自由都市のダンジョン探索者 ~精霊集めてダンジョン攻略~【第一部:初級探索者編完結】

高田 祐一

文字の大きさ
上 下
100 / 213

100:ギルド長2

しおりを挟む
「なるほど、経緯ついては良く理解できました。この件は既にエルフィーデ側にも伝わっていると考えても?」

 起こった出来事よりも、エルフィーデの意向を気にする所が少し気になったが、ガザフは査察団を受け入れている立場なのだから、僕には分からない気苦労があるのかもしれない。

「はい、ダンジョンに同行者したサラというエルフの女性が、直接ミリアさんに報告すると申しておりました」

 ギルド長は、暫く僕達を見つめた後、

「君はミリア殿に会った事はあるのですか?」と尋ねてきた。

「はい、僕は孤児院の子供達のダンジョンでの育成を手伝っていたんですが、その時にミリアさんが様子を見に来られて、その時、お話しさせて頂きました」

「なるほど、育成か……エルフィーデが大精霊シルフのお告げを受けて、新たな若い力を育てたいと言っていたが、既に支援している孤児院で育成を始めていたのだな」

 (サラが孤児院の困窮具合を見て、自助力を付ける為に始めた事だと思ってたけど……違ったのかな?)

「何か勘違いされてるみたいだけど、孤児院の困窮具合を知らないようね」

 今まで、黙って聞いていたシルフィーが聞き捨てならないとばかりに、孤児院の現状を訴えた。

 勿論、孤児院の現状は探索者ギルドには関係の無い事だ、しかし、孤児達の努力を政治的な思惑で測られ、腹に据えかねたようだ。

「最近、お肉食べられるようになったんだよ」キャロが嬉しそうにそう言うと

「そうか……すまない謝罪させて欲しい。どうもギルド長などという職に長く就いているせいか、物事を真っ直ぐに見れなくなってね……我々も何か支援出来れば良いのだが、残念ながら探索者ギルドは直接関係のない組織に支援するのは難しくてな」

 孤児院への支援などというのは本来、ガザフ領主等が考える事だろう。

「あの! 今日からうちの子達が、臨時の手伝いとして素材処理の仕事をさせて貰えるかもしれません!」ルナが意を決したような表情でそう告げた。

 僕はさっきのティムと女性職員とのやり取りを説明した。

「なるほど、探索者ギルド側にも利点がある話なら、対外的にも説明がつきやすいか……」

 暫く考え込んでいた様子のギルド長は、この部屋に入ってから一度も口を聞いていなかったマリアさんに向かって、

「マリア、問題の魔物の件は、変異種である可能性は伏せて、レッサーウルフの大群が発生している旨を通達してちょうだい。三層通過時は、出来るだけ集団で行動する事もね」

 マリアさんが指示を書き留め、「分かりました、ダンジョン入口の門衛にも?」

「ええ、そうね協力をおねがいして。調査隊の編成は一つ羽根以上の探索者の手配を……エルフィーデとの交渉は私が直接向かいます」

「それから、孤児院の臨時のお手伝いの件ですが、役に立つと現場が判断すれば、臨時では無く孤児院への委託作業とします。仕事量にあわせて人員は孤児院側で確保して貰い、ギルド側は作業量に対して報酬を支払う形にします。勿論、相手は子供である以上、仕事の量は孤児院側で判断して貰う事になるでしょう」

 これはお互いにメリットが有るように思われた。孤児院としては、収入源が出来るだけでも有難いのだ、そして無理をする必要もない。

 ギルド側も職員の数は有限である以上、今回のような対応時に当てに出来る人員は欲しいだろうからだ。

「時間を取らせてすまなかった、エルフィーデとの交渉次第で調査隊の編成はどうなるか分からないが、明日にも動き出せるだろう。貴重な情報感謝する」

 話は終わり、マリアさんに促されて僕達は部屋を後にしたのだった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

異端の紅赤マギ

みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】 --------------------------------------------- その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。 いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。 それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。 「ここは異世界だ!!」 退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。 「冒険者なんて職業は存在しない!?」 「俺には魔力が無い!?」 これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・ --------------------------------------------------------------------------- 「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。 また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・ ★次章執筆大幅に遅れています。 ★なんやかんやありまして...

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

処理中です...