉射撃によってゴブリンの群れの先頭集団は一気に崩れ落ちた。
それでも屍を踏み越えて迫るゴブリン達をゼダさん達が迎え撃ち、僕とニースが土壁を設置して囲まれないように援護した。
その間もマリアさんの周囲には膨大な魔素の流れが発生していた。側にいる僕は、肌寒さを感じながらその光景を見守るしかできなかった。
(魔素がどんどん魔力に変換していっている。杖が補助しているみたいだけど……これだけの膨大な魔力を必要とする魔法って)
マリアさんの右手が上がり、その手が前後に動き戻れというような仕草に見えた。
「撤退してください! 来ます!」僕は意図を察して大声で叫んだ。戦闘中だった皆が無理矢理戦闘を切り上げて後ろに下がった。
「【氷雪】」撤退を確認したマリアさんがそう詠唱すると、マリアさんの持つ杖から白い霧が吹き出し、前方範囲を真っ白に染め上げた。
霧は群れ全体包み込み戦場を白く染め上げた。だが暫くすると次第に霧が晴れてきてそこには大量の氷の人形のような物が林立する光景が広がった。
(この突撃にリサさんが参加しなかった理由が分かったよ……援護で十分という事なんだな)
「また仕留め損ないましたか……やっぱり威力不足ですね」
だが僕のそんな考えに反して、マリアさんは残念そうに杖を見つめていた。
「ハハ マリア嬢ちゃん威力が今一歩だったみたいだな! 後は俺達に任せな!」ザザさんが威勢良くそう言うと、斧を掲げて突進していく。
「ザザ! お膳立てしてもらって偉そうにしてんじゃねえよ!」ドルフさんもそう言いながらも負けじと突進していった。
「全くあいつらときたら……だかこの際仕方あるまい」ゼダさんもそう言いつつ突撃していった。
「先輩方、張り切ってますな……まあ私も参加しておきますか」ラルフさんも負けじと走り出した。
遠方にいたゴブリンジェネラルとその周囲のゴブリン達は凍った地面に足を取られて動けないようだが無事なようだった。放っておけば何れは回復するだろうから今が倒す絶好の機会だった。
だが動けなくてもゴブリンジェネラルには対抗する術があった。危険を感じると即座に召喚を行い生まれでたゴブリンがザザさん達を迎え撃った。そして――
「黒い炎の玉! 不味い!」慌てて飛び出そうとした僕だったが――
「【ストーン・レイン】」上空からニースの可愛いい声が響き、小石のようなものが降り注いだ。
小石の雨は黒い炎を打ち落とし、周囲にいたゴブリンも何匹か倒したようだった。だが一発の威力はそれほど強力ではないようでゴブリンジェネラルを仕留めるまでには至らなかった。
「よし! 良くやった!」突進してきたザザさんだったが……それを追い抜いて一本の魔法の矢がゴブリンジェネラルを貫いた。
僕が矢が飛んで来た方角を見ると、ディーネが精霊石を片手に弓を振っている姿が見えた。どうやら変異種と戦った時に使った精霊石の力を借りる技をディーネは使ったようだった。
「カーッ! また負けたぜ! ガハハハ!」ザザさんの愉しそうな声が殺伐とした戦場に響き渡ったのだった。
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