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126:十一層2
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地図が示す場所には確かに拠点らしき物が存在した。遠方の岩陰から様子を伺っていると、どうやら拠点にはかなりの数のゴブリンが生息しているようだ。
「ここから見える奴だけでも三十匹は下らないな……奥にはもっといるかもしれない」
ゴブリンというのは人間よりも小柄だが素早さや力も強いのだ。そして厄介な事に簡単な武器等も使いこなし集団で襲ってくる。
ゴブリン達を観察していると、倒した魔物の角を使って作ったらしい簡単な槍のような物を装備している者が多い。
十一層以降にはゴブリンの他にも[ファングウルフ]や[ホーンラビット]そして[ファングボア]等の十層迄のレッサー系の上位種も生息しているのだ。
「この階層の魔物は角付きが多いから、集団で狩って食料と武器にしているんだろうな……さてどうしようかな」
あの数のいる拠点を単独で攻略するのはかなり危険な行為というか無謀だろうと思われた。
「拠点を攻略して一気に次の階層を目指そうかと思ってたけどそう甘くはないみたいだな……ホーンラビット辺りを探して地道にやってくべきかな」
僕がそう独り言を呟いてその場を離れようとした時だった「その慎重な考え方は危険な階層攻略では大切な事ですが、直ぐに諦めてしまうのも早計かと思いますよ」
僕のすぐ側から穏やかな声で話しかけられて、僕は思わず飛び上がってしまうくらい驚いた。
「ハハ、驚かせてしまったようで申し訳ない。この階層に人がいるのが珍しかったので、つい声をかけてしまったよ」
そこには一人の中年の男性が立っていた。
「私は君と同業の探索者でラルフっていう者です。よろしく」
その見知らぬ男性は穏やかで丁寧な口調で、そう自己紹介してきたのだった。
◻ ◼ ◻
ラルフさんという男性はおよそ探索者には見えなかった。どちらかと言えば商人ですと自己紹介されたほうが違和感なかっただろうと思われた。
だが一点だけその中年の商人染みた男性を一般人ではないと思わせる物が有るとすれば――その背に背負う巨大な両手斧だった。
僕がその背の両手斧を見ているのに気が付いたのだろう、少し照れたようにその背に背負った斧について説明を始めた。
「私みたいな地味な男が巨大な斧を背負っているので驚かれたでしょう。実は私はハーフの狼人なんですよ。だから見た目よりも力がありましてね……まあ斧を使っているのは元々木こりをやっていて使い慣れていたってだけなんですけどね」
僕はラルフさんが斧使いだから驚いていたのではなかった。じいちゃんが斧使いだったので斧を見ながら少しじいちゃんの事を思い出していただけなのだ。
「ああ、すいません。ちょっと斧使いだった祖父の事を思い出していただけなんです。それで……さっき諦めるのは早計だって仰ってたようですけど……」
僕はゴブリン狩りを諦めようとしたのだが、ラルフさんにはあの口振りからも何か良い方法があるのかもしれない。
「ええ、画期的な方法があると言う訳じゃありませんが……ゴブリンには人間のように、ある程度暮らしという物があるんですよ。それを利用すれば、群れを分断して倒す事が出来るんですよ」
僕は拠点の様子を思い浮かべて気が付いた。それは少し考えれば誰でも気が付く事だったに違いなかった。
「そうか、ゴブリン達が狩りに向かう迄、待てば良いんですね」
僕は相手が魔物であっても、補食行動を行うという事を忘れていた。三層のレッサーウルフ等はレッサーシープを補食対象にしていたのだ。
「その通りです! もしご迷惑でなければ共同戦線といきませんか?」
ラルフさんは、嬉しそうにそう言ったのだった。
「ここから見える奴だけでも三十匹は下らないな……奥にはもっといるかもしれない」
ゴブリンというのは人間よりも小柄だが素早さや力も強いのだ。そして厄介な事に簡単な武器等も使いこなし集団で襲ってくる。
ゴブリン達を観察していると、倒した魔物の角を使って作ったらしい簡単な槍のような物を装備している者が多い。
十一層以降にはゴブリンの他にも[ファングウルフ]や[ホーンラビット]そして[ファングボア]等の十層迄のレッサー系の上位種も生息しているのだ。
「この階層の魔物は角付きが多いから、集団で狩って食料と武器にしているんだろうな……さてどうしようかな」
あの数のいる拠点を単独で攻略するのはかなり危険な行為というか無謀だろうと思われた。
「拠点を攻略して一気に次の階層を目指そうかと思ってたけどそう甘くはないみたいだな……ホーンラビット辺りを探して地道にやってくべきかな」
僕がそう独り言を呟いてその場を離れようとした時だった「その慎重な考え方は危険な階層攻略では大切な事ですが、直ぐに諦めてしまうのも早計かと思いますよ」
僕のすぐ側から穏やかな声で話しかけられて、僕は思わず飛び上がってしまうくらい驚いた。
「ハハ、驚かせてしまったようで申し訳ない。この階層に人がいるのが珍しかったので、つい声をかけてしまったよ」
そこには一人の中年の男性が立っていた。
「私は君と同業の探索者でラルフっていう者です。よろしく」
その見知らぬ男性は穏やかで丁寧な口調で、そう自己紹介してきたのだった。
◻ ◼ ◻
ラルフさんという男性はおよそ探索者には見えなかった。どちらかと言えば商人ですと自己紹介されたほうが違和感なかっただろうと思われた。
だが一点だけその中年の商人染みた男性を一般人ではないと思わせる物が有るとすれば――その背に背負う巨大な両手斧だった。
僕がその背の両手斧を見ているのに気が付いたのだろう、少し照れたようにその背に背負った斧について説明を始めた。
「私みたいな地味な男が巨大な斧を背負っているので驚かれたでしょう。実は私はハーフの狼人なんですよ。だから見た目よりも力がありましてね……まあ斧を使っているのは元々木こりをやっていて使い慣れていたってだけなんですけどね」
僕はラルフさんが斧使いだから驚いていたのではなかった。じいちゃんが斧使いだったので斧を見ながら少しじいちゃんの事を思い出していただけなのだ。
「ああ、すいません。ちょっと斧使いだった祖父の事を思い出していただけなんです。それで……さっき諦めるのは早計だって仰ってたようですけど……」
僕はゴブリン狩りを諦めようとしたのだが、ラルフさんにはあの口振りからも何か良い方法があるのかもしれない。
「ええ、画期的な方法があると言う訳じゃありませんが……ゴブリンには人間のように、ある程度暮らしという物があるんですよ。それを利用すれば、群れを分断して倒す事が出来るんですよ」
僕は拠点の様子を思い浮かべて気が付いた。それは少し考えれば誰でも気が付く事だったに違いなかった。
「そうか、ゴブリン達が狩りに向かう迄、待てば良いんですね」
僕は相手が魔物であっても、補食行動を行うという事を忘れていた。三層のレッサーウルフ等はレッサーシープを補食対象にしていたのだ。
「その通りです! もしご迷惑でなければ共同戦線といきませんか?」
ラルフさんは、嬉しそうにそう言ったのだった。
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