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153:報告4

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 ミリアへの報告を終えたサラは、追加の調査隊が編成されたので参加する予定だったのだが、ミリアが執政官とギルド長のレイラに捕まった事でミリア付きとして地上に残る事になった。

 サラ本人としては不本意な結果だったが見習い待遇のサラとしては、もし自分が居なければ本来の付き人の先輩達をダンジョンに送り出せなかったと考えると間接的には十分役に立っていると言えたのだった。

 いかに非常事態とはいえミリアを一人残すという考えはエルフィーデにはなかったからだ。

「ミリア様お一人でも危害を加えられるような相手がいるとは思えないけどね……」

 だが国にとっての要人というのは、強いからと言って一人にして良いようなものでは当然なかった。特にエルフィーデ女王国にとってのミリアの重要性は非常に高かった。

 執政官とギルド長というガザフの意思決定機関のトップと言っても良い二人との話し合いを終えてミリアはガザフの領邸内に用意された私室で寛いでいる状態だった。

 本来なら終わったその足でダンジョンに向かいたい所だったが、既にナザリーに指揮を任せて送り出したので、ミリアに今すぐすべき事も無かったのだ。

 もちろん状況の変化があれば、ガザフ首脳部に直接掛け合うのに自分以上に最適な人材が他には居なかったという事情もあったのだが。

「ミリア様、タリアが戻りました。報告したい事がございます」

 だが状況はミリアが思っている以上に切迫してきているのだった。

◻ ◼ ◻

 タリアと共に地上に戻ったティムはその足でギルドに向かった。ティム達が連絡役となっている事はギルド長から伝えられているので、重要案件としてギルド長の執務室に通された。

「なるほど、残念ながら溢れが発生しているのは間違いないのですね?」

 念を押すようにそう尋ねたのはティムを信用していないのでは無く、事の重大さ故だった。

「はい、規模は分からないようですが間違いないそうです。現在、大規模拠点に調査隊は向かったようです。調査隊のタリアさんという方が同じ内容をミリアさんに報告に向かいました」

 年齢よりも落ち着いた冷静な応答に、孤児院はなかなか優秀な子供が多い事に感心したレイラだった。

「マリアが戻らず連絡をあなたに託したのはどうしてかしら?」

 話の内容から溢れは確実であり事実確認という意味でのマリアの任務は一旦終了としても差し支えなかったからだ。

「タリアさんの話ですとユーリさんの加護精霊のニースが作った土壁の防御拠点が十一層にあるそうです。マリアさんと僕の仲間達はその拠点の様子を見に行きました」

「防御拠点?」

 突然出てきた防御拠点という存在にレイラが疑問を差し挟んだのは無理の無いことだった。

 ユーリの行っていた拠点の整備はエルフィーデとの直接のやり取りの為にギルド側には情報は渡っていなかったのだ。

 ティムはユーリの能力について何処まで話して良いのか一瞬迷ったが、マリアさんに知られた時点で何れ伝わるのは確実だと判断し、今までの経緯を含めてレイラに報告した。

「なるほど……その土壁というのは強度的にはどんなものですか?」

 強度次第では非常に有用な戦術魔法と感じたレイラは、ニースの土魔法に非常に興味を持ったようだった。

「どんなものですか……答えになるのか分かりませんが、僕達が一つ羽の探索者になった後の【風刃】が通用しませんでした」

 話しているうちに優秀過ぎる魔法を持つユーリが少し心配になったティムだったが、ユーリはエルフィーデにかなり目をかけられている様なので大丈夫だろうとその不安を打ち消した。

「その魔法、使い方によっては今回の件の鍵になりそうね」

 話を聞いて考え込んでしまったギルド長に――

「あの……仲間が気掛かりなので、僕もダンジョンに戻りたいのですが」

 話すべき事は全て報告したのでティムは皆の元に戻りたかったのだ。

「そうね……いえ、もう少し時間を頂戴。仲間が心配なのは分かるけどマリアも付いてるし、追加のエルフィーデの調査隊が既に派遣されたのよ。直ぐに合流するはずだから安心して良いわ」

 調査隊が派遣されたのは知らなかったので、ティムもかなり安心した様子になった。

「この報告を聞いた以上、ミリアの事だから派兵を要請するかもしれない。私も少なくとも歩兵部隊だけでも先行して動かして欲しいと考えているの」

 察しの良いティムが――

「僕はその結果をマリアさんに伝えるんですね」

 その答えに満足したようにレイラは頷いたのだった。
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