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161:連戦1
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ゴブリンジェネラルによる回復力を失った事により、ゴブリンの群れは急速にその数を減らしていった。
僕はたった一匹を失った事により瓦解していくゴブリンの群れを自分の設置した土の防壁の上から見つめていた。
僕達が突撃を敢行した事によって一旦は事態も収束に向かっており、土壁の外側では精霊石を預けたキャロ達が魔素吸収がてら魔石の回収を行っていた。
今回の突撃では活躍の機会がなかったディーネもキャロ達を手伝って魔石の回収を行っていた。
最前線ではラルフさんも加わりゼダさん達が頑張ってくれているが、それは魔石回収を行うキャロ達に回収用のゴブリンを投げ渡す役割と、警備的な意味しかなかった。
戦いは既に防壁上からのエルフ達による弓の攻撃による掃討戦に移っていたのだった。
当初はリーダーたるゴブリンジェネラルが居なくなれば他のゴブリン達は散り尻に撤退していくものと思われたが――
「二匹のジェネラルを倒して順調と言いたいところですが、この分だと敵を完全に掃討するまで戦いは終わらないようですね」
防壁上で少し休ませて貰っている僕の側にやって来たマリアさんが、無表情だが恐らくは残念に思っているのが声の調子から伺えた。
掃討戦とはいえゴブリン達は積極的に向かってきているのだ。戦いの趨勢が決した今となっては下手に逃げられるよりも殲滅の手間が省けて都合がよかったと言えるかも知れなかったが、それはまだ敵の数が自分達の手に負える数だから言えることだったのだ。
「近いうちに、これとは比べ物にならないの数のゴブリンが押し寄せてくるのは間違いありません……明日到着予定のガザフの領軍の力を信じたいところですが」僕は期待を込めてそう呟いた。
エルフ達の集団である調査隊の少数精鋭ぶりには目を見張るものがあったが、それでもジェネラルの回復力を越えることが出来なかった今の戦力では王と呼ばれる者が率いる大軍を削りきる事は難しい思われた。
「殲滅が必要であればこちらも数で対抗すればよい、単純にそう出来ればよいのですが……私の知る限りガザフの騎士と呼ばれる者達はそれほどの人員が騎士団として所属しているわけではありません。前回の遠征では百名程の精鋭が派遣されている程度なのです」
マリアさんのその言葉は僕を不安にさせた。階層更新の為の遠征軍としては百名という数は決して少ないという事はなかっただろう。だが現在の状況からするとかなり心許ない数字に思えた。
「次の遠征に向けて歩兵部隊の拡充を行っているとも聞きますが……現在の状況に対応出来るほどの練度があるのか……期待したい所ではありますが」
前回の遠征の失敗を受けての増員の話は、フィーネ等から以前に聞いた覚えがあった。まさかここでその噂で聞いただけの部隊に期待する事になるとは僕も思ってもみなかった。
「おい! どうやら次のお客さんがきたようだぜ!」下からザザさんの声が響いた。
周囲のエルフ達も慌ただしく動きだし、マリアさんも地上に降りるつもりのようだ。
「次の本番の前までに、この群れには早々に消えて貰う必要がありますね」
次に来る魔物の群れは実際に戦った僕達にも底が見えない規模だった。だから尚更、この群れと合流される訳にはいかない。
僕は全身から底冷えするような冷気を漂わせるマリアさんの支援をすべく即座に土壁の上から飛び降りたのだった。
僕はたった一匹を失った事により瓦解していくゴブリンの群れを自分の設置した土の防壁の上から見つめていた。
僕達が突撃を敢行した事によって一旦は事態も収束に向かっており、土壁の外側では精霊石を預けたキャロ達が魔素吸収がてら魔石の回収を行っていた。
今回の突撃では活躍の機会がなかったディーネもキャロ達を手伝って魔石の回収を行っていた。
最前線ではラルフさんも加わりゼダさん達が頑張ってくれているが、それは魔石回収を行うキャロ達に回収用のゴブリンを投げ渡す役割と、警備的な意味しかなかった。
戦いは既に防壁上からのエルフ達による弓の攻撃による掃討戦に移っていたのだった。
当初はリーダーたるゴブリンジェネラルが居なくなれば他のゴブリン達は散り尻に撤退していくものと思われたが――
「二匹のジェネラルを倒して順調と言いたいところですが、この分だと敵を完全に掃討するまで戦いは終わらないようですね」
防壁上で少し休ませて貰っている僕の側にやって来たマリアさんが、無表情だが恐らくは残念に思っているのが声の調子から伺えた。
掃討戦とはいえゴブリン達は積極的に向かってきているのだ。戦いの趨勢が決した今となっては下手に逃げられるよりも殲滅の手間が省けて都合がよかったと言えるかも知れなかったが、それはまだ敵の数が自分達の手に負える数だから言えることだったのだ。
「近いうちに、これとは比べ物にならないの数のゴブリンが押し寄せてくるのは間違いありません……明日到着予定のガザフの領軍の力を信じたいところですが」僕は期待を込めてそう呟いた。
エルフ達の集団である調査隊の少数精鋭ぶりには目を見張るものがあったが、それでもジェネラルの回復力を越えることが出来なかった今の戦力では王と呼ばれる者が率いる大軍を削りきる事は難しい思われた。
「殲滅が必要であればこちらも数で対抗すればよい、単純にそう出来ればよいのですが……私の知る限りガザフの騎士と呼ばれる者達はそれほどの人員が騎士団として所属しているわけではありません。前回の遠征では百名程の精鋭が派遣されている程度なのです」
マリアさんのその言葉は僕を不安にさせた。階層更新の為の遠征軍としては百名という数は決して少ないという事はなかっただろう。だが現在の状況からするとかなり心許ない数字に思えた。
「次の遠征に向けて歩兵部隊の拡充を行っているとも聞きますが……現在の状況に対応出来るほどの練度があるのか……期待したい所ではありますが」
前回の遠征の失敗を受けての増員の話は、フィーネ等から以前に聞いた覚えがあった。まさかここでその噂で聞いただけの部隊に期待する事になるとは僕も思ってもみなかった。
「おい! どうやら次のお客さんがきたようだぜ!」下からザザさんの声が響いた。
周囲のエルフ達も慌ただしく動きだし、マリアさんも地上に降りるつもりのようだ。
「次の本番の前までに、この群れには早々に消えて貰う必要がありますね」
次に来る魔物の群れは実際に戦った僕達にも底が見えない規模だった。だから尚更、この群れと合流される訳にはいかない。
僕は全身から底冷えするような冷気を漂わせるマリアさんの支援をすべく即座に土壁の上から飛び降りたのだった。
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