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122:遺跡の拠点整備1
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遺跡から出た僕達は、そこが一層だという事実に改めて驚かされた。
「驚くわよね、一瞬で十層から一層まで移動出来るんだから」サラも感慨深そうにそう呟いた。
「それにしても、さっきはあれで良かったの? 僕としては報酬とかは考えてなかったんだけど」
サラはエルフィーデ側の立場なのだ。多少の親交はあるとはいえ僕に有利になるような事をあの場で言って良かったのか疑問だった。
「そうね、エルフィーデに属する立場から考えれば褒められた言動ではなかったかもしれないわね。でも今回の件を姉さんに進言したのは私なのよ……貴方に断りもなく能力を開示した事は、申し訳なかったと思ってるのよ」
土壁の能力を知っているのはサラとルナ達ぐらいなのだから、エルフィーデから依頼が来るというのはそういう事なのだ。
僕がなる程という表情をしているのを見たサラは、「貴方もう少し自分の力を自覚したほうがいいわよ」完全に呆れられてしまった。
側で僕達の話を聞いていたルナの表情も残念そうに見えた。
「こう見えてもね~、サラは貴方の事を心配しているのよ~」フィーネがふよふよと寄ってきた。
「フィーネはうるさい!」サラに睨まれたフィーネが「こわいわ~」と言いながら、ふよふよと精霊達と遊んでいるキャロの所に飛んでいった。
「でも、心配しているのは事実よ……ニースの力以外にもディーネやルピナスの成長具合を考えても、貴方一人で一つ羽のパーティー並みの戦力なのは間違いないんだから。まあ今のところ貴方の周囲に悪意のある人はいないようだけど……それでも無茶な要求をされないように注意したほうがいいわよ」
「そうだね……なるだけ目立たないようにするつもりだけどね」
そう言ってみたものの、精霊の数も増えてきたし十層以降を攻略するようになれば、目立たないというのは難しくなってくるだろう。
「ユーリ早く帰ろう、お腹すいてきたよ」キャロに袖を引かれた。
「ああ、ゴメン、今日は色々あったからね。折角一層まで早く帰ってこれたんだからさっさと帰ろう」
キャロに促されて、僕達は急ぎ入り口に向かったのだった。
◻ ◼ ◻
翌日、僕はサラと共に十層に転移魔法陣を使って転移した。今日は遺跡での作業がメインになるのでルナとキャロは一緒ではなかった。
二人は今日は蜂狩りに行くつもりらしい。蜂蜜はポーションの材料としても使えるので、今でも買い取り額は高額なのだ。ルナはそれをポーションにしてギルドに納品している。
一つ羽の探索者になってから錬金術師としての技量が上がったとルナから聞かされた。ルナの作るポーションや毒消しは高品質で納品所のゼンさんから納品を増やしてくれと催促されるくらいらしい。
普通の錬金術師は探索者を雇ってダンジョンで魔素吸収を行う。自分の作りたい物を作れる程度まで力が付けば、それ以上はもう危険なダンジョンに入ったりしないのが普通らしい。
ルナのような一つ羽の探索者で錬金術師というのは珍しい存在なのだ。
「目的の川の場所に案内するから付いてきて」
僕が、拠点にて頼まれて追加で幾つかの建物を作っていると、サラがやって来てそう告げた。
昨日リサさんに頼まれた川から水を引き込む手助けをするために現場を見に行くらしい。どうやら場所はサラが案内してくれるみたいだ。
「でも、実際のところ手助けといっても何をすればいいのかな?」
川から水を引き込むという事は、川の流れを変えるのだろうという事くらいは想像がついたが、具体的に何をすれば良いのかまでは分からなかった。
「ニースが土壁を作ると地面の土を使うから結構な深さの溝が出来るわよね、その溝を繋げば川の水を引き込めるんじゃないかと姉さんは考えたみたい」
確かに土壁を作るとかなり地面が掘り返される。あれを人力で同じだけ掘ろうとすればかなりの労力になりそうだ。
「でも本当に上手くいくかどうかは分からないので、一度試してみて欲しいらしいわよ」
ニースの魔法が純粋に穴を掘る為の魔法という訳ではないので、そう都合よくいくとは限らない。
「まあ実際に現場を見てからだよね」僕は性急に結論をだすことを諦めた。
「そういうことね」サラも同意して頷いている。
暫く歩くと森を抜けた所に川が見えた。僕は小川を想像していたのだが実物は結構な川幅があった。
そしてそこには、あまり嬉しくない相手も存在した。
「どうやら[レッサーベア]の縄張りのようね」
そこには僕が村にいた時に見た事がある熊とは比べ物にならないような巨大な姿をした魔物の熊がいたのだ。
「あの変異種と同じくらい大きいわね」そう言うとサラは黒魔剣に手をかけた。戦うかどうかをサラに確認するまでもないようだ。
「【えいっ】する?」ルピナスに股がって空を飛んでいたニースが降りてきて手に持った小石を掲げた。
「ニース~、それ投げるとあの魔物吹き飛んじゃうわよ~」一緒に飛んでいたフィーネが降りてきてニースに注意する。確かにあの威力だと魔石もろとも吹き飛ばしそうだった。
「ニース、【えいっ】はまた今度ね」サラにそう言われ「は~い」と素直に返事をしてまた上空に戻っていった。
「ディーネ、初撃でこちらに誘導して。サラ、僕が囮になるから敵の後ろを取って。ルピナス【ウィンドウォール】を! いくよ!」
