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137:突入

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 調査隊と僕達は十一層の入り口から最も近くのゴブリンの拠点から調査を開始する事になった。そこは昨日僕がラルフさんと出会った場所だった。

「昨日かなりの数を倒したので、全体としてはこの拠点は弱体化していると思いますが、全滅させた訳ではないので油断は禁物ですね」ラルフさんが、同行している調査隊の面々にも聞こえるようにそう告げた。

 ダンジョンの厄介さは、魔素が存在する限り野生の動物と違い翌日にはほぼ復活してしまう事だった。勿論、その回復力のお陰でガザフの現在の繁栄があるとも言えるのだが……

「それは我々にとって好都合だな、露払いが楽になるのは助かる。我々の拠点は施設部隊の者に任せてきたとはいえ、全員連れてきても私を含めても六人しかいないからな。ゴブリン如きに遅れを取るとは思えんが……何が起こるか分からない以上、部隊を分けて効率を優先するのは危険すぎる」

 僕が拠点整備の手伝いを始めた時には、周辺警戒の団員がもっといた気がするので、壁が出来て地上に戻った団員が多いのだろう。

「リサ様! 見えてきました!」先行していた団員からの報告を受け「到着と同時に突入を開始する。各自、散開して各個に撃破せよ!」リサさんからの指示が飛んだ。

「密集して一点突破を図るのかと考えていましたが、どうやら奥の敵に気が付かれる前に全てを殲滅していくつもりのようですね。個々の戦闘力に余程の自信があるのでしょう」

 ラルフさんが、調査隊の面々をチラリと見てそう言った。僕も精鋭揃いと思われる調査隊の姿を眺めやり、それぞれの団員に四枚羽の中位精霊が付いているのを見てその意見が正しい事を理解した。

「なんとか足手まといにならないよう僕も頑張らないと」緊張した表情で僕は呟いた。

「なに、そう卑下する必要はありませんよ、確かに個々の単純な戦闘力では攻守にバランスの取れた風の中位精霊の加護を持つエルフ達には遠く及ばないかもしれないですが……防御という点に於ては、ユーリさんの土魔法はなかなか強力ですよ自信を持って下さい」

 ラルフさんに心配をかけてしまったようだ。

「そうですね、同行すると言ったからには、必ず貢献してみせます!」多少空元気な部分はあったが僕は声を上げる事で気合いを入れ直した。

「その意気ですよ! 我々には特に指示は無いようなので、リサ殿の後に付いて行くとしましょうか」

 まるで散歩にでも行くような気軽さのラルフさんと共に、僕は目前に迫ったゴブリンの拠点に突入をしていったのだった。

◻ ◼ ◻

 ゴブリンの拠点に侵入した調査隊の面々はリサさんの「散開!」という合図と同時に凄まじい速度で敵の群れに突撃を敢行した。

「やれやれ、次元が違いますね、あれが【風速迅】という魔法でしょうかね? 全く風属性の魔法ときたら……上級探索者の実力と相まって凄まじい効果ですね。気合いを入れて突入しましたが敵がいませんね」

 【風速迅】というのはどうやら、あの凄まじい速度での敵への接近を可能にしている風魔法の呼び名らしい。

 あの加速を生む風の力を制御しながら態勢を崩さず【風切斬一閃】から切り返しの【風切斬】の連続攻撃を繰り出し次々と敵を葬っていく。その凄まじさは、技の連撃が普通の斬撃のようにスムーズに繰り出されている事だった。

(あっという間に二十匹……敵もいつ自分が倒されたか気が付かなかったのも居そうな勢いだな)

 周辺の敵を倒しきって即座に移動を繰り返したお陰で、拠点深部まで仲間を呼ばれる事もなく侵入する事が出来た。それでも倒した数は五十を下ることはなかっただろう。

「どうやら順調なのは、ここ迄のようだな」

 立ち止まったリサさんがそう告げる先には、数百を越えるだろうゴブリンの群れが、犇めくように洞窟らしき場所から溢れだしている姿だった。

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