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133:遺跡の拠点にて2

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「それにしても、初日からゴブリンを四十匹も狩るなんてね、それにこれだし」サラがファングボアを見ながらちょっと悔しそうに言ってきた。

「全てを自分達で倒した訳じゃないけどね、ラルフさんの攻撃力がなければどうなったかな」

 僕は、サラに今日の狩の経過を説明しながらファングボアの周囲に生まれた人だかりを眺めていた。

「よし、そこしっかり押さえとけよ皮に傷つけんじゃねえぞ」

 親方らしき白髪の老人の指示が飛び、それに呼応して弟子と思われる若い職人達からも威勢の良い返答が返ってくる。

「こいつあ、いい刺しの入った肉だぜ、レッサーボアの脂身と柔らかいだけの肉とは全く違うぜ! ダンジョンの下層に行くほど良い肉が手に入るってのは本当だったんだな」白髪の老人が肉を切り分ける度にそこかしこからそんな声が上がった。

 ラルフさんの提案を受けて僕が了承したので、拠点の端で取り出したファングボアを解体しようと準備していたら職人の人達が集まってきたのだ。

 それが自分等の今晩の食事だと聞くなり解体だけでも手伝わせてくれと言い出して、今のこの騒ぎになったのだ。

「リサ姉さんに暫く忙しくなるから査察団を見習いとして手伝うように言われたけど、私としては早くもっと強くなって姉さんに追い付きたいのよね……それにこのままじゃ貴方もどんどん強くなっていきそうだし」

 僕は、サラが査察団に入るのが目的でガザフに来たのだと思い込んでいたが、どうやら査察団というかリサさんに認められるくらい強くなるのが目的だったのかもしれないと思った。

「僕はてっきり査察団に入りたがっているんだと思っていたよ」僕はサラの気持ちを確認する為にそう尋ねた。

「そうね、ここに来た時は査察団に入るのが目的だったのは事実よ、それが強くなる近道だと思っていたから」

 サラは僕の問い掛けにそう答えた後、少し黙って考え込んでから――

「……でも最近は強くなりたいという気持ちだけではなくて、一人の探索者としてガザフでの生活が少し楽しくなってきたのよね。勿論、私は装備面でかなり恵まれているのは分かっているのよ。一から苦労して探索者になった人からすれば叱られてしまいそうだけどね」

 僕にはサラの気持ちが理解できた。ガザフにやって来る時、これからの不安で一杯だったのも事実だが、新しい世界での生活を楽しみにする気持ちも確かにあった。

「僕も祖父から受け継いだ物を持ってガザフにやって来たからサラの事は言えないかな。それに新しい生活が楽しいという気持ちも理解できるよ」

 僕がそう答えるとサラは少し嬉しそうな表情で「ありがとう、もちろん楽しい事より大変な事の方が多い事は、頭では分かっているつもりよ。ミリア様には自由にして良いと言われているから……姉さんとも相談してみる」

 サラが少し決意に満ちたような表情でそう答えた時――

「ユーリ、サラちゃんご飯出来たよ」キャロが嬉しそうに手を振ってるのが見えた。

 僕達は手を振り返して「今いくよ」と答えてキャロ達の元に向かったのだった。
 
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