自由都市のダンジョン探索者 ～精霊集めてダンジョン攻略～【第一部:初級探索者編完結】

138:報告1

　地上に戻ったサラは、ミリアへ報告する為に滞在先の領主館に向かおうとして聞き慣れた声に呼び止められた。

「サラちゃん、おかえり～」見るとキャロとルナの二人が手を振っているのが見えた。最近は二人でウサギと蜂狩りを行っているようなので、その帰りに偶然に出会ったのだろう。

　急いでる旨を伝えて、ミリアの元に向かうべきだろうとも思ったが、軽く事情を二人に説明する時間くらいは取れるだろうと思い直し二人のいる場所に移動した。

　あまり部外者に聞かれて良い内容とは思えなかったので、少し場所を移して地上に戻った事情を説明した。

　二人は話の内容がとても不気味な内容だったので、少し不安そうな表情になった。

「ごめんなさいね、あなた達には今のところ直接的には関係の無い出来事で無駄に不安にさせてしまったかもしれないわね」

　話してみて二人の反応が芳しくなかったのでサラは少し後悔していた。まだはっきりと問題が発生した訳でもないのに、無理に説明する必要は無かったからだ。

　だがガザフという場所はエルフィーデ出身のサラにとっては何処までいっても部外者という気持ちが強かった。

　そこで身内のように感じている二人に偶然出会って頼りにする気持ちになるくらいには、サラも今回の件を不安に感じていたのかもしれなかった。

「あらあ～、話した事は悪い判断ではないと思うわよ、信頼出来る相手との情報の共有は大切よ。特に今回みたいな厄介そうな出来事の場合にはね～」

　突然その場に現れたフィーネが相変わらずの気の抜けたような口調でそう言った。

「そうね情報の共有といえば、この件は探索者ギルドにも一応報告しておいたほうが良いかもしれないわね。変異種の発生以来、ダンジョン内で普段と違う出来事が有れば、ギルドに報告するように探索者に注意喚起してるみたいだから」

　同じく姿を現した、シルフィーがフィーネとは正反対の生真面目な口調で勧めてきた。

「それが良いかもね～、ミリア様の性格だとこの話を聞けばとにかく事実確認の為に、地上にいるエルフィーデの査察団を率いて調査に向かわれるでしょうね～」

　サラにもその状況は予想出来た。姉であるリサが調査隊を編成して現地に向かったのだ、任せておけば必ず何らかの成果を持って帰るだろうと思われた……だがミリア様はそれを悠長に待つようなお方ではないのだ。

「そうなると、ギルドが状況を知るのは事態が定まった後になるかもしれないわね。やはり事前に心構えをする時間は必要ね……この情報をギルドがどう判断するかまでは分からないけど」シルフィーは考え込むような仕草をしながらそう呟いた。

　人種が闇精霊の警告などという物を普通であれば重要視するとはサラも思わなかったが、エルフィーデが既に動いているとなれば話は別だろう。

「とにかく、サラはミリア様に報告だけど、ギルドにはこの子達からあの無表情な受付嬢辺りに報告してもらうのがよさそうね～」いつの間にかキャロの頭の上で寛いでいたフィーネがそう言った。

　本来ならギルドへの報告の判断はミリア様からの指示の元に行うべきだろうと思ったが、精霊達の助言を受けて処罰を覚悟でルナ達にお願いする事になった。

　ルナ達はこの依頼を快く引き受けてくれた。ユーリ達が現地に調査に向かった事を知って自分達も何かしたいと言ってくれたのだった。

「ユーリ大丈夫かなあ」キャロが心配そうにそう呟いた。

「ラルフさんやリサさん達が一緒だからきっと大丈夫よ」ルナも不安そうな表情だったが、キャロを励ます為に自分に言い聞かせるようにそう言った。

「そうだった。さっきは直接的に関係ないなんて言ってしまったけど、ダンジョンはこの街にあるんだものね……そこで何か起これば当然、皆に影響がある。そう考えればエルフィーデの者だけの判断で今回の件を主導するのは間違ってるわ」

　サラは自分の判断は間違ってはいないはずだと考え二人に改めてギルド対応をお願いすると、急ぎミリアの元に向かったのだった。