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114:一つ羽の探索者
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「サラ! リサ姉さんじゃなくてリサ副長と言いなさいと、いつも言ってるでしょ!」リサさんが眉を吊り上げてサラを叱っている。
「ごめんなさい、リサねえ……申し訳ありませんリサ副長!」
リサさんに叱られたサラが慌てて謝罪しているが、何だか嬉しそうにも見える。
(姉妹か……家族が居るって羨ましいな)
僕が内心で、そんな思いを抱いて二人を見ていると。
「リサ副長殿、姉妹で仲良くしているところ申し訳ないけど、報告すべき所が多いのよね……件の獲物の収容も終わった事だし撤収します」
ミリアさんがやれやれといった表情で告げると、「ハッ! 申し訳ありません、総員撤収!」と、リサさんが、少し照れたように号令をかけた。
「ユーリさん、ご協力感謝いたします。報酬は後ほどギルド長と相談になるでしょうが……ギルドの面目が立った事をきっとお喜びになるでしょうから、ご期待の添えるかと思います」
いつの間にか側に来ていたマリアさんが、言いたいことだけ僕に告げると撤収を始めた調査隊と共にこの場を去っていった。
(面目って何だろう?)
僕はよく分からなかったけど報酬が出るのは嬉しかった。
◻ ◼ ◻
(後は、あの子に名前を付けてあげないと)
僕がミリアさん達と色々話してるうちに退屈になったのだろう、ふよふよとキャロ達の所に飛んで行ったのだが……どうやらシルフィーとフィーネが相手をしてくれてるみたいだった。
「ニース」僕が呼ぶと「なあに、ユーリ」自分の名前だと理解しているようで、こっちにふよふよと飛んで来た。
「ふーん、大地母神ニーサの娘が、確かニースだったわね……まあ人間の童謡のお話みたいだけど」人間の事に詳しいシルフィーが博識な所を見せた。
「あら~、良い名前じゃないかしら~」フィーネがニースの頭を撫でながら褒めてくれた。
「この子は珍しい土属性の精霊みたいだからぴったりな名前よ~……そうだ! 今のうちにどんな力があるのか確認しないと~」
フィーネが突然そんな事を言い出した。そこに目を覚ましたキャロ達と四人の様子を見てくれていたサラもやって来た。
僕は四人に右手の刻印を確認して貰った。どうやら、四人も一つ羽の探索者になっているようだった。
皆、刻印を見て大騒ぎになってしまった。それも仕方がない事だったろう、つい最近まで探索者になる事さえ考えなかった子達なのだから。
一つ羽の探索者になる為には、十層の試練を越えなけれならない。そして、この第一の試練は一人で挑まなければならないのだ。それ故に選別の試練と呼ばれている。
(突然、中級探索者の足掛かりと言われる一つ羽の探索者になったって言われたら誰だって驚くよね)
実は十一層以降には試練を越えなくても降りて行く事は出来るのだが、試練を越えない探索者は、そこで成長が止まってしまうのだ。
だが実際のところ、試練に挑まずに探索者人生を終える者達は多い、ある程度の生活が出来るようになれば、安定した生活を求める者が出てくるのは当然の事だった。
探索者が安定した生活と聞くと変に聞こえるが、ダンジョンはガザフに暮らす者にとって安定した資源を供給してくれる場所という意識が強かった。
それだけダンジョンはガザフの住民にとって生活の一部になっているともいえた。
騒ぎが少し収まりだした頃合いを見計らって、フィーネが、「さあニース土魔法を使ってみせて~」とニースにお願いしたのだった。
「ごめんなさい、リサねえ……申し訳ありませんリサ副長!」
リサさんに叱られたサラが慌てて謝罪しているが、何だか嬉しそうにも見える。
(姉妹か……家族が居るって羨ましいな)
僕が内心で、そんな思いを抱いて二人を見ていると。
「リサ副長殿、姉妹で仲良くしているところ申し訳ないけど、報告すべき所が多いのよね……件の獲物の収容も終わった事だし撤収します」
ミリアさんがやれやれといった表情で告げると、「ハッ! 申し訳ありません、総員撤収!」と、リサさんが、少し照れたように号令をかけた。
「ユーリさん、ご協力感謝いたします。報酬は後ほどギルド長と相談になるでしょうが……ギルドの面目が立った事をきっとお喜びになるでしょうから、ご期待の添えるかと思います」
いつの間にか側に来ていたマリアさんが、言いたいことだけ僕に告げると撤収を始めた調査隊と共にこの場を去っていった。
(面目って何だろう?)
僕はよく分からなかったけど報酬が出るのは嬉しかった。
◻ ◼ ◻
(後は、あの子に名前を付けてあげないと)
僕がミリアさん達と色々話してるうちに退屈になったのだろう、ふよふよとキャロ達の所に飛んで行ったのだが……どうやらシルフィーとフィーネが相手をしてくれてるみたいだった。
「ニース」僕が呼ぶと「なあに、ユーリ」自分の名前だと理解しているようで、こっちにふよふよと飛んで来た。
「ふーん、大地母神ニーサの娘が、確かニースだったわね……まあ人間の童謡のお話みたいだけど」人間の事に詳しいシルフィーが博識な所を見せた。
「あら~、良い名前じゃないかしら~」フィーネがニースの頭を撫でながら褒めてくれた。
「この子は珍しい土属性の精霊みたいだからぴったりな名前よ~……そうだ! 今のうちにどんな力があるのか確認しないと~」
フィーネが突然そんな事を言い出した。そこに目を覚ましたキャロ達と四人の様子を見てくれていたサラもやって来た。
僕は四人に右手の刻印を確認して貰った。どうやら、四人も一つ羽の探索者になっているようだった。
皆、刻印を見て大騒ぎになってしまった。それも仕方がない事だったろう、つい最近まで探索者になる事さえ考えなかった子達なのだから。
一つ羽の探索者になる為には、十層の試練を越えなけれならない。そして、この第一の試練は一人で挑まなければならないのだ。それ故に選別の試練と呼ばれている。
(突然、中級探索者の足掛かりと言われる一つ羽の探索者になったって言われたら誰だって驚くよね)
実は十一層以降には試練を越えなくても降りて行く事は出来るのだが、試練を越えない探索者は、そこで成長が止まってしまうのだ。
だが実際のところ、試練に挑まずに探索者人生を終える者達は多い、ある程度の生活が出来るようになれば、安定した生活を求める者が出てくるのは当然の事だった。
探索者が安定した生活と聞くと変に聞こえるが、ダンジョンはガザフに暮らす者にとって安定した資源を供給してくれる場所という意識が強かった。
それだけダンジョンはガザフの住民にとって生活の一部になっているともいえた。
騒ぎが少し収まりだした頃合いを見計らって、フィーネが、「さあニース土魔法を使ってみせて~」とニースにお願いしたのだった。
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