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091:三層2
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皆と三層の情報を共有した後、四人にはどうするか話し合いをして貰い、結果的に全員で三層に降りる事に決まった。
話し合いは思ったよりも短時間で済んだ。四人は、どうやらレッサーシープの羊毛が欲しいらしい。孤児院の寝具が不足していて、買わずに素材から自作するならかなりの節約になるという、とても実際的な事情だ。
「価格の下がったボア皮に、羊毛を詰めれば、かなり上等で暖かい寝具が作れそう!」リーゼがとても張り切っている。
事情を聞いてみれば、孤児院の問題は食糧難だけでは無いのだと理解出来た。
三層の情報を聞いたサラは、「仮に、私とユーリだけで下に降りるなら、四層でレッサーボアを狩るのも良いかもね、もちろん黒魔弓を使う前提だけど……」と言い出した。
どうやらサラは、黒魔弓を使いたくて仕方ないようだ。正直その気持ちは僕にも理解出来た。
射程、威力だけでなく、黒魔鉄という素材の性能面からみても、現状の生産武器で最強の一角を担える物なのは間違いなさそうだ。
「あら~、確かに黒魔武器なら一撃で倒せそうね~。でも沢山居るだろう探索者達に黒魔武器を披露するのは、まだダメよ~」フィーネがすかさず釘を指した。
落胆しているサラを横目に「披露さえしなければ……人のいない三層なら使用しても構わないって事かな?」と僕は尋ねてみた。
安全面を考えれば、使える物は使いたいというのが、僕の正直な気持ちだった。
「そうね~、必要な状況なら躊躇無く使いましょう~」フィーネは軽い口調でそう言ったのだった。
◻ ◼ ◻
翌日、僕達は三層に降り立った。三層も二層に近い形の森林と草原が存在する層で、森林が草原を囲うように広がっている。
目的のレッサーシープは草原地帯に密集して生息しており、三層の入り口から四層へ向かうルートがまるで道のように森の切れ目になっている。
四層へ向かう探索者は森に入る事無く、そのレッサーシープの群れを横目に見ながら、その道を横断していく事になる。
僕達も同じルートをたどり、レッサーシープの群れが密集する場所までやって来た。
「羊さん沢山いるね~」キャロが嬉しそうな声をあげた。広大な草原には百頭は下らない数のレッサーシープの群れが広がって生息していた。
「あら~、狩り放題かしら~、これ全部狩ったら三層での修業はさすがに完了しそうね~」フィーネの呑気そうな意見に「さすがに、この数を一度に狩っても、持って帰れないでしょ」サラが生真面目に突っ込んでいる。
レッサーシープの大きさは、羊毛を除けばレッサーラビットとそれほど変わらないように見える。
「羊毛と魔石だけ持って帰ればかなりの数を倒せそうだけど、悠長にここで作業するのは危険そうだ。素早く五匹程度倒したら撤収しよう」
(この狩り場では蜂狩りのような乱獲は出来そうにないな)
僕がそんな事を考えてる間に「なら、さっさと始めましょう!」やる気に満ちたサラが精霊弓を構えたと思うと、魔法矢をレッサーシープに向け放った。
「ピィゲェ~」サラの放った矢は一撃で獲物の首筋を切り裂き、レッサーシープは断末魔の悲鳴をあげ倒れた。
「呆気ないわね、これだったら私一人でもいけそうね」サラが呟くとなりで、ディーネが弓矢を放ち、もう一匹仕留めてしまった。
(二層で限界まで魔素吸収を行ったお陰で、三層でも十分通用しそうだな)
フィーネとシルフィー、そしてルピナスは周辺の警戒を行ってくれている。
戦力的に問題無さそうなので、僕とティム達四人は獲物の回収を担当する事にしたのだった。
話し合いは思ったよりも短時間で済んだ。四人は、どうやらレッサーシープの羊毛が欲しいらしい。孤児院の寝具が不足していて、買わずに素材から自作するならかなりの節約になるという、とても実際的な事情だ。
「価格の下がったボア皮に、羊毛を詰めれば、かなり上等で暖かい寝具が作れそう!」リーゼがとても張り切っている。
事情を聞いてみれば、孤児院の問題は食糧難だけでは無いのだと理解出来た。
三層の情報を聞いたサラは、「仮に、私とユーリだけで下に降りるなら、四層でレッサーボアを狩るのも良いかもね、もちろん黒魔弓を使う前提だけど……」と言い出した。
どうやらサラは、黒魔弓を使いたくて仕方ないようだ。正直その気持ちは僕にも理解出来た。
射程、威力だけでなく、黒魔鉄という素材の性能面からみても、現状の生産武器で最強の一角を担える物なのは間違いなさそうだ。
「あら~、確かに黒魔武器なら一撃で倒せそうね~。でも沢山居るだろう探索者達に黒魔武器を披露するのは、まだダメよ~」フィーネがすかさず釘を指した。
落胆しているサラを横目に「披露さえしなければ……人のいない三層なら使用しても構わないって事かな?」と僕は尋ねてみた。
安全面を考えれば、使える物は使いたいというのが、僕の正直な気持ちだった。
「そうね~、必要な状況なら躊躇無く使いましょう~」フィーネは軽い口調でそう言ったのだった。
◻ ◼ ◻
翌日、僕達は三層に降り立った。三層も二層に近い形の森林と草原が存在する層で、森林が草原を囲うように広がっている。
目的のレッサーシープは草原地帯に密集して生息しており、三層の入り口から四層へ向かうルートがまるで道のように森の切れ目になっている。
四層へ向かう探索者は森に入る事無く、そのレッサーシープの群れを横目に見ながら、その道を横断していく事になる。
僕達も同じルートをたどり、レッサーシープの群れが密集する場所までやって来た。
「羊さん沢山いるね~」キャロが嬉しそうな声をあげた。広大な草原には百頭は下らない数のレッサーシープの群れが広がって生息していた。
「あら~、狩り放題かしら~、これ全部狩ったら三層での修業はさすがに完了しそうね~」フィーネの呑気そうな意見に「さすがに、この数を一度に狩っても、持って帰れないでしょ」サラが生真面目に突っ込んでいる。
レッサーシープの大きさは、羊毛を除けばレッサーラビットとそれほど変わらないように見える。
「羊毛と魔石だけ持って帰ればかなりの数を倒せそうだけど、悠長にここで作業するのは危険そうだ。素早く五匹程度倒したら撤収しよう」
(この狩り場では蜂狩りのような乱獲は出来そうにないな)
僕がそんな事を考えてる間に「なら、さっさと始めましょう!」やる気に満ちたサラが精霊弓を構えたと思うと、魔法矢をレッサーシープに向け放った。
「ピィゲェ~」サラの放った矢は一撃で獲物の首筋を切り裂き、レッサーシープは断末魔の悲鳴をあげ倒れた。
「呆気ないわね、これだったら私一人でもいけそうね」サラが呟くとなりで、ディーネが弓矢を放ち、もう一匹仕留めてしまった。
(二層で限界まで魔素吸収を行ったお陰で、三層でも十分通用しそうだな)
フィーネとシルフィー、そしてルピナスは周辺の警戒を行ってくれている。
戦力的に問題無さそうなので、僕とティム達四人は獲物の回収を担当する事にしたのだった。
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