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102:ダリル鍛冶屋にて1
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皆と別れた僕は、猪鹿亭に帰り少し早めの夕食を食べた後、ダリル鍛冶屋を訪ねる事にした。
旧市街へ向かって歩いていると後ろから聞き覚えのある声がした。振り返ると、報告が終わって孤児院に帰る所だったサラと偶然出会った。
「あら、こっちに用事でもあったの?」
サラとは何日も共にダンジョン探索を行ってきたので、初めの頃に比べれば随分と気安く会話が出来るようになってきたと思う。
「うん、今日の狩りで短杖を左手に持って戦ったんだけど、盾が使い難くてね……まあ右手に持って戦えば良い事なんだけど、強敵相手だと手数が欲しくてね」
僕は長年の修行の成果で回避と防御には自信を持っているが、攻撃力が足りない自覚があった。
「そうね、私も武器に助けられてるから偉そうな事は言えないけど、使えるなら一緒に使いたい所ね」サラの剣の技量を見ていると、【風刃】無しでも十分な威力が有りそうだ。
ダリル鍛冶屋が見えてきたのでサラに別れの挨拶をしようとすると興味があるらしく付いてくるらしい。
「エルフィーデではドワーフの鍛冶屋しか見たことがないから、人間の鍛冶屋がどんな感じか気になるわね」
僕達はお客の気配のないダリル鍛冶屋に二人で入っていった。
◻ ◼ ◻
「よう久しぶりだな、今日はどうした?」ダリルさんは、作業の手を止めこちらを見た。
「あの、盾の裏側に棒を固定したいんですけど、何か方法はありますか?」
短杖を見せる訳にもいかないのでサイズの近い棒を見せようとポーチから適当なサイズの物を出そうとすると……
「あら~、あなたハーフドワーフなのね~」突然、姿を見せたフィーネがそうダリルさんに告げた。
「ほお、さすがに精霊には分かるんだな、すると俺が弱いが火属性の浮遊精霊の契約者なのも分かるよな」
そう言うと手のひらの上に、とても小さな炎の玉のような物が浮き上がった。
「俺の父親がエルフィーデ出身のドワーフでな、母親は人間だ。両親はエルフィーデにいて父親の元で修行してなんとか一人前にはなったんだが……俺みたいな半端者は、あの名工だらけのエルフィーデでは独立は難しくてな、景気のいいガザフに流れて来たって訳さ」
相変わらず饒舌なダリルさんが、聞いてない事まで色々教えてくれた。
「ユーリ~、彼なら武器を見せても構わないわ~」
フィーネなりの何か基準でもあるのか、精霊契約者だからなのか許可がおりたので、経緯を含めてダリルさんに説明を行った。
「ほ~、これを領営工房で量産ね……いかにもあそこの技師が考えそうな、廉価品だぜ……だが魔道具として考えれば割りきった良い品だな」ダリルさんは受け取った短杖を見ながらそう評した。
「あら、貴方が褒めてくれるなんて珍しい事もあるものね」突然、店の外から女性の声がして店の中に入ってきた。
僕は慌てて武器を隠そうとしたが、ダリルさんが「心配しなくても、彼女なら問題ない」と言った。
「ごめんなさいね、立ち聞きするつもりはなかったんだけど、店に寄ったら見たことのある武器が見えたもので、驚いて声をかけるのが遅れたわ」
まだ若い女性で美しいが、男性的な雰囲気のある人だった。僕がそう感じたのは彼女の服装にも理由があったかもしれない。
彼女は制服を着用しており、それは男性用に近いものだったからだ。ギルド職員と色違いの制服を着用しているので何処かの職員かもしれなかった。
「いけない! 自己紹介がまだでしたわね。私は領営工房の主任技師長をしていますサリナと申します」彼女はそう告げたのだった。
旧市街へ向かって歩いていると後ろから聞き覚えのある声がした。振り返ると、報告が終わって孤児院に帰る所だったサラと偶然出会った。
「あら、こっちに用事でもあったの?」
サラとは何日も共にダンジョン探索を行ってきたので、初めの頃に比べれば随分と気安く会話が出来るようになってきたと思う。
「うん、今日の狩りで短杖を左手に持って戦ったんだけど、盾が使い難くてね……まあ右手に持って戦えば良い事なんだけど、強敵相手だと手数が欲しくてね」
僕は長年の修行の成果で回避と防御には自信を持っているが、攻撃力が足りない自覚があった。
「そうね、私も武器に助けられてるから偉そうな事は言えないけど、使えるなら一緒に使いたい所ね」サラの剣の技量を見ていると、【風刃】無しでも十分な威力が有りそうだ。
ダリル鍛冶屋が見えてきたのでサラに別れの挨拶をしようとすると興味があるらしく付いてくるらしい。
「エルフィーデではドワーフの鍛冶屋しか見たことがないから、人間の鍛冶屋がどんな感じか気になるわね」
僕達はお客の気配のないダリル鍛冶屋に二人で入っていった。
◻ ◼ ◻
「よう久しぶりだな、今日はどうした?」ダリルさんは、作業の手を止めこちらを見た。
「あの、盾の裏側に棒を固定したいんですけど、何か方法はありますか?」
短杖を見せる訳にもいかないのでサイズの近い棒を見せようとポーチから適当なサイズの物を出そうとすると……
「あら~、あなたハーフドワーフなのね~」突然、姿を見せたフィーネがそうダリルさんに告げた。
「ほお、さすがに精霊には分かるんだな、すると俺が弱いが火属性の浮遊精霊の契約者なのも分かるよな」
そう言うと手のひらの上に、とても小さな炎の玉のような物が浮き上がった。
「俺の父親がエルフィーデ出身のドワーフでな、母親は人間だ。両親はエルフィーデにいて父親の元で修行してなんとか一人前にはなったんだが……俺みたいな半端者は、あの名工だらけのエルフィーデでは独立は難しくてな、景気のいいガザフに流れて来たって訳さ」
相変わらず饒舌なダリルさんが、聞いてない事まで色々教えてくれた。
「ユーリ~、彼なら武器を見せても構わないわ~」
フィーネなりの何か基準でもあるのか、精霊契約者だからなのか許可がおりたので、経緯を含めてダリルさんに説明を行った。
「ほ~、これを領営工房で量産ね……いかにもあそこの技師が考えそうな、廉価品だぜ……だが魔道具として考えれば割りきった良い品だな」ダリルさんは受け取った短杖を見ながらそう評した。
「あら、貴方が褒めてくれるなんて珍しい事もあるものね」突然、店の外から女性の声がして店の中に入ってきた。
僕は慌てて武器を隠そうとしたが、ダリルさんが「心配しなくても、彼女なら問題ない」と言った。
「ごめんなさいね、立ち聞きするつもりはなかったんだけど、店に寄ったら見たことのある武器が見えたもので、驚いて声をかけるのが遅れたわ」
まだ若い女性で美しいが、男性的な雰囲気のある人だった。僕がそう感じたのは彼女の服装にも理由があったかもしれない。
彼女は制服を着用しており、それは男性用に近いものだったからだ。ギルド職員と色違いの制服を着用しているので何処かの職員かもしれなかった。
「いけない! 自己紹介がまだでしたわね。私は領営工房の主任技師長をしていますサリナと申します」彼女はそう告げたのだった。
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