僕は全員に指示をだし戦闘を開始したのだった。
「驚くわよね、一瞬で十層から一層まで移動出来るんだから」サラも感慨深そうにそう呟いた。
「それにしても、さっきはあれで良かったの? 僕としては報酬とかは考えてなかったんだけど」
サラはエルフィーデ側の立場なのだ。多少の親交はあるとはいえ僕に有利になるような事をあの場で言って良かったのか疑問だった。
「そうね、エルフィーデに属する立場から考えれば褒められた言動ではなかったかもしれないわね。でも今回の件を姉さんに進言したのは私なのよ……貴方に断りもなく能力を開示した事は、申し訳なかったと思ってるのよ」
土壁の能力を知っているのはサラとルナ達ぐらいなのだから、エルフィーデから依頼が来るというのはそういう事なのだ。
僕がなる程という表情をしているのを見たサラは、「貴方もう少し自分の力を自覚したほうがいいわよ」完全に呆れられてしまった。
側で僕達の話を聞いていたルナの表情も残念そうに見えた。
「こう見えてもね~、サラは貴方の事を心配しているのよ~」フィーネがふよふよと寄ってきた。
「フィーネはうるさい!」サラに睨まれたフィーネが「こわいわ~」と言いながら、ふよふよと精霊達と遊んでいるキャロの所に飛んでいった。
「でも、心配しているのは事実よ……ニースの力以外にもディーネやルピナスの成長具合を考えても、貴方一人で一つ羽のパーティー並みの戦力なのは間違いないんだから。まあ今のところ貴方の周囲に悪意のある人はいないようだけど……それでも無茶な要求をされないように注意したほうがいいわよ」
「そうだね……なるだけ目立たないようにするつもりだけどね」
そう言ってみたものの、精霊の数も増えてきたし十層以降を攻略するようになれば、目立たないというのは難しくなってくるだろう。
「ユーリ早く帰ろう、お腹すいてきたよ」キャロに袖を引かれた。
「ああ、ゴメン、今日は色々あったからね。折角一層まで早く帰ってこれたんだからさっさと帰ろう」
キャロに促されて、僕達は急ぎ入り口に向かったのだった。
◻ ◼ ◻
翌日、僕はサラと共に十層に転移魔法陣を使って転移した。今日は遺跡での作業がメインになるのでルナとキャロは一緒ではなかった。
二人は今日は蜂狩りに行くつもりらしい。蜂蜜はポーションの材料としても使えるので、今でも買い取り額は高額なのだ。ルナはそれをポーションにしてギルドに納品している。
一つ羽の探索者になってから錬金術師としての技量が上がったとルナから聞かされた。ルナの作るポーションや毒消しは高品質で納品所のゼンさんから納品を増やしてくれと催促されるくらいらしい。
普通の錬金術師は探索者を雇ってダンジョンで魔素吸収を行う。自分の作りたい物を作れる程度まで力が付けば、それ以上はもう危険なダンジョンに入ったりしないのが普通らしい。
ルナのような一つ羽の探索者で錬金術師というのは珍しい存在なのだ。
「目的の川の場所に案内するから付いてきて」
僕が、拠点にて頼まれて追加で幾つかの建物を作っていると、サラがやって来てそう告げた。
昨日リサさんに頼まれた川から水を引き込む手助けをするために現場を見に行くらしい。どうやら場所はサラが案内してくれるみたいだ。
「でも、実際のところ手助けといっても何をすればいいのかな?」
川から水を引き込むという事は、川の流れを変えるのだろうという事くらいは想像がついたが、具体的に何をすれば良いのかまでは分からなかった。
「ニースが土壁を作ると地面の土を使うから結構な深さの溝が出来るわよね、その溝を繋げば川の水を引き込めるんじゃないかと姉さんは考えたみたい」
確かに土壁を作るとかなり地面が掘り返される。あれを人力で同じだけ掘ろうとすればかなりの労力になりそうだ。
「でも本当に上手くいくかどうかは分からないので、一度試してみて欲しいらしいわよ」
ニースの魔法が純粋に穴を掘る為の魔法という訳ではないので、そう都合よくいくとは限らない。
「まあ実際に現場を見てからだよね」僕は性急に結論をだすことを諦めた。
「そういうことね」サラも同意して頷いている。
暫く歩くと森を抜けた所に川が見えた。僕は小川を想像していたのだが実物は結構な川幅があった。
そしてそこには、あまり嬉しくない相手も存在した。
「どうやら[レッサーベア]の縄張りのようね」
そこには僕が村にいた時に見た事がある熊とは比べ物にならないような巨大な姿をした魔物の熊がいたのだ。
「あの変異種と同じくらい大きいわね」そう言うとサラは黒魔剣に手をかけた。戦うかどうかをサラに確認するまでもないようだ。
「【えいっ】する?」ルピナスに股がって空を飛んでいたニースが降りてきて手に持った小石を掲げた。
「ニース~、それ投げるとあの魔物吹き飛んじゃうわよ~」一緒に飛んでいたフィーネが降りてきてニースに注意する。確かにあの威力だと魔石もろとも吹き飛ばしそうだった。
「ニース、【えいっ】はまた今度ね」サラにそう言われ「は~い」と素直に返事をしてまた上空に戻っていった。
「ディーネ、初撃でこちらに誘導して。サラ、僕が囮になるから敵の後ろを取って。ルピナス【ウィンドウォール】を! いくよ!」
僕は全員に指示をだし戦闘を開始したのだった。
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